AV新法で見えた「左」の力の不気味さ

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石井 孝明🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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経済・環境ジャーナリスト。慶應義塾大学経済学部卒、時事通信社記者、経済誌フィナンシャルジャパン副編集長、アゴラ研究所の運営するエネルギー問題のサイトGEPRの編集担当を経て、ジャーナリストとエネルギー・経済問題を中心に執筆活動を行う。著書に「京都議定書は実現できるのかーC O2規制社会のゆくえ」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞社)など。
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 AV新法(アダルトビデオ出演被害防止・救済法)が、ネット上で騒動になっている。この法律で「AVが作れない」などの批判が広がっている。さらに注目されるのは「この法律の作成運動をした左派活動家の政治力が強く、自民党に影響を与えている」という問題だ。

◆ビジネス視点のない法律

A V産業はこんな業界と思われている?(政府広報オンラインから)

 同法はビジネスへの配慮が全くない、ひどい内容だ。「契約から撮影まで1か月の猶予を置き、撮影後は4か月発売をしてはならず、出演者は公表から1年(令和6年6月22日までの間に締結された契約は2年)が経つまでは販売停止をいつでも求められる」という。この仕組みだと、製作者は企画から収入を得るまで半年以上かかる上、この間、公表から1年間は販売を止められるリスクを負い続ける。こんな商売を、誰もしないだろう。

 当然ながら、この法律施行後に撮影本数が激減し、AV女優や業界関係者がネット上で「仕事がなくなった」と悲鳴をあげている。一説によればA V産業は末端小売(配信、DVDなど)段階で年約4000億円の売り上げがあるという。これはカップ麺、家庭用大工製品と同じ規模でかなり大きい。AVは出演した女性にとって後まで残る「デジタルタトゥー」になりかねないので、人権上の配慮は必要だ。しかしビジネスとして成立させづらくするのは、人権保護の目的を通り越し、産業を壊してしまう。

 AVの契約をめぐり、どの程度被害があるのか。調べても刑事や民事の裁判数など、政府機関による統計は見当たらず、被害の程度は不明だ。2022年4月から18歳に成人年齢が引き下げられたことをきっかけに法制化を急いだようだ。18歳女性は約54万人もいる。その年齢でのAV出演強要で救済の必要な女性は全国に数十人ぐらいだろうか。54万人の政策が不十分なのに、いるかいないかもはっきりしない少数の被害者のために、大騒ぎをして法律を作る必要があるとは思えない。

◆人権活動家の不思議な影響力

 そして、この法律の制定を目指した人たちは政治的に偏向している。AV女優の契約をめぐる民事裁判に関わった弁護士、フェミニズム活動家、売春禁止を目指す人権活動家、日本共産党や立憲民主党などの野党議員が騒いでいる。また表現規制に熱心な活動家、福島放射能デマを拡散した人、スラップ訴訟の代理人の弁護士たちの名前も見かけた。やめさせるAV女優を自分のNPOや福祉業への仲介に誘導する人もいる。反政府活動になんでも首を突っ込む暇な人に加え、ビジネス上の利益を得る人たちがさまざまな思惑で参加しているようだ。そして「規制」ばかりを唱え、他者の自由を侵害しそうな人たちだ。

 驚いたのは、活動家が法案作りに細かく関与していたことだ。ある「ジャーナリスト」がこんな書き込みをしていた。

 「法案文言の細かいところは、××(注・人権団体)の〇〇〇〇(女性弁護士)さん、△△△(性風俗の女性救済の人権団体)の□□□□□さん(その活動家)が夜遅くまで自民公明官僚と作ってましたから」(孫引きの筆者のTwitter投稿

 真偽を確かめられないので伏せ字にした。名前を出された女性弁護士は、これを否定して2人はネット上で罵り合いを始めた。この法案の裏で動いた怪しい人たちは今、左派特有の内ゲバ(内部のいさかい、新左翼用語)をしている。

◆日本の政策決定の建前と現実

 私は記者として法律の制定や改正過程を10案件ほど取材し、ボランティアで、ある社会問題で政治への働きかけ(ロビイング)を手伝ったことがある。法案の文言の作成まで、このように民間団体が関与することは異例だ。

 日本の政治には「建前」と「実態」の違いがある。建前では法律は国会が作る。しかし議員だけで作ることは稀だ。起案と修正は原則、中央官庁が行い、内閣法制局と調整する。ただし、その過程や法制定後の予算のつき方は、政治的な力関係で変わる。また最近は「政治主導」が唱えられ、役所の権限は縮小している。前向きな話だと政治家も役所も「自分がやった」と強調するが、批判を受けると関与を沈黙し、難しい問題はみんなが逃げて責任の押し付け合いになる。

