札幌”冤罪”元教師 免職から5年 今も復職に意欲
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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全く身に覚えのない行為を理由に2021年1月に懲戒免職された元中学校の教師(61)が、処分から5年を過ぎた現在の心境を語った。28年前(1993年)の行為を理由に処分されたが、現在、札幌地裁に係属する免職処分取消訴訟で、一貫して”冤罪”と主張している。再び教壇に立つことを目指し、戦い続けた5年間の思いを当サイトに語った。なお、当サイトは本件で同地裁に報告書を提出しており、今回、さらにサイト内の記事が証拠として提出された。
◾️年内に一審判決も
事案は中学校の美術教師であった鈴木浩氏(仮名)が、1993年に授業を受け持った生徒の1人であった、当時中学3年生の女子生徒に対して、わいせつな行為をしたというもの。
この女子生徒は後に東京地裁に損害賠償請求訴訟を提起した。メディアにも積極的に登場し、被害者であることを強調した。この女子生徒が現在、写真家の石田郁子氏(48)である。
一審の東京地裁は非違行為の存在を認めず、訴えを棄却した。ところが、控訴審(東京高裁)では一転して非違行為はあったと認定したのである。しかも、訴えそのものは棄却されたために鈴木氏は上告できない。石田氏も上告せずに判決が確定。そもそも非違行為とされた行為の認定は、既判力がない判決理由中の判断に過ぎない。ところが、判決後の2021年1月28日、札幌市教委は鈴木氏の懲戒免職を決めたのである(参照・免職教師の叫び(1)「ワイセツ教員じゃない」 ほか)。
鈴木氏はその後、別の職業に就き、日々の仕事をこなしながら同年3月1日に札幌市人事委員会に免職処分の取消しを求め、審査請求を行った。2年後の2023年3月7日に審査請求の棄却の裁決が出され、同年8月30日に札幌地裁に免職処分取消を求める訴状を提出した。
免職時は56歳、現在は61歳となっている。人生の収穫期とも言える50代後半からの貴重な5年を、ほぼ復職のための戦いに費やしてきた。鈴木氏は「最初の2年が審査請求、その後の3年は裁判です。5年は長いと感じます。お金もかかる、時間もかかる、労力もかかり、その上、気持ちもそっち(審査請求及び裁判)に持っていかれますから、趣味に没頭することなど到底できません。ただ、今年で目処がつきそうだ、一審判決が出そうだというのは感じますので、そこに期待をかけています」と話す。
◾️「あまりにも理不尽」な免職
ある種、砂を噛むような味気ない日々を支えたのはどのようなものであったのかという問いへの答は明確であった。
「何も悪いことをしていないのに何で懲戒免職されないといけないのかという思いです。あまりにも理不尽なので、そこはしっかりと(無実であることを)証明したいと、ずっとそういう思いでいます。自分の子供にも示しがつきませんし、私の教え子たちも傷つけてしまいます。教えた生徒は合計で2万人ほどいますが、このままでは『あの先生、そんなことしたんだ。がっかりだ』という気持ちを持ってしまうでしょう。それから私がここで挫けてしまったら全国の200万人の教員に対しても、『こんなところでやめてしまって申し訳ない』という思いになります。そうした自分のためだけではない、いろいろな意味合いを自分の中で持っています。」
昨今は、教員グループの盗撮画像共有事件をはじめ、さまざまな不祥事があり、教員に対する世間の目は厳しくなっているように感じられる。その中で、鈴木氏は自らの事案が”冤罪”であることを裁判所に認定してもらうことで自らの名誉を回復し、それが教員全体の信頼回復の一助となり得ると考えている。
最後の勤務先となった中学校の同僚と、1人だけ連絡が取れたという。免職直後の状況について話を聞けたそうで、その内容に大きなショックを受けた。「同僚の話では『鈴木先生がそうなって、それはもう大変だった』とのことでした。『あれだけ信頼を集めていた先生がワイセツ教員だったなんてなったら、生徒指導上も全然抑えが効きません』とのことです。子供たちの心が荒れてしまったのでしょう。それを聞いた時に、先生方には申し訳なく思いましたけれども、同時に市教委に対してものすごい怒りの感情がわきました」と説明する。
5年という年月の間に、あらためて明らかになってきた状況を把握するたびに、市教委の下した判断の誤謬に憤る日々でもある。
◾️信じ続ける人たち
現在、61歳という年齢は復職という点では、一つの区切りとなる。免職にならなかったら、今年3月までは正規採用の教員で、4月からは再任用となり、65歳まで続けるという予定であったという。仮に今年一審で勝訴し、免職処分が取り消された場合は、年齢からして再任用の教員となる。
『もし、一審で勝訴判決が確定したら』との問いには「再任用を申し出ます。それは当然の権利ですから。私としては再び教壇に立ちたいとの思いは強く持っています。やりたかった授業を途中で奪われた形ですから『授業したいな』、『焼き物作りたいな』という思いは今でもあります。ただ、市教委がどういう態度に出るかは分かりません。そこは(雇用される)保証はありませんので」と答えた。
鈴木氏が免職された当時、ネット上のバッシングはすさまじいものがあった。『わいせつ教員』のレッテルを貼られ、実名を晒され、自宅には報道陣が押しかけ(参照・免職教師の叫び(21)現在進行形の報道被害)、多くの仲間が去っていった。
しかし、”無実”を叫び、戦い続ける鈴木氏を支援する人たちは存在する。特に信じて応援してくれている人は11人を数え、近況を聞いてきたり、励まされたりで精神的な支えになっているという。
「最近も退職される先生からメールをいただきました。『自分はもう退職するので、(学校で)お会いできなくて残念ですが、復職されるのを願っています』という内容でした」と話す。
◾️当サイトの記事を証拠提出
2026年に入ってから、弁護団は新たな証拠を提出している。その中には当サイトの記事も含まれている。それが「免職教師の叫び(3)妄想と現実の狭間」である。これは、石田郁子氏のワイセツな行為を受けたとする証言が客観的事実と相反することを示したものである。
当サイトは既に石田氏がオコタンペ湖で撮影したとする写真が、光源が2つあること、背景が人物を透過して見えていることなどを示して、同写真が合成されたものであることを示す報告書を提出している(参照・札幌教師免職取消し訴訟 当サイトが報告書提出)。それに続く証拠提出である。
本件訴訟は鈴木氏が市教委に免職処分の取消しを求める裁判で、石田氏は訴外人である。しかし、免職された直接の原因は鈴木氏からすれば『石田氏の虚言』であり、その信憑性を攻撃するのは当然なのかもしれない。これに対して市教委は石田氏を証人として反論することも考えられるが、当サイトが先に提出した報告書に対して石田氏も筆者も呼ばなかっただけに、今回も同様に無視する可能性はある。
鈴木氏に、今、石田氏についてどう思うかと聞くと「嘘をつき、出まかせを言って私を陥れました。今は活動家になっているようですが、私を踏みつけてのし上がった、そういう人生の何が楽しいんだという思いと、激しい怒りがあります。思い出すだけで怒りが沸々と湧いてきます」と容赦ない。鈴木氏にとっては、仕事や社会的地位、平穏な生活も奪った人物であり、表現も激しくなるのは当然であろう。
◾️勝ち方が問われる戦い
提訴から2年半あまりになるが、鈴木氏に油断する様子は見られない。その理由の1つに、ただ勝つだけでは、十分な勝利とは言えないという点がある。「非違行為はあったかもしれないが、免職に至る手続きが十分ではないので処分を取り消す」という趣旨の判決であれば、名誉は全く回復されない。
鈴木氏は以前、弁護士から「あなたは何も悪いことをしていないのだから、勝つのは当たり前、と思っていませんか?」と聞かれたという。
「ドキッとしました。確かにそういう気持ちもあるなと思いましたから。それから、他の弁護士さんには『100%勝つのと51%勝つのでは違う』と言われました。たとえば『手続き上のことで市教委がミスしたから、復職を認めます。でも、ワイセツ行為があったかどうか分かりませんよね?』という判決になる可能性はあります。そういう勝ち方が51%ぐらいの勝利です。それに対してワイセツ行為はない、石田氏は嘘をついている、市教委の判断ミスなのだから、失った給与なども含めて全て回復される。それが100%の勝ちでしょう。勝つのが大前提ですが、勝ち方も問題になります」。
100%、あるいは100%近い勝利こそが求められており、最後まで気を抜けない日々が続く。鈴木氏の5年を超える戦いに、どのような結末が待っているのか。注目の判決は年内にも言い渡される見通しとなっている。







