「右の陰謀論」の衝撃-米大統領選の変な余波

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石井 孝明🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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経済・環境ジャーナリスト。慶應義塾大学経済学部卒、時事通信社記者、経済誌フィナンシャルジャパン副編集長、アゴラ研究所の運営するエネルギー問題のサイトGEPRの編集担当を経て、ジャーナリストとエネルギー・経済問題を中心に執筆活動を行う。著書に「京都議定書は実現できるのかーC O2規制社会のゆくえ」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞社)など。
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◆「左」のお家芸「内ゲバ」が「右」で発生

 この3ヶ月、日本のネット界で変な現象が起こった。昨年11月の米大統領選挙をめぐる陰謀論が、いわゆる「右」から広がり、熱く語られ、今ではこの問題をめぐって保守層の中での罵りあいや、「左」のお家芸である内ゲバ(仲間内の暴力行為)が言論で起きている。

米国の極秘情報をどうやって東京でキャッチ?(写真はイメージ)

 内容はトランプ大統領(21年1月20日まで)が不正選挙で敗北したというもの。最初はトランプ氏が繰り返したが、「米軍がトランプ支持でクーデターをする」「選挙不正が裁判で覆される」「中国やロシアの工作が背景にある」「トランプ大統領と闇の勢力、共産勢力が戦っている」「米国の左派メディアが不正選挙に加担した」「Qアノン(闇の政府を信じる人)」など尾鰭がついて米国を中心に広がり、過激になり、日本に伝わった。

 難しいのは、この一部に事実が含まれていることだ。事実と妄想が切り分けされないうちに、「陰謀だ」というイメージが米国内外で広がっていった。そして日本に波及し、加熱した。日本では、この陰謀論に疑問を持つ人を「右」の人が攻撃。一部の保守系言論人同士の罵り合いに発展している。そして「左」の人が喜んでそれを煽っている。

 この状況を批判し、改善点を考えてみよう。

 この選挙で、不正や間違いはあったかもしれない。私は米国の左傾化した民主党とその支持者より、ビジネス・軍事同盟国重視の共和党と、激しいトランプ大統領の個性が好きである。しかし、現実と希望や夢は違う。現実を曲げることはやめたほうがいい。

 そして、これは米国での出来事だ。考えてみてほしい。ワシントンから遠く離れた日本で、なぜ米国の極秘情報が、簡単に手に入るのか。米国のような巨大な国で闇の勢力や中共が政府を動かし、「白馬の騎士」のトランプ大統領が一人で阻止するなんてことがあるだろうか。あり得ないだろう。例えば「日本政府が闇の勢力に操られている」と、日本語も話せない、日本での人脈もなさそうな「南米バナナ共和国」のおじさんが「極秘情報」と称するものを示しながら解説していたら、滑稽に見えるだろう。それと同じ奇妙な光景だ。

 第二次世界大戦に日本が負けた時、情報が遮断されていたために、日本の勝利を信じる「勝ち組」「負け組」の対立が、南米や北米の日系人社会で発生し、死者まで出たという。21世紀の情報が自由に流通する日本でも同じことが起きるのは不思議だ。

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