鬼滅の刃”旭日旗耳飾り” 台湾ファン「だから何?」

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葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

京都産業大学外国語学部中国語学科、淡江大学(中華民国=台湾)日本語文学学科大学院修士課程卒業。1998年11月に台湾に渡り、様々な角度から台湾をウオッチしている。

 台湾の95の映画館で10月30日、映画「『鬼滅の刃』無限列車編」が公開されました。記録的な興行収入で、台湾でも「鬼滅の刃」の高い人気を示しました。ネットでは主人公の竈門炭治郎の耳飾りが旭日旗のようなデザインになっていますが、台湾では「何が問題なの?」という反応が多く見受けられました。

■記録的な興行収入 コミックも高い人気

 7月30日からの3か月間で前売りチケットの販売数は一万枚以上(中央通訊社 2020年10月28日)、台北市の興行収入は上映初日で1115万元(約4000万円)となりました。これは8月に上映された「TENET テネット(クリストファー・ノーラン監督)」の単日売り上げ1026万元を上回り、2020年度の単日興行収入最高記録です(鏡週刊2020年11月2日)。

 台湾全土の興行収入は10月30日から11月1日までの3日間で1億1700万元(約4億2000万円)を突破、累計動員数47万人を記録、台湾でのアニメ映画初週興行収入で歴代1位となりました(中央通訊社 2020年11月3日)。

 また、11月6日からは中国語吹き替え版の上映も始まりました。テレビアニメ版と同じく錢欣郁氏や江志倫氏など第一線で活躍する声優陣が吹き替えを担当(聯合新聞網 2020年10月29日)、中国語版上映にも多くの人が足を運ぶと予想されています。

 日本のマンガやアニメなど日本文化好きが多い台湾では、今回の劇場版公開以前から、日本と同様「鬼滅の刃」が人気を博していました。コミックは中国語版が2018年1月から刊行(台湾では既刊21巻)、テレビアニメは日本でのテレビ放送とほぼ同時にインターネットで配信を開始(日本:2019年4月6日から、台湾:同年4月7日から)、2020年2月1日からは中国語吹き替え版の東森テレビ放映を開始しました。

 吹き替え版では上述の錢欣郁氏等、台湾声優界を代表する人々が担当したクオリティの高さが評価され、テレビアニメ版「鬼滅の刃」は日本語版・中国語版共に高い評価を得ています (巴哈姆特 2020年11月6日ほか)。

■耳飾りに修正なし 「原作を尊重すべき」の声

鬼滅の刃の耳飾りの台湾・中国の違い(巴哈姆特動畫瘋配信 台湾版、東森電影、Bilibili配信から)

 さてテレビアニメ版「鬼滅の刃」の海外放送にあたり、中国配信版と台湾配信版で主人公・竈門炭治郎の耳飾りのデザインが異なることが話題となりました(このニュースは日本でもネットを中心に話題となったようです)。

 どうやら耳飾りのデザインが旭日旗を連想させる恐れがあるため配慮、中国配信版はデザイン変更が為されたとのことでした(宅宅新聞 2020年4月7日)。台湾では「巴哈姆特動畫瘋」という運営会社が「鬼滅の刃」のネット配信を行っていますが、日本版を改変することなく同じ耳飾りのデザインで放映配信されました。炭治郎の耳飾りに修正はありません。

 また、東森テレビで放送された中国語版も変更はありません。絶賛上映中の劇場版でも修正はありません。しかし中国はbilibili(ビリビリ動画)によって耳飾りのデザイン変更版が中国向けにネット配信されました。台湾ではネットを中心に、以下のような声が挙がっています。

一個小小的太陽符號是會造成啥影響? (たった一つの太陽シンボルがどんな影響を及ぼすのだ?)

這聯想真的厲害 (これで<旭日旗を>連想するというのもすごい)

說真的不這樣改我還真看不出來..  (改変するまで<旭日旗とは>気づかなかったぞ…)

大陸人的心也太玻璃 (中国人は心が脆すぎるだろ)

と過剰な対応に驚きやとまどいの声や、

是的話又怎樣 (そうだとしたらどうなんだ)

と、耳飾りのデザインを否定的に受け取らない声もありました。また、

從漫畫一開始就一直戴著這對耳飾,動畫版看起來應該也是遵照原作 (コミックではこの耳飾りなのだから、アニメ版も原作に倣うべきだ)

這樣要花多少心力檢查每一個畫面啊… (どれだけの労力を各シーンの検査に費やすんだ…)

と、原作を尊重するべきといった声や、製作サイドを労うコメントも多く寄せられていました(コメントはPTT 批踢踢實業坊ほか)。

 なお11月8日時点で中国での劇場版「鬼滅の刃」上映の話はありません。このような形での配慮の為に中国での配給が遅れている(/未決定)だとしたら、中国にいる多数の「鬼滅の刃」ファンの気持ちを思うと…何とか中国でも上映してほしいものです。

 何かと言えば「統一」を口にする北京政府が、アニメの耳飾りは「統一」を拒否する度量の狭さとでも言えばいいのでしょうか。

■「鬼滅の刃」フィーバー、グッズ期間限定販売店には行列、ハロウィンでは市長もコスプレ

ハロウィンイベントでは侯友宜新北市長が登場主人公竈門炭治郎に扮して登場(東森新聞から)

 「鬼滅の刃」の大流行で、巷には多くの「鬼滅の刃」グッズが溢れています。近所の大手スーパー文具コーナーには特設ブースで消しゴムやノートなど様々な「鬼滅の刃」グッズが販売されています。また映画上映に先立ち期間限定で百貨店に儲けられたノベルティグッズ販売店では、オープン前から長蛇の列、日本直輸入の限定商品を買い求めていました(TVBSNews Youtubeチャンネル)。

 また今年のハロウィンでは「鬼滅の刃」コスプレの子供達を多く見かけ、「鬼滅の刃」の人気ぶりを感じました。新北市板橋区で開催のハロウィンイベントでは侯友宜新北市長自らが主人公竈門炭治郎の衣装に身を包み登場、市民から喝采を浴びていました(東森新聞 Youtubeチャンネル)。

 余談ですが同日に台北で行われたLGBTパレードには約13万人が参加しており、各地の大規模イベントが例年と変わらず開催されている様を見ると、台湾の防疫策の成功を改めて感じます(台湾では200日以上連続で市中感染が確認されていません)。

■ドラマ撮影現場で「早く”鬼滅”が観たい」の声

 最後に、私が劇場版「鬼滅の刃」の人気と関心度の高さに驚いたのは、映画公開初日から4日後、あるドラマ撮影の現場でした。

 私と同じシーンの役者さん(大の日本アニメ好き)と、照明セッティングの待ち時間に「鬼滅の刃」映画版公開のことを話していたところ、それを聞きつけたカメラマンが「早く観に行きたいのに撮影の休みが一週間後」と愚痴り出し、またそれを側で聞いていた監督も「俺も早く観に行きたいよ」となり、周りのスタッフや役者から「私も」「俺も」の声が一斉に。

 「鬼滅の刃」フィーバーは当分続きそうです。

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