朝日賭け麻雀記者停職1月 甘い処分の理由は?
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
最新記事 by 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 (全て見る)
- 「TVの嘘に気付く高齢者」5年前指摘の評論家が新著 - 2024年11月24日
- スポーツ紙消滅で競馬界のカオス 須田鷹雄氏提言 - 2024年11月20日
- 見えてこない導入の必要性 分娩費用の保険適用化 - 2024年11月18日
東京高検の元検事長、黒川弘務氏と賭け麻雀をした朝日新聞記者(50)が停職1か月の処分が下された。黒川氏の辞職を「当然」と社説で書いた新聞が身内に甘い二重基準は、一般人には理解が難しい。
■黒川検事長の辞職を「当然」と書いた朝日社説
朝日新聞は黒川弘務氏が辞職した際に、社説で以下のように書いた。
「コロナ禍で外出自粛が求められているさなかに、産経新聞記者の自宅で賭けマージャンをした…事実を認めたという。公訴権をほぼ独占し、法を執行する検察官として厳しい非難に値する。辞職は当然だ。」
朝日新聞は辞職が当然であるとしているが、その理由を「公訴権をほぼ独占、法を執行する重い地位にあるから…」と検察官という職責に求めている。重い職責を負いながら「こんなことをしたから」というロジック。「こんなことをした」の部分は「外出自粛が求められているさなかに(不要不急の外出)、」「賭けマージャン」の2つが該当する。
前者の「外出自粛が求められている」は公訴権をほぼ独占、法を執行することとは関係性は認められない。なぜなら外出自粛は強制性はなく、法的拘束力は問題にならないからである。不要不急の外出自粛の要請に反することは、例えば自粛を要請している当の知事や行政担当者が要請に反しなければ倫理的に問題になり強い批判を浴びるのは当然だが、検察官はそのような立場にはない。一国民として他の人と同程度の批判を浴びると考えていい。
そうなると朝日新聞が問題にしているのは「賭けマージャン」である。つまり賭博罪(刑法185条)に抵触すると思われる行為を、公訴権をほぼ独占し、法を執行する立場の検察官がしていたのは通常の人より強い批判を浴びるから、辞職は当然というのであろう。それなら主張は筋が通っている。
■紙面で「自粛しろ」と言いながら社員は外出 3密賭け麻雀
それでは朝日新聞の記者はどうか。賭博罪の疑いについては検察官より受ける批判が弱いのは当然であろう。朝日新聞の記者には公訴権はなく、法の執行もしないからである。しかし、「渦中の人物と賭けマージャンをする行為は、報道の独立性や公正性に疑念を抱かせるものだった。」と報道機関の根幹を揺るがしかねない行為であるとしているのであるから、その点は黒川氏より強く批判を受けるべきであり、報道機関の内部処分として十分に考慮しなければならない。
さらに朝日新聞は「新型コロナウイルスの感染防止のため、外出自粛と『3密』を避けることが強く要請されており、朝日新聞もその重要性を繰り返し報じていた。」としている。つまり、自粛を要請する知事らと同様、「自粛しろ」と、公共性ある媒体として説いていたのであるから、それに反した社員は一般の企業に勤務する者より強い非難に値すると言っていい。
■注目すべきは「渦中の人物」と言う表現
このような状況を考え、黒川氏の辞職を「当然」と言うのであれば、朝日新聞の記者に対する処分は同程度の重さになっても不思議はない。ところが出された処分は停職1か月。これに納得する者がいるのだろうか。
ここからは僕の想像である。朝日新聞の記者で取材対象と賭けマージャンをしていた者はこれまでに多数いるはず。よくある取材手法で、今回、処分を下す新聞社のトップの中にもかつては賭けマージャンをしていた者はいると思う。
注目していただきたいのは「渦中の人物と賭けマージャンをする行為」という表現である。朝日新聞は「取材対象と賭けマージャン」を批判しているのではなく、「渦中の人物」としたことを問題にしているのである。そして、それが賭博罪に該当する可能性があることには言及していない。これは処分する者が「俺たちは取材対象とは賭けマージャンをしたが、渦中の人物とは賭けマージャンをしていない」というエクスキューズのように思える。
もし、当該記者を退職に追い込むようなことになれば、その記者は「お前らだって、取材対象と散々やってきただろう。何で俺だけなんだ。渦中の人だろうが、そうでなかろうが、どちらも賭博罪成立じゃないか」とメディアに暴露等しかねないし、解雇すれば解雇無効を求めて訴えを提起してくる可能性がある。
黒川氏の時は賭博罪との絡みを重視しているのは前述の通りだが、自社記者の時は賭博罪との関連は微妙に避けているのがお分かりだろうか。そこを強調すると、過去にやっていた者を処分しないことと整合性が取れなくなってしまう。このような事情から停職1か月という軽い処分にしたのではないか。言葉は悪いが、脛に傷を持つ者が処分をしているから、甘くなるということである。繰り返すが、僕の勝手な想像である。
■朝日のトップに問う「取材対象と賭け麻雀しましたか」
朝日新聞に問いたい。「今、トップにいる人たちは取材対象と賭け麻雀をしていましたか」と。やってないなら「やってない」と言えばいいし、やっていても問題ないと思うなら「取材対象とは賭けマージャンをしても問題はない」と堂々と言えばいい。
その点をうやむやにしたまま当該記者を軽い処分で済ませている点に、多くの国民は違和感を覚えているのだと思う。