伊藤詩織氏が敗訴 山口氏反訴に続く黒星

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 ジャーナリストの伊藤詩織氏(32)が杉田水脈衆院議員に対して提起していた訴訟の判決が25日、東京地裁で言い渡され、請求は棄却された。自らを中傷するツイッターの投稿に「いいね」を押され名誉感情を侵害されたことに対して、損害賠償を求めていたもの。伊藤氏は判決を批判したが、自身がTBSの元ワシントン支局長の山口敬之氏との訴訟で、名誉毀損などで損害賠償の支払いを命じられている中での批判に違和感を覚えた人は少なくないと思われる。

■退けられた伊藤氏の主張

伊藤詩織氏(左)と杉田水脈氏(杉田氏写真は同氏公式サイトから)

 伊藤氏は自らを中傷するツイッターの投稿に杉田議員が「いいね」を押したことで名誉を傷つけられたとして、合計220万円の損害賠償を求めていた。「相手をレイプ魔呼ばわりしたひきょう者」「ハニートラップを仕掛けた」「カネをつかまされた工作員」など25個の投稿に杉田議員が「いいね」を押したとしていた。

 しかし、東京地裁(武藤貴明裁判長)は「『いいね』は抽象的、多義的な表現行為で、特段の事情がなければ違法ではない」として伊藤氏の訴えを退けた。(以上、東京新聞TOKYO Web・中傷ツイートへの「いいね」に名誉侵害は認めず 伊藤詩織さんが杉田水脈衆院議員に敗訴、東京地裁)。

 もともと、この訴えには無理があった。伊藤氏の主張は記事への賛意という表現行為として「いいね」を押すことを躊躇させ、表現者を萎縮させることにつながる。このことは憲法で保障された表現の自由の制約になるのは疑いない。また、「いいね」は備忘のため、既読を知らせるためなど、さまざまな意味で使用されることがあり、一概に記事への賛意とは判断できない。

 こうした点から、当サイトでは提訴の2020年8月の時点で「『いいねを押したことで、名誉感情を侵害された』というのは無理筋」「『いいねで社会的な評価が傷ついたとは言わないが、気分が悪い』という裁判で勝ち目があると考えたのであろうか。」(参照・伊藤詩織弁護団こそ名誉毀損ではないのか)と指摘していた。今回の判決は東京地裁がそのような判断を示したことになる。

 伊藤氏はSNS上の表現に対しては多くの訴訟を提起している。「枕営業大失敗」などと書かれたイラストを投稿した漫画家はすみとしこ氏への訴えでは88万円、伊藤詩織という名前は「偽名」などとツイートした元東京大学大学院特任准教授の大澤昇平氏への訴えでは33万円の賠償を命ずる一審判決が出されている(ハフポスト・漫画家はすみとしこさんに88万円の賠償命令。伊藤詩織さん思わせるイラストを投稿、同・伊藤詩織さんを「偽名」とツイート、元東大特任准教授・大澤昇平さんに賠償命令)。

 はすみとしこ氏と大澤昇平氏の判決については、それなりに理由はあったのかもしれないが、この「いいね」訴訟は一審段階ではあるが、さすがに無理筋であったということであろう。

■山口敬之氏の反訴請求は一部認容

東京地裁・同高裁

 伊藤氏は控訴して争う姿勢を示しており、それはそれで「どうぞご自由に」と言うしかない。ただ、忘れてならないのは伊藤氏がTBSの元ワシントン支局長の山口敬之氏との控訴審で、反訴請求が一部認められている点。今年1月25日に東京高裁で出された判決では、55万円の支払いを命じられている。

 これは伊藤氏が山口氏に対する名誉毀損とプライバシー侵害の不法行為を認定したものである。東京高裁では2つの公表行為について不法行為が成立するとしている。どちらもデートレイプドラッグ(以下、DRDとも表記)を伊藤氏が気付かないように服用させ、意識不明の状態に陥れたとする事実の摘示である。

(1)酔って記憶をなくした経験は一度もありません。普段は2人でワインボトル3本空けてもまったく平気でいられる私が仕事の席で記憶をなくすほど飲むというのは絶対ない。だから、私は薬(デートレイプドラッグ)を入れられたんだと思っています。(週刊新潮2017年5月18日号)

(2)デートレイプドラッグを入れられた場合に起きる記憶障害や吐き気の症状は、自分の身に起きたことと、驚くほど一致していた。(Black Box 伊藤詩織著 文芸春秋社 p66 7行~8行)

 これらの部分が山口氏の名誉を毀損し、プライバシーを侵害しているとされた。伊藤氏はこの点について(1)はDRDを服用させられたことを疑った事実を、(2)は自分に生じた症状がDRD服用時の症状と一致していた事実を、それぞれ摘示したものにすぎないと抗弁していた。

 しかし、こうした主張は東京高裁に一蹴された。

 まず、性交が行われた2015年4月4日午前から、週刊新潮の記事や、著書Black Boxで事実が公表されるまでの間に2年以上あったのに、その間、何の調査もしなかったことが指摘されている。

 「…その間、控訴人(筆者註・山口敬之氏)が不起訴処分となり、また、検察審査会への異議申立ても棄却され、控訴人がデートレイプドラッグを所持し、被控訴人(同・伊藤詩織氏)に対してこれを服用させたことを裏付ける客観的な証拠は一切得られていない中で、被控訴人自身が本件名誉毀損及びプライバシー侵害行為に至るまでの間に、相当の調査等を行った形跡もうかがわれない…」(東京高裁判決令和4年1月25日、以下、本件判決 p179 1行~6行)

写真はイメージ

 DRDを服用させていれば犯罪が成立する事案で、証拠はなく、刑事責任も問われなかった。それなのに調査も全くしないまま、DRDを服用されたかのように摘示したことは不法行為が成立するとしたのである。判決文は続ける。

 「被控訴人が、本件加害行為(筆者註・伊藤氏の同意がないまま行われたとする性交=山口氏は同意有りと主張)により、精神的・肉体的な苦痛を受けるとともに、羞恥、混乱、困惑、怒り等の感情を抱えて苦しんだことは理解できるとはいえデートレイプドラッグに関して既に指摘した公表行為に至ったことは、軽率であったとの非難を免れないというべきである。」(本件判決 p179 6行~10行)

 控訴審判決でも山口氏が伊藤氏との性交は同意がなかったとする原審の認定を維持したが、そのような山口氏には厳しい事実認定の上でも、当該公表行為は損害賠償の責を負うレベルのものであると判断したのである。このことは、東京高裁が伊藤氏の行為は非常に悪質と判断したと言って差し支えない。

■多くの人が覚えるであろう違和感

 伊藤氏の今回の杉田氏との訴訟の判決言い渡し後に「裁判所がセカンドレイプを許しているような気持ちになった」(共同通信47NEWS・中傷に「いいね」名誉侵害認めず)と話したことが報じられている。

 「いいね」が押されたことに損害賠償責任はないと訴えを退けられたことに被害者意識を感じる人が、ありもしない薬物投与をあったかのように著書と週刊誌で発信することに加害意識はないのか不思議に思う。多くの人がその点にも違和感を覚えているのではないか。

 山口氏との訴訟で反訴請求が一部認容されたのに加え、今回の完全な敗訴と伊藤氏には厳しい状況が続いている。この流れはどこまで続くのか。

"伊藤詩織氏が敗訴 山口氏反訴に続く黒星"に5件のコメントがあります

  1. 名無しの子 より:

    「調査も全くしないまま、DRDを服用されたかのように摘示したことは不法行為が成立する」これについてですが
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jafst/advpub/0/advpub_r022/_pdf
    この記事によると、一年前の毛髪検査をするには、約20cmの毛髪があればいいそうです。伊藤氏は急いで髪を切ったみたいですが、あの髪型でも20cmくらいはあるようです。だから2016年この検査が可能になった時、検査さえすれば、一年前の2015年の事件の時にDRDが使われたかどうかが判明するのに、なぜ検査しなかったのでしょうか。
また2017年に伊藤氏が本を出版した時毛髪検査のことを触れているにもかかわらず、その事が書かれていないのはおかしいですね。

    ところで、イイね裁判ですが、イイねは肯定とは限らないというのは、まさしくそうだと思います。
    特に杉田議員は公人。沢山の支持者が、杉田議員に返信するでしょう。忙しさから、全て読んでいる余裕はないと思います。でもせっかくコメントをいただいたのだから、イイねだけでもつけておこうという気持ちもあったかもしれません。
    実際自民党議員は大変忙しいです。日本は問題が山積みです。そんな時に、はっきり言って、くだらない訴訟で、杉田議員の手を煩わせないでほしいです。でも実はそれが、目的の一つでは。慰安婦問題などに、鋭い切り込みを入れる杉田水脈議員が目障りなのでしょう。伊藤氏が訴えている方は皆、愛国保守の方ばかり。わかりやすいですね。

  2. 名無しの子 より:

    連投すいません。
    自分を批判しているツイートにイイねしているかどうかなんて、その方のアカウントを確かめにいかなければわかりません。
    わざわざ確かめに言って、わざわざ探して「傷ついた」なんて言ってるなんて、わざわざアラを探しに行ってるようにしか思えません。
    ある意味、執念深いストーカー。
    杉田議員は、伊藤氏を、ストーカーで訴えてやればいいのにと思いました。
    まあ、勿論、そんな事はしないでしょうけれど。

  3. オーバーカッセル より:

    既に別記事に対してコメントをさせて頂きましたが、伊藤氏グループの節操のない活動が続く中、1/25の控訴審の名誉毀損認定と今回のいいね訴訟の敗訴で流れが変わる事を強く望むばかりです。

    杉田議員は2018年のBBCの伊藤氏特集番組でのインタビューでも非難を浴びましたが、これはBBC側に大きな意図的な落ち度があったとの事です。当時の杉田議員のコメントを以下の通り参考に記しておきます。

    今年の夏は2月にBBCの取材を受けました。その時の企画書は下記の通り。「#metoo運動の日本での反応」ということで、男女共同参画やセクハラに対する一般的な話しが主でした。インタビューは2時間以上に渡りました。話題は性犯罪のことにも及びましたが、「日本は他国に比べ、レイプなどの少ない、女性が安心して暮らせる国である」ことを強調しました。その上で、伊藤詩織氏の件について色々聞かれました。ところが企画書と放送内容が異なっていることに驚いています。私はこの企画書を持って党と相談し、その上で許可を得て、インタビューに応じました。番組は完全に伊藤詩織氏の特集となっています。スタッフの方から、「伊藤詩織氏にもインタビューしました」とは聞いてましたが、セクハラなどについて全般的な内容にしたいとのことでした。伊藤詩織氏の番組を作りたいとは一言も聞いていません。「この部分を使いたい」という確認はありましたが、それは英訳があっているかどうかのチェックでした。そもそも2時間以上のインタビューで使うのが5センテンス程度となれば、それは切り取りと言わざるを得ません。このようなことを想定して、インタビューの映像はこちら側で全て記録しています。場合によってはそれを公開することも考えています。

