フジ経営陣を無法記者が”糾弾”という結末

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 フジテレビが中居正広氏の女性トラブルに関して行った再度の記者会見は、出席した一部の記者によって荒れた展開となった。出席者への質問の前に記者の主観を延々と論じ、時に罵声を浴びせ、10時間以上も会見を強いる異常な事態。もともとの原因はフジテレビの経営陣の無能さが招いたとはいえ、もはや”チンピラ”とも言えるような一部の無法な記者、ライターの無法な振る舞いを延々と報じる会見となったことは現代社会の一つの問題を赤裸々にするものと言えた。

◾️望月記者の質問の無意味さ

取材中の望月衣塑子氏(中央、2021年撮影・松田隆)

 27日、フジテレビの再度の記者会見は見る者を不快にさせるものであった。港浩一社長も前回の会見から新しい事実を言えるはずがなく、10時間以上の会見の多くは記者が主観を述べて、自らの意に沿う回答を言わせることを強要する、それが出なければ罵詈雑言を浴びせるという、かつて一部の団体が問題を起こしたメディアに対して行っていた話し合いという名の「糾弾」に近い状況が生まれていた。

 象徴的だったのが東京新聞の望月衣塑子記者。「日枝(久)さんがいないこと、ちゃんちゃらおかしいと思っています」、「怒りが全く私には伝わってきません」、「一体何が起きたのか、今もって分かってない、だけどあまりにもCM、スポンサー72社以上引いて、とりあえず嘉納さんと港さんが辞めるかと、そんなような会見に見えるんですね。分かってないんですか、全部?」といった類の質問というより演説を行なっている。本来、そうした主観的部分は記事の中で書くべきであり、自らの主観を取材対象にぶつけることに意味があるとは思えない。

 このような一部の記者、ライターのやり方は、尾形聡彦氏、横田一氏らに共通のもので、そうしたことが厳しい批判を浴びている。たとえば尾形氏はNHK党の定例会見で大声で騒ぎ出して、立花孝志代表から退場させられている。横田一氏は国民民主党の会見に出入り禁止を言い渡されている。

 彼らはまさに”チンピラ記者”と呼ぶに相応しく、他の媒体の取材の自由、報道の自由を奪い、自らが延々と時間を独占して質問に名を借りて自らの主張を発表する場、自己の存在意義をPRする場としていることが日本の報道状況を悪化させているのは間違いない(参照・不勉強な望月衣塑子記者 君こそが国民の知る権利を侵害)。

 こうした記者を排除しなければ、貴重な会見の時間が彼らの宣伝の場に利用されて国民にとって大きな損失となるだけでなく、そうしたことが原因で報道の自由、取材の自由が制約を受けることになりかねない。

◾️もとはといえばフジテレビ

 このような事態を招いたのは、もとはといえばフジテレビのまずい対応が原因である。最初の会見で記者クラブ所属にのみ参加を許し、動画の撮影は不可という、報じる側のメディアとして自殺行為に近いような強度な制約を設け、内容もほとんどが実質ノーコメントという国民をバカにするようなものに終始し、その直後にスポンサーの大量離反という事態に陥った。

上は週刊文春2025年1月23日号

 最初の段階で真摯に対応していれば、このようなことにはならなかったと思われる。その意味では経営陣の無能さゆえの現在の状況とも言い得る。

 奇しくも会見の前に週刊文春が記事の一部を修正した。問題となった中居正広氏の自宅で行われた食事会は、中居氏が女性を誘ったものとしている(文春オンライン・中居正広・フジテレビ問題について、週刊文春コメント)。要は社員の関与はなかったというフジテレビの発表したコメントを追認した形である。

 問題の会食に社員が関与しているという報道は週刊文春1月16日号でなされているが、次号(同23日号)では記事内で修正されていた。当サイトは「同誌の前号では「X子さんはタレントの中居正広(52)、フジテレビの編成幹部A氏を交え、複数人で会食を行う予定だった」(週刊文春2025年1月16日号・中居正広 X子さんの訴えを握りつぶした「フジの3悪人」)と報じている。この点は誤報であったとして、週刊文春自身が最新号でX子案件にフジテレビが関与していなかったことを訂正した形になっている。」と、その点を指摘していた(参照・中居氏”新たな被害者”報道 問題の根源フジの体質)。

 結局、中居氏とのトラブルとなった女性、X子さんが業務の延長であるという錯誤に陥っていたということで、トラブルはフジテレビとは関係のない中居氏とX子さんの私的な問題ということである。この認識をフジテレビは当初から有していたのであるから、それを港社長は最初の会見をオープンな場にして堂々と発表、主張をすべきであった(参照・冷静になろう中居正広氏案件 伝聞証拠と守秘義務)。

 それを詳細については一切口を開かず、語らない理由を女性のプライバシーとしたことが社会の反発を招き、スポンサー離れに繋がったように思う。女性のプライバシーに配慮するなら、そもそも接待の現場に女性アナを同席させることや、タレントの私的パーティーに「今後の仕事のため」と言って連れ出すような職員の行動を制しなければいけない。

 女性アナをビジネスのツールとするかのようなことを積極的に推進しながら、事態がまずくなると「女性のプライバシー」を盾に責任逃れのような行為をすれば、誰からも信頼されなくなることぐらい気付くであろう。

◾️報道の危機としてのフジテレビ事件

写真はイメージ

 今後のフジテレビの問題は3月末を目処に出される第三者委員会の報告と、社内改革・改善、そしてスポンサーが戻るかどうかという点にかかってくる。

 これを機に費用対効果の点からテレビよりネットというスポンサーが出てくることも含めて考えれば、元に戻るには1年以上かかるように思う。世論を気にするスポンサー企業がそう簡単に戻ると思わない方がいい。

 フジテレビの事件はまだまだ続きそうではあるが、無能な経営陣が招いた混乱に、今、問題となっている”チンピラ記者群”が参上したことで、一般の人々には著しく後味の悪いものになったように思う。メディアは報道の危機の1つとしてこの事件を認識すべきである。

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