 日本はその文化的特質からか、政府から民間まで問題の責任の所在が曖昧なことが多い。現在の法律や政策の決定過程でもそうだ。その「無責任さ」で、重要な決定が速やかにできない。これが私は問題と思う。その無責任さの間隙に、意志を持った活動家が「これが答えだ」と言って入り込む余地がある。

◆自民党がAV新法に関与した謎

 AV新法では、立憲民主党の塩村文夏参議院議員(東京)が、法案作りは自分が主導したと自称し、批判を集めている。しかし、主導したというのは塩村氏の思い込みだろう。彼女は政治をめぐって見識のない発言を繰り返すだけの、いわゆる「小物」だ。上記の書き込みのように活動家も相手にせず、法律作成を主導したのは与党自民党だ。

 報道によれば、自民党はAV新法のプロジェクトチームを作り、以前からこの問題に関心を示していた公明党と連携した。同チームの座長は上川陽子衆議院議員・元法相(静岡)で、弁護士である宮崎政久衆議院議員(沖縄)、山下貴司衆議院議員・元法相(岡山)が中心メンバーになった。3人ともこれまでの発言などを見ると、どちらかというと「右」の議員だ。AV新法について、この人たちは積極的に説明をしていない。自民党とこの人たちがなぜ関わったのか、左派の活動家の関与の程度はどの程度か。詳細を明らかにしていないので分からない。そして自民党による、業界のヒアリングもほとんど行われていないという。

 この法律をめぐり、AV業界の先行きについて私は知識も関係もないので、他の人の議論を参照いただきたい。私が関心を持ったのは、こうした左の活動家の意向を受け入れる自民党の行動だ。

塩村文夏議員がAV新法を主導?(同氏Twitter画像から)

 自民党は保守政党として、また経済活動を重視する政党と自称した。多数の有権者は「日本の国益になる行動をしてほしい」と期待し、政権を委ねたはずだ。ところが実際には、少数の政治活動家が、政権与党の自民党議員に影響を与えている。

 特に最近はおかしな現象が多い。統一教会という外国の宗教団体と自民党議員の親密な関係が連日報道されている。中国・韓国との外交でも、日本が一方的に攻撃されているのに、自民党内部から必ず波風を立てまいとする動きが出る。

 沖縄と北海道で、中国やロシアなどと密接な関係を誇示する人たちが威張って活動しているが、自民党政権はそれを放置している。AV新法も、背景が不明な政治活動家の影響の下で、自民党が作った可能性がある。非常に不気味だ。

◆政策決定の可視化と活動家の排除を

法制定の裏で何があったのか(写真はイメージ)

 外交や経済で蠢(うごめ)く活動家たちはまず「規制」を行い、「日本の産業を潰す」「日本の国力を弱める」という意図を持って行動しているように思える。陰謀論めいてしまうが、どこからかの意思が働いているようにも見える。政権与党には、いろいろな人が集まるのは常だが、どこかで協力の線引きをする必要が自民党にはある。

 これを避けるために、政策の形成過程を、政府と与党はある程度公開することも必要だ。ここ数年、選挙活動をめぐる広報は洗練されわかりやすくなっているが、こうした普段の立法、政策業務も公開され可視化されるべきだ。まずはAV新法の立法過程を、自民党で関わった人は明らかにしてほしい。

 「日本を守る」という姿勢を強調した保守派の安倍晋三元首相が7月にテロで亡くなった。彼も統一教会と関係を持っていたのは残念だったが。岸田文雄首相は、リベラル的立ち位置を強調し、安倍氏との違いを出そうとしている。その岸田政権で、奇妙な意図を持った「左」の少数の政治活動家が、影響力を増やしている。それが岸田政権のアンチビジネス的な姿勢と重なり、変な法律や政策を作り、日本の弱体化を進めないだろうか。表現などの自由を規制しないだろうか。AV新法の混乱を見ながら、私は心配を深めている。

 

"AV新法で見えた「左」の力の不気味さ"に3件のコメントがあります

  1. 匿名 より:

    塩村議員達がAV新法にやっきになっていた頃、同時に、狂犬病問題も起こっていました。
    ウクライナ避難民が日本に連れてきた犬が、日本の狂犬病予防法に基づき、180日間検疫所で隔離される事を「飼い主と離されてかわいそうだ」と、塩村議員達はマスコミと一緒に煽り、それが元で、検疫所での隔離ではなく、自宅隔離になってしまった問題です。
    これは、飼い主がきちんと隔離できなければ、致死率100%という最恐のウイルスを日本に入らせてしまう可能性があり、絶対に阻止しなければならない問題でした。
    それを指摘した人物に塩村議員は支持者と共に夜中に三時間に渡って恫喝しました。「人の命に関わる重大な問題だから」との言葉に塩村議員は「狂犬病に対して知識がないから関わらない」と。それなら勉強して下さいと頼んでも無視しました。支持者は「AV新法の事で忙しいんだから、そんなどうでもいい事、ほっときましょ」と。
    日本人の命に関わる問題よりも、AV新法の方が大切だと。それでもその法律で救われた方が沢山おられるなら、それもわかります。でも結果的に、沢山の方々が職を失うこととなりました。
    狂犬病問題もAVと同じく、立憲や共産社民などの左派野党が声高に叫んでいましたが、最終的に判断したのは、自民党岸田内閣でしょう。
    塩村議員のツイートの中で自民党を批判するようなものがかつてありましたが、岸田政権に対しては、あまりないような気がします。
    今の流行りの言葉で言えば、自民党と左派野党は「ズブズブの関係」なのかもしれませんね。
    それは、日本が偏った方向に向かう事の兆し。統一教会問題以上に、恐ろしい事態かもしれません。

  2. nanashisan より:

    重要な記事です。こうした記事を書けば非常に陰湿な嫌がらせを受けるにも関わらずジャーナリストとしての勇気を発揮されたことに尊敬します。延々と嫌がらせをし続けるのです。小倉秀夫弁護士にしても被害者です。被害者、PTSD、セカンドレイプ、どこへ消えたのでしょうね。この問題では全く無視されます。性自認があれば女性でも男性だそうですが、AV女優という自認は許されない(セクシー女優とか強制的に書き換えられる)極めておかしい。さらにインターネットホットラインセンターもこうした左翼とカルトに乗っ取られています。有害情報の質が問題であり、警察の態度も極めて悪質です。
    さらに付け加えて言うなら、これらの自民党のワンツー議連はすべて統一教会と関係が深いわけです。つまりこの自民党員は韓国人と集団結婚式を上げるために日本の女性を差し出す必要があり、よってAV女優や風俗が大嫌いなわけです。これにさらにキリスト教系の矯風会、性嫌悪団体のPAPS、人権を利権としか考えていないHRN、SPRING、コラボが乗りかかったわけです。塩村議員が悪質なのは問題点を一切理解せず、実際は与党がやったにも関わらず自分の手柄のように良い、問題があると私じゃないと言い出した点でしょう。公明党の佐々木議員も美人すぎる議員とか言われながら、若い美人な女の子は絶対に許せないようですね。佐々木さやか議員(公明党)にいたってはこれが業界の健全な発展につながるそうです。女性議員は女性問題に全く関心がなく無知であり、国会議員がいかに世間知らずなのかがわかります。なぜカルトの言うことだけを聞き、カルトの言うことだけで法律を作るのか。極めて問題でしょう。

  3. 野崎 より:

    >人権保護の目的を通り越し、産業を壊してしまう。

    AV業界が衰退することを危惧しての記事かと思ったがそうではない。
    >この法律をめぐり、AV業界の先行きについて私は知識も関係もないので、他の人の議論を参照いただきたい。私が関心を持ったのは、こうした左の活動家の意向を受け入れる自民党の行動だ。

    >いるかいないかもはっきりしない少数の被害者のために、大騒ぎをして法律を作る必要があるとは思えない。

    少なくとも実態を把握すべきだろう、でなくばいうところの左の目的とその強固な意志がわからない。
    又数の問題ではない。

    AV業界潰しである、私見であるが被害者がいるからではない。被害者を利用してのAV業界潰しだ、慰安婦と同じだ、韓国人慰安婦を利用しての日本たたきに同じだ。その証左は日本人慰安婦は何ら問題としない。

    又AV(風俗)を女性主権の価値感において擁護する左もいる、中絶賛成の論理に同じだ。

    記事は左の活動が目に見える形で、あまりにも露骨であるが故に不気味だということか、

    目に見えぬ左の活動、画策こそ不気味との形容が当てはまる。
    それははるか以前からである。

    それに光を当て浮かび上がらせる記事に期待したい。

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