「日独の敗戦はイタリアのせい」と言ったウズベキスタンからの留学生
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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留学生に日本語で小論文を教えている関係で様々な国の若者と触れ合う機会が多い。その中で異色なのがウズベキスタンからの学生である。他国の学生が政治状況等に疎い傾向があるのに対し、ウズベキスタンからの学生は詳しい者が少なくない。しかも、どちらかといえば親日の傾向がある。
■戦後の沖縄の状況を知っていたウズベキスタン人
きっかけは沖縄問題である。授業中に1970年代初頭、琉球切手(沖縄切手)が人気になったことを紹介し「国が発行する切手を、どうして地方が発行できたと思う?」と聞いてみた。(誰も分からないだろう)と思っていたら、ウズベキスタン人の学生が「アメリカが占領してたからじゃない?」と言ったのである。
さすがにびっくりして「良く知ってるなぁ」と言って、簡単に沖縄返還に至るまでの経緯を説明した。琉球切手とは返還前の沖縄で使用されていた切手のこと(正確には琉球政府の郵政局発行と、それ以前のものがある)。第二次大戦後から1972年5月に返還されるまで沖縄が米軍統治下にあったことを知らないと出てこない話で、それをウズベキスタンの学生が知っていたことには驚かされた。
■真剣な表情で言った「イタリアのせい」
もう1つのクラスでも同じ話をしたら、やはりウズベキスタンの学生が同じ答えを言った。どうやら偶然ではなく、ウズベキスタンからの留学生にはそうした国際政治について興味を持っている者が多いようである。中国、ベトナム、ミャンマーなどの学生は全く興味がないのか、(へえ、そうだったの)程度で聞き流していたのとは対照的である。
その後、僕が大学生のころ、ドイツ語の先生が「君達も、私の国も戦争に負けた。お互いに頑張ろうじゃないか」という話をしたところ、そのウズベキスタンの学生がこう言ったのである。
「日本とドイツが負けたのは、イタリアと一緒に戦ったせいだよ」
最初はよくある冗談なのかと思ったが、言った学生は全く笑っておらず真剣な表情だった。それは日本人に対して(自信を持て)というメッセージのようにも感じられた。
彼の言ったことが正しいのかどうか僕には分からないが、イタリアは第二次大戦終結前にドイツに対して宣戦布告し、日本にも宣戦布告したことは良く知られている。
■海外には様々な考えの学生が存在
ウズベキスタンは一般的に親日であると言われる。それはシベリア抑留された日本人が現地で建てた建築物などのインフラ整備に貢献したこと等が理由の一つとされ、中山恭子氏(元在ウズベキスタン特命全権大使)も同様の話をしている。
そのようなことから日本が敗戦に至る経緯を良く知るために、沖縄のことも知っていたのかもしれない。実際のところは分からないが、海外にはそのような考えをする学生もいるということが分かっただけでも、勉強になった。
》》ジャーナリスト松田様
ウズベキスタン共和国の留学生の方たちが、日本のことを良く理解されていることにビックリしました。むしろ日本人の方が自国の現代史は分かっていないでしょうね(大学入試に重要ではないから)。また欧米に出向した社会人や留学生が、日本の歴史や文化について余りにも無知過ぎて現地の人からビックリ(呆れられる)されるということを
聞いたことがあります。
飛躍し過ぎかもしれませんが、日本がかの大戦で負けた理由はイタリア…ではないでしょう。陸軍省と海軍省の相違や、当時の日本国の「空気」や欧米列強国の身勝手な封鎖政策…云々でもなく、残念ながら日本人のDNAに刻み込まれた国際感覚の欠如という性だと勝手に思い込んでいます。
島国の日本と違って陸続きで国境(問題)を持つ
(続き)国々の感覚(バランス オブ パワー)を身に付けなければ、グローバル化したこれからの時代にはついていけないと思います。
>>MR.CB様
コメントをありがとうございます。日本の敗因については、独ソ戦開始が痛かったのかなと個人的には思いますが、それ以前に米英に勝ち目の薄い戦いを挑んだ陸軍の判断は論外という気がします。
国際感覚の点、おっしゃる通りと感じます。日本の常識が海外にも通ずると考えていた結果、対中国、対韓国で痛い目に遭っている現状があるのではないでしょうか。
》》ジャーナリスト松田様
多くの日本人は戦後の米ソの冷戦時代の2極体制やソ連崩壊後のアメリカ一国による体制しか知らないと思います。最近では中国が米国と覇権を競う状況でもあります。なので現在のように米中露印欧と多くの国々による覇権争いにオロオロしてしまいます。
ところが陸続きの文化圏・ヨーロッパ人の感覚はオーストリアーハンガリーエンパイア、イギリスーフランス帝国、ロシア帝国、ドイツ帝国など5、6つの国がバランスオブパワーを行なってきたのが普通の状態ではあり、ノーマルな考え方なのでしょう。
それがフーゴー・グロティウス(国際法の父)の観念だと認識しています。かのケネス・ウォルツ先生も国家紛争において、「国際法に反しても制裁する術がない」とおっしゃっておられますしね(笑)。小沢一郎さんにはきっとご理解頂けないでしょうけど…。
>>MR.CB様
詳細は分かりませんが、陸続きの欧州では各国のパワーバランスが国際情勢に大きく影響し、それへの一定の安定装置として国際法が発展したのかなという漠然としたイメージを持っています。その拡大版である多極化した世界に対して、欧州の人は比較的対応がしやすいというのがあるのかもしれません。
僕は大学院で国際公法を履修しましたが、国際法には執行機関がないというのは最初に教わる部分で、そこが国内法との大きな違いであって、国際法の難しさ、面白さでもあります。厳格に執行できる前提での国内法とは頭の切り替えが難しいのは確かです。
そういったもろもろの要素を考えれば、ウズベキスタンの学生は日本人とは異なる思考経路を辿るのは当然なのでしょう。興味深いテーマですね。