卒業証書15万円で偽造の業者 田久保市長まさか…

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 伊東市の田久保眞紀市長(55)の学歴詐称問題は、本人が「東洋大学から除籍されていた」と会見で明らかにしたことを受け、新たな局面を迎えている。焦点は、議長らに一時的に提示された「卒業証書」とされる文書が、実は偽造ではないかという点に移りつつある。ネット上では、卒業証書や戸籍謄本などの各種証明書を精巧に偽造する業者の存在が確認されている。当サイトでは、そのうちの一業者(以下「A社」)に接触し、取材を行った。

◾️「普通に考えて偽物とは思わない」

田久保眞紀市長(伊東市公式サイトから)

 ここ数日、伊東市の田久保市長に関する報道が相次いでいる。発端は、市議会議員らに送付された「怪文書」とされる内部告発文書だった。その内容は「田久保市長は東洋大学を卒業しておらず、除籍処分となっている」という衝撃的なものだった。

 市長本人は7月2日の記者会見でこの件について触れ、「6月28日に東洋大学を訪問し、自ら問い合わせた結果、除籍されていたことが判明した」と発表。これにより、田久保市長が大学を卒業していなかったことは、本人の言葉で裏付けられた。

 ところが、市議会の中島弘道議長と青木敬博副議長によれば、田久保市長は2人に卒業証書のようなものを一瞬だけ見せたという。すぐに引っ込められたため詳細は確認できなかったとする。中島議長は「今まで私に卒業証書を提示したとか、その卒業証書ってのは結局嘘のものだった、偽造しているものだったっていうことになりますよね」と取材に答えている(ANN news CH・市長 大学卒業せず除籍 見せた“卒業証書”は?)。

 さらに、2日の会見に同席した弁護士は「(卒業証書とされるものを)見ました。あれが普通に考えて偽物とは思わないと思いますよ。少なくとも、それを見て偽物だと感じる人はいないと思いますね」と話す。

 これらの発言からは、提示された証書が本物に似せて精巧につくられていたことがうかがえる。田久保市長自身はこの点について「結局、本物かどうかを今、証明できるものを持ち合わせていませんので、今、本当に色々な情報が錯綜して憶測を呼んでいますので、私としては…これ以上、誤った情報を出したり、憶測というのが広まってしまうってことが…確かに答えとしては不十分だと言われれば本当にそのとおりなんですけども…応援してくださった方々に、不要な情報をね、確実性のないものを今、私自身が自分自身のために発言することは避けさせていただきたい」と、核心部分の説明を避けた(静岡朝日テレビニュース・”学歴詐称疑惑” 田久保伊東市長が会見)。まさか「偽造しました」とも言うわけにもいかず、このようにして逃げるしかなかったのではないか。

◾️戸籍謄本20万円、卒業証書15万円?

 田久保市長が自ら除籍されたことを明らかにした以上、問題の核心は、「卒業証書が本物かどうか」にあるのは間違いない。除籍されている以上、東洋大学から卒業証書を授与されているはずはなく、正副議長に見せたものが卒業証書であるならば、それが本物である可能性はない。

 そこで当サイトでは、実際にネット上で確認された偽造業者A社に接触。この業者のサイトには戸籍謄本は20万円、医師の診断書は10万円、健康保険証は5万円といった価格が提示されている。問い合わせフォームからメールを送り、以下のような質問を投げかけた。

・東洋大学を含む同レベルの大学の卒業証書は制作可能か

・在学歴がないため学籍番号などが分からないが対応可能か

・制作期間はどれくらいか

 1時間も経たずに返信があり、以下のような内容を含む返答だった。

・制作期間は2~3日

・郵送または手渡しで納品

・材質、複写防止加工、透かし、フォント、書体もすべて本物同様に再現

・価格は15万円(ホームページにあったとおり)

 さらに当サイトでは、卒業証書の制作に関する詳細を尋ねる過程で、伊東市長の証書も作成したのではないかと直撃した。返答は以下のようなものであった。

 「その質問に関してはお答えできません。慎重にならなければならないので、ご理解ください」(※一部表現を変更してある)

 制作していなければ「関係ない」と否定すれば済む話である。あえて、それを避けたということは何らかの関与をうかがわせる。

◾️弁護士も知らなかった?

