トーチュウ休刊へ ”金欠紙面”断末魔の呻き声
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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東京中日スポーツが年内で休刊する見通しとなった。デイリー新潮が報じた。まともな広告は入らず、記者を派遣せずに外部ライター任せの記事と、報道機関としては末期症状と思える紙面となっている。
◾️トーチュウに6か月契約の問い合わせ
デイリー新潮は8月31日公開の記事で東京中日スポーツが年内で休刊すること、中日新聞幹部が「事実上の廃刊です」と語ったと報じた。その上で同紙が取材に対して「お答えすることは特にございません」とノーコメントであったことを伝えている(デイリー新潮・「東京中日スポーツ」事実上の“廃刊”か 「紙媒体をやめるということは“トーチュウ”ブランドが消えることに…」)。
休刊しないのであれば媒体の信用、広告営業にも関わるため「そのような事実はありません」と明確に否定するはずで、ノーコメントにしたことは基本的な情報は正しいと言っているに等しい。
9月2日に親会社の中日新聞に「東京中日スポーツの6か月の購読を申し込みたいのですが、休刊になるという報道があります。今の時点で6か月の契約はできますか」と電話で問い合わせたところ、応答した女性は「担当に聞きましたら、まだそういう(休刊する)話は現場には来ていないので、契約はしていただいても問題はありません」との答であった。
そこで、さらに「会社として来年1月からは配れないのを知っていながら、電話での問い合わせに対して休刊となる後の契約も問題ないと答えるようにしていたとしたら、メディアとしての良識を疑われます。もう1度聞きますが、本当に来年1月以降も配ってくれますか」と聞くと、「それなら、3か月契約にされたらどうでしょうか」という答であった。
◾️発行部数は4万部程度か
東京中日スポーツ、通称「トーチュウ」は関東圏のスポーツ新聞6紙の中では発行部数でデイリースポーツと5位争いを演じる下位グループに属している。同紙の2024年の媒体ガイドでは6万426部となっているが、これは水増しされた数字であろう(中日新聞グループ媒体ガイド2024)。
筆者が日刊スポーツ在籍時でトーチュウの発行部数は日刊スポーツの概ね6分の1から8分の1程度であった。2023年末の日刊スポーツの発行部数は20~25万部程度(参考・日刊スポーツ東京は25万部? 気になる行く末)と思われ、その比率が今も変わらないとすればトーチュウは2.5~4万部程度と推測される。
会社が明らかにしている部数と、実際の部数が乖離しているのは新聞社では当たり前のこと。スポーツ新聞もメディアとして虚偽の事実を伝えるわけにはいかないので、媒体として自社の発行部数を水増しして記事にすることはできない。そのため、自社記事には発行部数が掲載されることはないと言っていい。媒体ガイド、媒体資料などで水増しした部数を公表するが、それは記事ではないから、メディアとして虚偽の事実を伝えたことにはならないというエクスキューズが成立する。
実際のところ、各スポーツ紙が媒体ガイドなどで明らかにしている部数の60%~70%程度が実際の発行部数であるように感じられる。筆者が在籍した日刊スポーツは大体、その程度であった。トーチュウも同じレベルと考えると3万6000~4万2000部程度。前述の日刊スポーツとの比較を考えても、多くても4万部というのが現在の発行部数と想像する。
◾️クライアントから見放され
9月2日付けのトーチュウを購入して紙面をチェックすると、新聞社として末期症状にあることを感じさせるものであった。
1部160円で、全18ページ。うち、1ページが全広告のため実質17ページしか読むところがない。
驚いたのは広告。2面、3面は通常、下に5段分の広告が入り、稼ぎどころである。この日の2面に「ドラゴンズアプリ」の広告が入っているが、中日ドラゴンズのアプリであるから、出資者は親会社の中日新聞であろう。他に広告がないために入れたものと推測される。「1か月に⚪︎段以上入れて」という穴埋め的に使用される単価の安い広告の可能性もある。
そして3面には案内広告と呼ばれる求人情報。通常はギャンブル面などに入る、”きれいではない”広告である。それも5段全部埋まらずに、東京新聞の書籍の広告が2段の半分入っている。今はどうか知らないが、筆者が日刊スポーツに在籍していた2014年まで、3面の記事下に案内広告が入ったスポーツ新聞など見たことがない。2、3面を見る限り、広告ではほとんど稼ぎになっていないことが分かる。
裏1面も稼ぎどころであるが、「東京中日スポーツ電子版セットプラン」の3段広告。自社の電子版を契約してくださいというものであるから、基本的にお金にならない。芸能ページ(16、17面)も比較的広告が入るところであるが、16面は東京新聞の事業局の自社主催のフォーラムのお知らせで収益はないと思われる。
17面に週刊大衆の半5段広告が入っており、これはわずかに収益になっているものと思われる。隣の半5段は印鑑の広告で、こちらも多少なりとも収益になっているはず。
こうしてみると、既にクライアントからは広告効果はほとんど見込めないと見放されていることが分かる。販売収入と広告収入が新聞社の大きな柱であり、その比率が6:4程度が健全な数字と言われている。トーチュウの場合、その比率は、この日の紙面から推測するに8:2、あるいは9:1程度になっているように思う。
◾️外部ライター頼みの新聞
トーチュウの売り物はモータースポーツである。F1に早い時期から取り組み始め、固定読者を掴むのに貢献したと言われる。この日の裏1面はトップ記事がWGP(ロードレース世界選手権=二輪)で、それ以外にF1、インディカーなど、世界のモータースポーツの記事が掲載されている。
ところが、執筆者をみると3人全てが外部のライター。スペイン、イタリア、米国と3つの国に記者を派遣する余裕がないのは明らかで、一番の売り物のジャンルに自社の記者の記事がないのに「モータースポーツならトーチュウを」と言われても、どれだけの読者がついてくると思っているのか。トーチュウは様々な書き手が書き込む紙のプラットフォームとして生きていけると本気で考えていたのか、経営陣に聞きたいところである。
広告も記事もこれでは休刊は時間の問題。夕刊フジも来年1月いっぱいで休刊になると報じられたばかり(デイリー新潮・夕刊フジが来年1月で休刊か 「引き金はトラック運送費の値上げ?」ライバル紙が「むしろ大ピンチ」と戦々恐々するワケ)。
当サイトが以前、報じた2025年からスポーツ新聞廃刊ラッシュ(参考・スポーツ新聞廃刊ラッシュ 2025年から?)がいよいよ現実のものとなりそうな気配である。
トーチュウのキツさはご指摘いただいたとおりですが、デイリースポーツもきついですね。
新聞の「カラー」はあるとはいえ、今日の日刊スポーツは28面、一方で今日のデイリーは20面。手にしたときに2枚の差は大きく「薄っ」と思いました。たぶん、紙質も違いまますが。
まさか土日のスポーツ紙で20面とは驚きました。たしかに、中央競馬は来週まで2場開催で、中央競馬面はいつもより減るわけではありますが。
そして、下段の広告がほとんどなく、だいたいの面で記事で15段組みとなっています。
また、20面のうち10面が中央競馬をはじめとした「ギャンブル」面で、もはや「スポーツ紙」というより、「ギャンブル紙」であります。
NEWDAYSで買いましたが、いわゆる「エロ面」も廃止したのか、テレビ欄になっています。
個人的には「松とら屋本舗」がなくなったのが痛いです。
ちなみに、デイリーの1面が大谷ではなく、近本なのはデイリーらしい(笑)
おっしゃるとおり、デイリーも厳しいと思います。
ただ、東京のデイリーは出稿部門しかなく、整理部は神戸にあり、広告もそうらしいと聞いています。つまり、新聞をつくるためのコストが他紙よりかからないと言われています。その点で、サンスポが先に消えるのではないかという人もいるようです。
正直、どちらも終末は間近という点では変わりなく、どちらが先になっても、いずれは消えるから先後にそれほど意味はないという考えはできます。