台湾8か月ぶり国内感染 新年花火も人出制限
葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼
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台湾では昨年12月22日、新型コロナウイルスの国内感染が確認されました。これまで厳重な水際対策と周到な防疫対策で国内へのウイルスの侵入、感染を防いできましたが、253日ぶりの国内での感染の確認です。これに対する反応は台湾らしいものでした。
■イベントの規模縮小や中止相次ぐ
国内感染が確認されると中央流行疫情指揮センターは緊急措置実施を発表、新北市主催で1月3日まで開催予定だったクリスマスイベントは12月30日までの短縮開催となりました。その他大晦日に各地で予定されていた年越しイベントも規模の縮小や中止に、1月1日に総統府前で開催される国旗掲揚式典についても一般客の入場が中止されるなど、約8か月ぶりの国内感染者出現に、世界一の防疫対策を自負する台湾では迅速且つ徹底した(やや過剰な)反応が示されています。
私が店を出している桃園野球場では、毎年クリスマスから正月明けにかけて、人気グループ「五月天」のライブが行われます。今年も平年通りの開催が予定されていましたが、感染拡大阻止策の影響を受けて1月中旬以降の開催延期が決まりました。私の知る限り今回の政府の対応について台湾メディアやネットからは疑問や批判の声は挙がっていないようです。政府の防疫施策に対する信頼や、「今の状況では已む無し」といった考えなのかもしれません。
■迅速な台湾の対応「とことん」やる姿勢に時に疑問も
台湾に比べ、東京都の小池百合子知事らが政府に緊急事態宣言を要請するなど、日本のコロナ感染拡大はとても深刻な模様です。もし台湾のような迅速さがあれば、また違った状況になっていたのかもしれません。しかし迅速さが良いのかと言うと、私は少し疑問に思う点があります。上述の新北市クリスマスイベント会場では私の知人が主催者である新北市と出店の契約を結び、会場で軽食の販売を行っていたのですが、新北市から突然に期間短縮を知らされたこと、そして打ち切られた3日間について何の補償もなされないことに納得がいかない様子でした。
また、桃園野球場のライブは民間主催のイベントですが、これについても運営側から私には「政府の決定」と伝えられただけでした。「やるからにはとことん」という取り組み方は、時には強権的、高圧的に感じることもあります。
私見ですが、例えば2009年11月から施行された禁煙新法は十分な議論がなされたとは言えず、また十分な告知もない中で施行されたと考えています。この新法はホテル、レストランの室内全面禁煙、その他3人以上がいる屋内は全て禁煙、違反者には最高で1万元(約3万6000円)の罰金が処されるという徹底したものでした。
■花火に込められた世界へのメッセージ
2005年から毎年12月31日に台北信義区で101行われている台北市主催のカウントダウンイベントでは、高層ビル台北101全体から5分間にわたり花火が打ち上げられます。カウントダウンに先駆け101に隣接する会場では台湾の大物アーティストによる無料のライブも行われるため、例年大晦日の会場は立錐の余地もないほどの超満員となります。台北市政府によると例年の人出は会場付近も加えると延べ100万人を超えるということです(聯合新聞 2021年1月1日)。
国内感染発生をうけて開催が危ぶまれたこのカウントダウンイベントですが、今回は最大入場者数を4万人と制限して開催する運びとなりました。また入場者は会場内でのマスク着用と入り口での検温及び実名・連絡先登録が義務づけられました。人々の自制意識と寒気襲来の為か、カウントダウンに合わせて会場を訪れたのは2万1000人にとどまりました (この部分、台北市政府 2020年12月29日公佈から)。
今回のカウントダウンイベントは「讓愛擁抱世界,讓希望點亮未來 (愛で世界を抱擁、希望で未来を照らす)」がテーマでした。また防疫に携わる全世界の「防疫英雄」に敬意を示すとともに、「台灣可以幫忙 Taiwan Can Help (台湾は手助けができる)」のメッセージが込められた360度立体輪状花火が世界初の試みとして用いられ(中華民國外交部 2020年12月31日)、台北101を花のような輪状の花火が包み込みました。300秒間の空中ショー、1万6000発の花火が夜空を華やかに彩りました(台北市政府觀光傳播局2021年1月1日)。
「防疫成功」の誇りと自信を乗せて打ち上げられた「Taiwan Can Help」の想いが、世界で大輪の花を咲かせますように。