マス“ゴミ”と呼ぶ前に新聞を利用せよ

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石井 孝明🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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経済・環境ジャーナリスト。慶應義塾大学経済学部卒、時事通信社記者、経済誌フィナンシャルジャパン副編集長、アゴラ研究所の運営するエネルギー問題のサイトGEPRの編集担当を経て、ジャーナリストとエネルギー・経済問題を中心に執筆活動を行う。著書に「京都議定書は実現できるのかーC O2規制社会のゆくえ」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞社)など。
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 世の中に情報が溢れ、それをどのように使いこなしたらよいのか、さまざまなアイデアが紹介されている。その中で、古い道具だが「新聞」の活用を勧めたい。

■優秀な人が勧める情報源としての新聞

マス”ゴミ”と呼ぶ前に新聞を利用したい(写真はイメージ)

 新聞の存在感は低下し、「偏向報道」「マスゴミ」との批判は多い。それは同意する。新聞の先行きは暗く、どこも経営は厳しい。「貧すれば鈍する」で、そのために質も確かに劣化している。しかし使い道はある。そうしたことを言う人は少ないので、ユニークなアイデアと受け止めていただけるだろう。

 駆け出し記者の頃、「情報源はなんですか」と、ある優秀な経済アナリストに聞いたことがある。その人は「新聞」と答えた。こういう言い分だ。

 「地方新聞社には数百人、全国紙には2000人以上の記者がいる。そういう人が情報を集めているのだ。利用するべきだ。社会に必要な情報は大抵入っている。もちろん報道しないこと、見落とし、間違い、内容の薄いことも多い。それを馬鹿にしてもいいが、それだけでは意味がない。なぜ内容が薄いのか、なぜ記者は書かないのか、なