”鮭魚之亂” ただ寿司目当てに改名続出
葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼
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日系回転寿司チェーンが行った期間限定キャンペーンに反応し若者達の間に改名する者が続出し、台湾で話題になっています。若者ならではの勢いや世代特有の価値観・ライフスタイルが浮かび上がってきますが、一方で、眉を顰める人も少なくありません。
■「鮭魚之亂 サーモンの乱」
ある日系回転寿司チェーンの台湾法人は3月15日、同月17日と18日の2日間にわたり身分証明書の氏名に「鮭魚(サーモン)」の2文字が含まれている場合は本人と同伴者5人の食べ放題コースが無料になるキャンペーンを打ち出しました。
これを受けて台湾各地の戸政事務所(戸籍業務を担当する役所)に改名申請をする人が殺到し、若者を中心に300名以上が自身の名前を「鮭魚」に改名する騒ぎとなりました。
同社の発表によると、2日間で本人や同伴者を含む1000人がキャンペーンの対象として無料食べ放題を楽しんだということです( ETtoday 旅遊雲 2021年3月18日)。
台湾各メディアは今回の「鮭魚」改名騒ぎを「鮭魚之亂 (サーモンの乱)」と名付け連日報じ、大きな話題となっています。
■本名サーモン丼やサーモン大師も誕生
3月15日のサーモンキャンペーン発表後、各県や市の戸政事務所(戸籍業務を担当する役所)には「鮭魚」改名希望の若者が殺到しました。無料キャンペーンが名前に「鮭魚」が含まれれば良いという条件のため、鮭魚を加えたユニークな名前をつけた人もいたようです。
台中市在住の郭さんは「鮭魚丼飯 (サーモン丼)」に改名、氏名が「郭鮭魚丼飯」となり、桃園市在住の薛さんは名前を「鮭魚大師 (サーモン大師)」と改名。これだけで、(そのへんにしておけよ)という感じですが、それでは終わりません。
「超粗大深海鮭魚王 (超いかつい深海のサーモン王)」
「鮭魚全部都給我端上來 (サーモンありったけ持って来い)」
等、長い名前を申請した人も。更には
「與○○穩定交往中愛妳愛一生一世此生想帶妳一起吃鮭魚 (○○と深い交際中 一生君を愛する、この世で一緒にサーモンを食べたい)」
と、彼女との思い出作りに改名する男性も登場し、新北市では遂に、交際中の彼女への思いを綴りつつ「共にサーモンを食べよう」と「鮭魚」を含めた50文字に及ぶ名前に変える男性も現れるという始末。
なお、これは台湾一長い名前の記録を更新したとのことです。紹介するのもどうかと思いますが、参考までに。
陳○○(自身の名)有震天龍砲變身▲▲▲▲▲(Facebookの名前)於二零二一三月十四日與★★(交際中の女性の名)穩定交往中愛妳愛一生一世此生想帶妳一起吃鮭魚
正気に戻って「鮭に酔っていました」と、日本人しか分からないベタなオチが用意されているわけでもなく、今回の騒動を受け、内政部(内務省)陳宗彥政務次長(副大臣)は18日立法院(国会)の定例インタビューで、このような改名行為が事務手続きの無駄な消費を生み出していると苦言を呈し、行政資源を大切にするよう求めました。
また内政部はFacebookにて名前変更の上限は原則的に1人3回までであることを紹介、自分の名前を大切にし、戸籍事務資源を無駄にしないよう呼びかけています(中華民国内政部Facebookページ)。
■お笑い界の大御所も批判 台湾の人も「呆れた」
今回の改名騒動、「若者の奇行」として報道するメディアが多いように見受けられます(聯合新聞網 2021年3月18日、三立新聞網 2021年3月19日、自由時報 2021年3月18日など)。またニュース番組で流される街頭インタビューでの人々の反応は
蠻傻眼 (ほんと呆れる)
為了吃就改名鮭魚 很白痴 (食べたいからサーモンに改名なんて バカでしょ)
他們吃完了又改回來,製造戶政的困擾而已吧 (食べ終えたら<名前を>元に戻すのは、戸籍事務を困らせるだけでしょう)
と否定的なものが多く取り上げられています(中天新聞 2021年3月18日、民視新聞網 2021年3月20日)。