 ここからは筆者の推測である。田久保市長は、このような業者に依頼して卒業証書を偽造した可能性がある。完成度の高い証書は、同席した弁護士さえも「偽物とは思わない」と評したほどであった。市長は当初、会見でその証書を提示する予定であったが、6月28日に東洋大学で除籍の事実を確認したことで、リスクを察知し、会見当日の提示は見送ったのではないか。

 弁護士は、学歴詐称が公職選挙法違反にはあたらないとする説明のために呼ばれたに過ぎず、提示された卒業証書が偽物であることについては知らされていなかったものと思われる。

 以上は現時点での状況と、取材および推測によるものであるが、全く見当違いとも言い難い。これほど精巧な証書を素人が独力で制作したとは考えにくく、業者の関与があったと見るのが自然であろう。

写真はイメージ

 仮に田久保市長が偽造卒業証書を作成し、提示していたとなれば、市長職の継続どころか、私文書偽造(刑法第159条)および偽造私文書等行使(第161条)に該当するおそれがある。これらは3月以上5年以下の拘禁刑が科され得る重大な犯罪である。

 田久保市長は週明けに会見を行うとしている。公職選挙法での追及もある上に、私文書偽造等の容疑がかけられることを考えれば、おそらく市長の職を辞するのではないか。

 首長の地位にしがみつき、これ以上、嘘の上に嘘を重ねれば、可能性として実刑判決も考えられるだけに、まともな判断力のある人間なら辞職するはず。今の田久保市長にそのような判断を下せる冷静さが、残されているかどうかは分からないが。

    "卒業証書15万円で偽造の業者 田久保市長まさか…"に12件のコメントがあります

    1. BADチューニング より:

      「広報に記されていた学歴は、担当者(←この辺曖昧にする)の勘違いでした。もちろん、チェックしなかった私(=田久保市長)にも非はありますが、悪意はありません」
      で済んだのでは(恥ずかしいけれど)、と思うがどうなのかな。

      1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

        何でもありの方のようなので、何があっても驚きません(笑)
        それもあるのではないでしょうか。
        それで、さらに墓穴を掘るというパターン。
        どうせゴール(辞任、失職)は決まっているのですから、そこを回避するための可能性を全て使ってきても不思議はありません。

    2. 荒川トミー より:

      まるで地方自治体はコントですね。
      三谷幸喜のコメディドラマを見てるような。そもそもシニア世代は手数料払って卒業証明書を発行してもらう事ができる事を知らないのでは??それを
      田久保氏がシニア世代をだませると踏んでいたのでは??
      一般的に卒業証明書を手数料払って取得して就活に使う、卒業アルバムの写真を学校に撮影に来る、学籍番号で管理している、いわゆる取得単位や科目の通信簿もある事、そして身元保証人が必要な事を一般市民が知らない可能性あるw

    3. 匿名 より:

      そもそも「偽造した卒業証書」を持っているのが問題です。持っているだけで犯罪です。

      田久保真紀氏は、「公職に就いてはいけない人」だと思います。

      公職などに就かず、「話がおもしろい喫茶店のオバちゃん」のままだったら、たとえ客相手に「こう見えても、私、東洋大学を卒業してるのよ。」と見栄を張ってウソを言ってもこんな大問題にはならなかったでしょうに…。

      1. 荒川トミー より:

        そりゃ偽造卒業証書の闇ルートから買う=反社組織と接点がある事になるよね。まあ、反社の根っ子は簡単に言えば味方切りの事。身内、家族、地域社会、同級生、取引先、同じ組織内の者。本質的に言えば味方切り。

    4. 匿名 より:

      偽造業者までお調べいただいた記事は初めてみました!

      素晴らしいです!!!

      1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

        ありがとうございます。多分、友人が作成したものを業者に出して作成させたのではないかと思っています。証拠はありませんが。

        業者とのやり取りの中で感じたのは、(作ったけど、今はイエスと言えない)(本物と見間違うぐらいのものがウチはできるんですよ)という思いを胸に秘めているんだなということでした。あくまでも僕の予想・予測ですが。

    5. 匿名 より:

      お友達が使ったというタレコミ、自作自演だと思ってました。だって昔の事なら時効になるわけだし。最近作ったのがばれたら実刑だし、だから煙幕まいたのと思ってました。この業者「違います」と否定しないところがまた意味深ですね。

    6. 匿名 より:

      松田様。

      はじめまして。
      卒業証書の正体については(未だに田久保氏が会見や委員会で否定し続け、更には提出・公開すらも渋っているため検証しようがありませんが)、既に多くの報道でも明らかになっている感じですね。
      7月後半に市議会議長はじめ市議の方々に匿名で送られてきた手紙によると、その「卒業証書」なるものは、除籍になったにもかかわらず卒コン・追いコンに顔を出したい旨の連絡を田久保氏から受けた学友たちが、「田久保さんだけ卒業できてないのは可哀想だよね」「マキちゃんに何か渡そうよ」などとの意見があったのを受け、彼女のためのサプライズプレゼントとして思い付いた末に軽い気持ちで手作りしたものだったみたいですね。
      実際、卒業証書を見せられた副議長は「百条委員会等で初めて見た本物とは違って、明らかに稚拙なデザインだった」(恐らくいわゆる「鳳凰枠」のタッチが本物よりも明らかに稚拙で粗かったとのだと思います)とインスタ等でコメントされていますし、他にも「証書の文章構成が全く異なる(通常卒業証書の文章構成は「〇〇学部〇〇学科〇〇君 右の者は〜」となっているのに対し、田久保氏の証書では「〇〇君の卒業を認定する」となっている)」・「証書の紙がホルダーに貼られている位置が左右逆」など明確な違いも明らかになりましたし。
      そのため、別段松田様が想定するような精巧に偽造したものではなく、学生たちが(「私文書偽造罪のリスクを回避するために、本物とハッキリ区別が付くようにアレンジを施した」みたいな弁解も混ざってはいますが)筆ペン、朱肉、マッチ棒、定規などを使って手作業で彼らなりに再現・模倣しようと作った特製品だった説が現状としては一番有力そうです。

      1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

        コメントをありがとうございます。僕はいただいたお話とは若干、異なる見解を持っています。卒業生たちが制作したという話は既に出ています。
        そして、>>卒業証書を見せられた副議長は「百条委員会等で初めて見た本物とは違って、明らかに稚拙なデザインだった」
        ⇨とのことですが、それとは別に、弁護士は「誰が見ても本物と思う」というものであったという意見もあります。

        副議長と弁護士が見たものは異なる可能性があるように思います。卒業生たちが制作したものは本人が記念としてもっておいて、それとは別に業者に依頼したものを保有していたと考えるのがいいのかなと思います。業者とのやり取りから、まず間違いなくこの業者が請け負ったという印象を持っています。あくまでも推理です。

    7. 匿名 より:

      ご返信頂き、ありがとうございます。
      田久保氏の顧問弁護士は、元々東洋大学関係の繋がりから後輩だとのことですから、彼の発言に関しては余り信憑性はないと考えてもいいのではないかと思います。
      簡単に言うと、田久保氏が見せたのはその卒業生からのプレゼントであって、別途で偽造を依頼した可能性は低く、あくまでその卒業生の手作り品を利用したものだと考えるのが自然だと思います。
      そもそも東洋大学が出す卒業証書がどんなレイアウトかなんて、皆が皆知っているはずがないし、いくら精巧さが高くない仕上がりだったにしても、見せられたら本物だと見間違えてしまうのは極めて普通の感覚(実際、大学名義の押印や日付などがある時点で、まず本物だと誤解するのは無理もありません)だし、そうした誤解の可能性を想像しないまま作った時点で学友たちは考えが浅すぎますし、田久保氏もその危険性を分かっていて「バレなきゃ大丈夫」と高を括っていたから、その卒業生からのプレゼントを正副議長のみならず市役所職員にも見せたのでしょう。
      そもそも流行語大賞にもノミネートされてしまった「19.2秒」も彼の入れ知恵ですから。だから、その真相については別に松田様が考えるほど複雑なものではなく、実際のところは弁護士自身も卒業証書の真実を知っていて、わざと「誰が見ても本物だ」なんて言っているだけなのではありませんか?

      1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

        ご返信をありがとうございます。

        僕が思うに、①弁護士は虚偽は言わないこと、②業者があたかも自らが作ったと答えたに等しい返答を口頭ではなくメールでしてきたこと、以上の点から当該業者が作った可能性が大と考えています。

        仮に弁護士が「これは偽物なんですよ」と聞かされていた、あるいは一目見て偽物とわかるものを本物として扱っていたら、私文書偽造同行使の共犯とされかねないことは弁護士なら大きなリスクとして理解すると思います。

        そうした点から、自説があたっている蓋然性は高いのではないかと考えている次第です。

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