電力危機+復旧力弱体化 あなたも停電の被害者に

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石井 孝明🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

経済・環境ジャーナリスト。慶應義塾大学経済学部卒、時事通信社記者、経済誌フィナンシャルジャパン副編集長、アゴラ研究所の運営するエネルギー問題のサイトGEPRの編集担当を経て、ジャーナリストとエネルギー・経済問題を中心に執筆活動を行う。著書に「京都議定書は実現できるのかーC O2規制社会のゆくえ」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞社)など。

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◆電力危機、政府の動きは鈍い

 「大停電で菅政権の終焉? コロナの陰で進む電力危機」という記事を1月8日に書いた。多くの反響があり感謝したい。

  懸念通り1月7日に秋田県で約6万7000戸、鳥取県で約300戸の大規模停電が発生してしまった。被災した方に心からのお見舞いを申し上げたい。この停電は強風と豪雪による送電網の破損で、私の記事の危惧とは少し原因が違う。ただし全国で停電の危機は構造的な原因によるもので、電力危機はこの冬いっぱいは続きそうだ。

電力危機はまだ続く見通し(撮影・松田 隆)

 記事を書いた時と同じように、電力危機をめぐって政府の発信は少なく、対応は鈍い。1月8日の会見で梶山弘志経産大臣は「節電要請はしないのか」と記者の質問に、「いざという時にはあるかもしれないが、現時点では想定していない」と明言。現状は「いざという時ではない」との認識のようだ。逆に私は危険な状況と思う。

 間接情報と断るが、ある政界関係筋によると、政策通の梶山大臣は危機を理解しているものの8日に新型コロナ関連で緊急事態宣言を出したため、混乱を広げたくないために広報を最小限度にとどめているようだという。また菅義偉首相、加藤勝信官房長官は、経産省から上がってくる情報が楽観的であるのと、梶山大臣と同じように混乱を恐れて広報を抑制気味にしているそうだ。「『沈黙は金』という政治判断は、政策失敗の責任を取らされそうな経産省にも好都合」(同筋)という。

 さらにこの危機についてのメディアの報道は、量は少なく、深掘りの解説がない。つまり「原発停止」「再エネ振興と二酸化炭素排出抑制への過度の配慮」「電力自由化」が電力危機の背景にあると伝えない。メディアの多くはこの3つを賛美していたため、自分の間違いを認めたくないのだろう。

◆電力危機に私たちができること

 政府もメディアも無責任と思うが、責任追及は電力危機が終わってからにしたい。責めても、電気が作られるわけではない。私たちが、自分の身の回りでできることはある。以下を呼びかけたい。

1. 節電して電力不足を和らげなければならない。冬場に過剰な節電は寒さで健康被害をもたらすので、その点で配慮が必要だ。しかし必要のない電気は消してほしい。今回の危機では、まだ確認する統計数字が出ていないが、コロナ騒動での家ごもりと寒波による暖房増が影響し、電力需要が減っていないようだ。発電燃料のLNG(液化天然ガス)不足は世界で発生している。個人の節電が、LNGの使用を抑制する。

2. 停電は起こるかもしれない。そのために、水、食料、情報を収集するためのスマホの電源が必要であろう。今は冬であるため、電気を使わない保温対策も必要だ。日本の場合は、長くても1日程度で電力は復旧する。(今日の原稿のテーマで後述する)停電の際には、電力会社を信じて復旧を待ち、数日は自給できる体制を作れば命の危険はない。

3. 今回の電力危機は、前の原稿で示した通り、「民意に基づく政策」が失敗したことによるものだ。政治発言をするのは自由だが、合理的な内容に基づいて「民意」を作り、発言してほしい。この状況になっても、反原発とか、反石炭火力とか、電力会社攻撃とかを続けている人たちがいる。「ベトナムへの石炭火力輸出反対」とSNS上で騒いでいる大学生の活動家が、多くの人にこの電力危機を指摘され、笑われ、叱られていた。当然だ。「雑音」を流すのは、別の機会にしてほしい。

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