台湾お笑い界の大御所呉宗憲さんも19日に収録のバラエティ番組内で「サーモンの乱」に言及、
神經病,太無聊 (イカれてる、つまらん)
と、今回の改名行為を一刀両断しました(聯合新聞網)。馬鹿馬鹿しいノリが受け入れられやすい台湾の掲示板「PTT 批踢踢實業坊」でも意外と言うべきか、以下のような声が多く見られました。
幽默感? 這只有國小生會覺得好笑吧 (ユーモア感? 小学生ぐらいだろ面白いと思うのは)
怎麼有這麼多低能兒 台灣的素質到底怎麼了 (なぜこうも低能な奴が多いんだ 台湾の素養はどうなっている)
否定的なコメントが多数寄せられており、今回の改名行為及び改名のセンスを「つまらない」と切り捨てる発言が目立ちました(PTT 批踢踢實業坊から「鮭魚之亂浮現『台灣人醜陋嘴臉』 壽司店」、「都去改名鮭魚了?」)。その他ネット上のコメントも
沒想到我們台灣人這麼貪小便宜真的為了吃免費而去改名 (俺たち台湾人がタダ飯の為に名前を変えるまで意地汚いとは思いもしなかった)
改名一次花160,改回來又花160,其實320可以好好吃一頓,不用這樣浪費時間又浪費食物。 (改名手数料一回160元 再度戻すとまた160元、320元あれば満腹になる、時間と食べ物を無駄にしないで)
など、改名を行為を嘆く声や資源や時間の浪費と見る手厳しい声が寄せられています。またサーモンキャンペーンを行った当回転寿司店に対しては、以下のような声が出ていました。
超級廣告,爽爽賺好嗎 (すごい宣伝効果、簡単に稼げたな)
這根本行銷之神,活動後大家永遠會記得○○○的鮭魚 (まさにマーケティングの神、キャンペーン後みんな○○○(店名)のサーモンを一生忘れないだろう)
活動本身促銷方向也根本就是錯的、紛擾的新聞內容就對○○○滿滿負面印象了 (キャンペーン自体マーケティングの方向が根本的に間違っている、混乱したニュースは○○○(店名)の大きなマイナスイメージを世間に与えることになるよ)
幾年後會成為行銷學的經典案例… (何年かしたらマーケティングの典型例となるかも…)
と、宣伝効果を指摘するユーザーや、キャンペーン内容に疑問を呈する声、今後このようなキャンペーンが定着することを心配するコメントも複数ありました。同時に、
看過新聞之後我決定去吃別家壽司、應該制定規則,浪費資源要罰錢 (ニュースを見て他系列の寿司屋に行くことにした、資源浪費には罰金を課すよう規則を設けるべきだ)
店家是打響知名度了 但我個人未來不會去消費。 (知名度は上がった でも私個人はもうお金を落としには行かないよ。)
等、今回のキャンペーンを打ち出した当チェーン店を今後避けるような発言も目にとまりました(Facebook、Yahoo!奇摩コメント欄から抜粋)。
■「九年級」の価値観、SNSでの共感と達成感
今回のキャンペーンに際し名前をサーモンに変更した人は台湾全土で300名を超えました。ネットにアップされている改名後の身分証を見ていると、大部分が民國89年~91年(西暦2000年~2003年)生まれ、台湾で「九年級」と呼ばれる20歳前後の若者達です。
九年級の彼らには改名行為は敷居の高いものではありません。同年代の友人達と共に気軽に改名し、それをSNSにアップすることで、ネット上で多数の人に共感・共有してもらう。多くの人に見てもらうことで達成感・満足感を得ているのではないでしょうか。今回の「サーモンの乱」からはそんな若者達の価値観やライフスタイルが浮かび上がってきたように思えます。
当回転寿司チェーン店マーケティング部責任者は、今回のキャンペーンが「反應相當好 とても良い反応」だったとしています(ETtoday旅遊雲 2021年3月18日)。聞くところでは今後同様の「マグロ」「ウナギ」キャンペーンも予定しているとか。「乱」が起きませんように。
こんにちは。台湾人はかしこが多いと思ったんですけれど、ペッタン(台湾で莫迦を表すことばだそうで)もいるんですね。
高山椎菜様
コメントくださりありがとうございます。
今回の改名行為は台湾社会でも、
軽はずみな行為として問題となりました。
葛西健二