櫻井よしこ氏「祖国のために戦えるか」に過剰反応
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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ジャーナリストの櫻井よしこ氏の「あなたは祖国のために戦えますか」というポストに過剰な反応が続いている。アップされてから72時間を過ぎたところでコメントは2300を超え、記事の閲覧は400万に迫っている。コメントの内容を見ると「お前が戦争に行け」といった類のヒステリックな内容が目立つ。徴兵制を示唆する内容でもないのに、なぜ、このような異常とも言える反応が続くのか。
◾️櫻井よしこ氏ポストへの反発
櫻井氏は自らがLive配信する「櫻井よしこの言論テレビ」で1月20日に配信した「あなたは祖国のために戦えますか?」をXで紹介するポストを投稿した。
「あなたは祖国のために戦えますか」。多くの若者がNOと答えるのが日本です。安全保障を教えてこなかったからです。元空将の織田邦男教授は麗澤大学で安全保障を教えています。100分の授業を14回、学生たちは見事に変わりました。(2024年1月19日午後8時15分投稿)
何でもない配信のお知らせのポストであるが、この内容に怒りを覚える人が多かったのか、次々とアンチコメントが付けられた。一部を紹介しよう。
★薄ら笑いを浮かべながら「あなたは祖国のために戦えますか」という人、ゾッとしますね。老人が若者を煽ってはいけません。
★母親は命がけで子供を産んで一緒懸命に育ててるの! そんな大事な我が子を戦争に行かせるわけにはいかないの! そんなこともわからない?
★日本は戦争をしない国 政府は諸外国との平和外交に尽力すべき 戦う必要など無いはず
★NOに決まっています。 あなたが戦えばよろしい。 若者を差し出すな。
★あなたに問う 「君は祖国のために戦えるのか?」 自分が前線で武器を取る気もないくせに、若者を唆すのはやめなさい。恥を知れ。
★あなたが先ず見本見せてくれ それができないなら言わないで 戦争やりたい奴に人権はない
櫻井氏のポストをよく読んでほしいが、徴兵制を実施して若者を強引に戦場に連れて行こうなどとは一言も言っていない。安全保障を学んだ学生が、それまでの考え方が大きく変わったというものである。どう変わったかは紹介している動画を見てみないと分からないが、少なくともポストを見る限り「嫌がる若者を銃弾が飛び交う戦場に送り込もう」などとは言っていない。
それがなぜ「大事な我が子を戦争に行かせるわけにはいかない」「若者を差し出すな」というコメントになるのか。もともと日本は交戦権を否定しており、国際紛争を解決する手段としての戦争をすることはない。
仮に他国からの侵略があり、自衛隊が自衛活動を行ったとしても、現行憲法下で徴兵制度は認められないから、戦いを望まない若者が戦いの場に行かされることはない。徴兵制度が認められないことは、安倍晋三総理が平成27年7月3日の参議院での答弁書ではっきりと述べている(第189回国会 答弁書第178号)。ちなみにその根拠となる条文は13条(個人の尊重・幸福追求権・公共の福祉)、18条(奴隷的拘束及び苦役からの自由)などである。
◾️人権を抑圧する平和勢力
祖国のために戦うかどうか考えたこともない若者が安全保障の授業を受け、「外国が攻めてきた時に、自分はどうすればいいのだろう」と考え、愛する家族を命をかけて守ると考えて銃を取るシチュエーションであれば、それはそれで一人の成人が下した結論であるから、周囲がとやかく言う問題ではない。若者がそう考えるようになる言論や教育をやめろというのは、表現の自由(憲法21条1項)や、学問の自由(同23条)への不当な制約である。
「若者を唆すのはやめなさい」とコメントした人には、憲法が保障する権利をどう考えているのか聞いてみたい。自分の政治的信条と異なる者には憲法上の権利の保障はないと考えているとしか思えない。「戦争やりたい奴に人権はない」と端的に書いた者もいる。普通に考えれば、そうしたことを主張する者は自由を求める国民の敵である。
後者のコメントをした者は「あなたが先ず見本見せてくれ、それができないなら言わないで」とも書いている。これは端的に、一定の条件を満たした者以外は政治的主張をする資格はないと、表現の自由をあからさまに踏みにじる言動であることに気付かないのか不思議に思う。
誤解されるのを覚悟で言えば、平和や反戦を盲目的に叫ぶ者はこのレベルである。「戦争は絶対悪」という最優先の価値基準があり、そこに反するものは全て悪であると考えるから結果として他者の人権を制約することに何の痛みも感じない。そうした人間には憲法がどのように人権を保障しているのか、条文だけでなく過去の判例も合わせて読んでほしい。概してその種の人間は勉強しないタイプが多いので、読まないとは思うが。
◾️北朝鮮と中国こそが平和外交を
「日本は戦争をしない国 政府は諸外国との平和外交に尽力すべき」というコメントもあったが、この類も多い。日本が戦争をしなければ、他国は絶対に攻めてこないと考えているようである。憲法9条を守ってさえいれば永遠の平和を手にできると妄信しているタイプ。
北朝鮮がミサイルを発射し、Jアラートが鳴って安全な場所に避難させられている現状をどう見ているのか。中国の反国家分裂法8条に何と書いてあるのか。台湾が独立を宣言するなどした際には「国は非平和的方式その他必要な措置を講じて、国家の主権と領土保全を守ることができる。」と堂々と台湾に武力行使をすると定めている。バイデン米大統領は台湾を守ると明言し、米中は外観からは一触即発の状況と言っていい。
北朝鮮も中国も在日米軍基地への攻撃は当然選択肢に入り、集団的自衛権の行使もできる日本が平和でいられるのもそれほど長い時間ではないかもしれない。北朝鮮や中国が平和外交をしてくれるのならいいが、前者はミサイルの発射を続け、後者は台湾独立なら軍事介入を宣言し、尖閣諸島は自国領土と宣言している。
こうした情勢を見てもなお、日本だけが平和外交をして軍事衝突を回避できると思っているとしたら、よほどの愚か者か、現状から目を背けて国民を危険に陥らせることを狙う政治勢力と言って差し支えないのではないか。
◾️ウクライナでは若者が戦地へ
実際に日本周辺で戦闘状態が発生しても、訓練も受けていない、武器の使い方も分からない者が役に立つとは思えない。自衛隊が定期的に隊員を募集することはあっても、ダイレクトに志願兵を募るようなことは余程のことがない限り考えられない。
ただ、危難にあたっては国を守りたいという若者は一定数出てくるとは思う。ウクライナでも若者が祖国のために戦うと言って戦地に向かうことがあるのは各種報道を見れば明らかである(例としてTBS NEWS DIG・ウクライナ側反転攻勢続く中…「アゾフ連隊」ウクライナの若者相次ぎ志願 17歳の少年も【news23】)。
危機になれば自分が皆の役に立とう、という人間が出てくるのが日本という国の1つの特徴。櫻井よしこ氏が言わなくても、そうした若者は潜在的に存在していると思われ、「戦争反対」「言ってるお前が先に戦場に行け」と言って安全な場所に隠れている人間をも助けることになる。助けられた方は感謝すらしない。世の中は不条理にできている。
>ウクライナでも若者が祖国のために戦うと言って戦地に向かう
とは言うものの、
ウクライナの若者、いわゆる“X世代”には、件の『マイダン革命』に積極的に参加した者でない限り、ソビエト連邦時代の苦難を直接知る40歳代以上と、その世代からの苦悩の情報を濃く得る30歳代との“祖国防衛”に付いての断絶(=「単純に戦争はイヤ」)が少なからずあるという。
※それはすなわち、ウクライナが教育で『ロシアに対する安全保障を教えてこなかったから』という事で、つまりは櫻井よしこ氏のおっしゃる通りである。
「言ってるお前が先に戦場に行け」というのも、すなわち『戦争は戦場=自分からは遠いところ、で行われる』と考えていると言う事だろう。
ウクライナ人が詠んだ“俳句”を引用させてもらえれば、
•美しき 空より飛来 ロケット 我らに
と言う事だ、戦争は常に我らの頭の上にぶら下がっている。