乱入「No War」 キャスターは知っていた?
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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ロシアの国営放送「チャンネル1」で、生放送中に女性がカメラの前に立ち「No War」などと書かれた紙を掲げた。メインキャスターは何事もなかったかのようにニュース原稿を読み続けたが、数秒間、ロシア国内にウクライナ侵攻への抗議が放送される結果となった。プーチン政権が国営放送も完全にコントロールできなくなっていることは、政権の終焉の序章と言えるのかもしれない。
■ニュース番組内での抗議行動
事件は3月14日夜、チャンネル1のニュース番組で発生した。ロシアへの経済制裁に関するニュースをメインキャスターが読み上げている時に、突然、若い女性が画面に入り込み、ロシア語で「戦争をやめろ」などと叫びながら、「No War」と書かれた新聞紙大の紙を広げた。
紙には英語で「No War」と書かれ、その下にはロシア語で「プロパガンダを信じるな。あなたたちは騙されている」と書かれ、さらにその下には英語で「ロシア人は戦争に反対する」と書かれていた。およそ5秒間、その映像がそのまま流れた後、VTRの映像に切り替わった。
報道によると、抗議した女性はマリナ・オフセヤニコワ(Marina Ovsiannikova)氏で、父がウクライナ人で母がロシア人。現在はチャンネル1の編集担当をしている。事件はそれでは終わらず、ロシアの人権団体「OVD-Info」がツイッターで事前に収録されたと思われるオフセヤニコワさんの映像を公開した。映像を引用するツイートは以下。
「❗️チャンネル1のVremya(筆者註・ニュースの番組名)の生放送中に反戦ポスターを掲げてフレームに入った女性は、チャンネル1の従業員であるマリナ・オフセヤニコワです。
オンエア中に登場した後、彼女は拘束されました。 現在、彼女はおそらくオスタンキノ警察署にいます。」(3月15日午前5時36分投稿、原文のロシア語を和訳)
引用された動画でオフセヤニコワ氏はロシア語で76秒ほど話をしているが、その内容は、自分はチャンネル1で働いており、クレムリンのプロパガンダを作成していたことを後悔し、恥じているというもの。また、2014年(筆者註・ロシアによるクリミア半島併合を指していると思われる)がスタート地点で(野党の指導者のアレクセイ・)ナワリヌイ氏に毒を盛った時にも自分達は抗議をしなかったとする。
その上で「ウクライナで発生していることは戦争犯罪であり、ロシアは侵略者である。この攻撃の責任は1人の人物の肩にかかっている。その人物はウラディミール・プーチンだ」とした。(以上、The Guardian・‘They’re lying to you’: Russian TV employee interrupts news broadcast ほか参照)
■メインキャスターはなぜ動じなかったのか
この事件は欧米のメディアで一斉に報じられ、日本でもテレビがさっそく、その時の映像を使用して詳細に報じている(FNNプライムオンライン・「NO WAR」生放送中に反戦訴え ロシア国営テレビのスタッフ[ウクライナ侵攻])。
オフセヤニコワ氏が抗議行動を行った後に、人権団体が事前に収録したと思われる映像を公開したことを考えると、事前に計画されていた行為であり、おそらく、人権団体も生放送中に抗議行動をすることを知っていたと思われる。
さらに映像を見ると、不自然な点が浮かび上がる。ロイター通信などがその時の映像を公開しているので、ご覧になっていただきたい(Reuters・Anti-war protester disrupts live Russian state TV bulletin、ITV News・Russian journalist interrupts live TV state media broadcast with ‘no war’ protest ほか)。
オフセヤニコワ氏が大きな足音をたてながら画面に入り込んできた時、女性のメインキャスターは表情を全く変えず、淡々とニュースを読み続けている。オフセヤニコワ氏が声をあげた時に若干、自分の声も大きくしているように思えるぐらいで、全く何もなかったかのように読み上げているのは不自然としか言いようがない。
もし、日本で同じことが行われたどうか。メインキャスターはパニックに陥るだろうし、「今、スタッフが入ってきまして、しばらくお待ちください」と視聴者に向けて話しかけるなどして、スタッフに出ていくように言うのではないか。そうした行為を全くせず、動揺した様子も見せないということは、予め乱入してくることを知っていた可能性も考えられる。
■不自然なオフセヤニコワ氏の動き
オフセヤニコワ氏の動きも不自然。当初はメインキャスターの真後ろに立っていたが、メッセージが隠れてしまうことに気づき、画面向かって右に移動し、メッセージが視聴者に見えるようにしている。
これはモニター画面を見て、メッセージが隠れてしまっていることに気付いて動いたのであろう。そもそも乱入者が入ってきてカメラが正面を向いたまま一切、動かないことがおかしい。このような場合、映らないようにアングルを変えるか、別のカメラに切り替えるはず。それをせずにオフセヤニコワ氏のためにアングルを固定しているかのようなカメラワーク(不作為)。これはオフセヤニコワ氏に協力していると見られても仕方がない。
こうした事情を考えると、オフセヤニコワ氏の行為は予め現場では予定しており、その後、組織的な行動であることを隠すためにVTRに切り替えたと考えられる。
■最長で15年の禁錮・懲役
オフセヤニコワ氏は事件後に身柄を拘束されたが、3月上旬に実質的に反戦報道を禁止する法案が可決されており、違反者には最長で15年の禁錮、懲役が科されることになった(日本経済新聞電子版・ロシア、軍事の虚偽情報に最大15年の刑 議会が法案採択)。
ロシア国民の多くが視聴するテレビ番組での行為とあれば、長期間の身柄拘束は覚悟しなければならない。それでもオフセヤニコワ氏は戦争を止めるために他に手段がないと考え、自らの命をかけて抗議をしたのであろう。自由の闘士と呼ぶにふさわしい女性である。
別の見方をすれば、このような厳しい刑罰があるにもかかわらず抗議行動に踏み切ったのは、プーチン大統領の権力基盤が揺らいでいることが原因にあると思われる。もし、盤石の基盤があれば、さすがに15年の禁錮・懲役の前に怯んでしまうのではないか。遠からずプーチン政権は倒れ、自らも罪に問われない可能性があると計算していても不思議はない。もちろん、それは悪いことではなく、仮にそうであったとしても彼女の行為の価値が毀損されることはない。
このように国営放送の職員からも命懸けの抗議がされるということ自体、プーチン政権への不満や憤りが出ていることの証左。ロシア全土でも抗議の反戦デモが発生しており、ウクライナ攻略に手間取る間にロシアが足元から崩れていく可能性を感じさせる事件となった。
まぁ局ぐるみで計画的に行われたであろうことは想像に難くないですね。
もし関係者に過酷なことを行った場合は、国民によるデモどころではない暴動が起きるかもしれない。
記事にもあるように、近日中にプーチンが電撃的に失脚し目下拘束中のオフセヤニコワ氏が一分一秒でも早く自由の身となれるよう期待する。
キャスターの方が罰金だけで釈放されたようですね。
流石に、ここで重罰にすると余計にプーチン政権に批判や反感、反戦の感情が増える事を懸念しての処置ですかね。
キャスターが動じなかったのは、原稿を読み上げることに集中していた体と思われる。
彼女の前にあるカメラは、普通のカメラではなく、プロンプター組み込み型カメラで、
そこに映る原稿を読んでいるのだろう。彼女の姿勢・視線が動かないのが証拠だ。
声のトーンが上がったのは、余計な音が聞こえてきたので、自分の声を聞きやすくするためだろう。カメラが乱入者をフレームから外さなかったのは、カメラがリモート式で、スタジオにカメラマンがいなかったためと思われる。ニュースなどでは、最近はリモート式のプロンプターカメラが普及し、サブコントロールルームで操作することがほとんどである。
「No war」と書かれた紙を持った人は、カメラに映るように位置を横にしましたね。つまり、紙がキャスターに被っていたのが見えていたわけです。
そうすると、キャスターにもそれは見えるわけで、自分の後ろに紙を持った人がウロチョロしているのは分かりますし、声を上げているのに、全く動じず、その理由が「集中していた」では説明にならないと思います。
その推理は無理があると思います。