    記事の中に「番組の取材に対し杉田議員は、伊藤氏には『女として落ち度があった』と語った。」と書かれており、ネット上では「セカンドレイパー」だとの批判が噴出していますが、これも[切り取り]です。もし女性が、薬を飲まされて無理やり連れ込まれて強姦されたのであれば、私は「女として落ち度があった」とは全く思わないし、そんな犯罪者は本当に許せないと思います。が、この点については伊藤詩織氏と山口敬之氏の主張が食い違っています。まず、伊藤詩織氏は「デートドラッグ」なる薬を飲まされたと言っていますが、証拠は「私は普段からお酒に強く、酔って記憶を失ったことがない。だから、薬を飲まされたに違いない」という証言のみです。彼女はこの件の後すぐに病院に行っていますが、尿検査をしていません。もし尿検査を受け、薬物反応が出れば動かぬ証拠となったのでしょうが、今となっては調べようがありません。一方、山口敬之氏は昔からの行きつけの店のカウンターで飲んでいて、多くの人の目もあり、薬を入れるのは不可能だったと語っており、その証言に基づいて検察は現場検証をしています。また、所謂「デートドラッグ」というものはインターネットでしか手に入らないということで、検察は、山口氏の持っているPCやモバイルなど全てを押収して調べたが、そういったドラッグを購入したことは一度もないことが確認しています。更に「無理やり引きづりこまれた」と伊藤氏は証言していますが、ホテルの防犯カメラには自分で荷物を持って歩く姿が確認されています。伊藤氏は翌朝山口氏を気遣う内容と共に「VISAのことについてどのような対応を検討してもらえますか?」というメールを送っています。このように対立する二つの証言があり、それらを検証した結果、東京地検が不起訴としています。これに対し、東京第6検察審査会も「不起訴相当」とする議決を公表しました。客観的に見て、伊藤氏よりも山口氏の証言の方が信憑性が高いと司法が判断を下したことになります。

    その結果を踏まえた上で、私は「これは強姦事件ではないと司法が判断した。女性にも落ち度があったと言わざるを得ない。」と発言しています。もう一度、言います。私は性犯罪は許せないと思います。無理やり薬を飲まされたり、車に連れ込まれて強姦されるような事件はあってはならないし、犯人の刑罰はもっと重くするべきと考えています。が、伊藤詩織氏のこの事件が、それらの理不尽な、被害者に全く落ち度がない強姦事件と同列に並べられていることに女性として怒りを感じます。「海外に日本の現状が誤って広がることをなんとか止めたい」インタビュアーの質問に応えながら、そればかり考えていましたが、そこはゴッソリ抜かして編集されたようで、とても残念に思います。

  4. 通りすがり より:

    こういう意味不明な訴訟を起こす輩がいるから、わざわざプロフで「『いいね』は必ずしも賛意を示すものではありません」という断り書きを入れているユーザーがいるわけですよね。
    …まぁわざわざその文言を入れているような人間の普段のつぶやきやリプを見てみると、妙に納得させられることもある訳ですがw

    こういう下らない訴訟を安易に起こさせないような法整備が欲しい所ですね。
    伊藤詩織や小西洋之のような連中の暴挙を止めるためにも。

  5. 伊藤和子弁護士のツイッター英語プロフィール より:

    記事からは脱線しますが、コメントさせていただきます。
    最近伊藤和子弁護士のツイッタープロフィールを見ましたが、PhD researcherという肩書に違和感を覚えました。英語圏に限らず、PhD researcherとはPhD holder(博士号取得者)が職名に準じて名乗るが普通だと思います。

    博士号をとられたのかな?と個人ページなどを確認しましたが、博士号をとられたような記述は探した限り見当たりませんでした。もし博士号をとっておらずにただ博士課程に在学中の身分ならば、PhD studentあるいはPhD Candidate(博士候補。そのような制度を採用する大学で伊藤弁護士が候補になられたのであれば、の話ですが。最近は日本の大学でも採用しはじめたようですが)と書くのが通常です。

    PhD researcherは博士号取得者であるかのような誤解を招く表現だと思いますが、この点、伊藤弁護士の学位の件は、何かご存知でしょうか。私の調査不足や勘違いだとよいのですが。

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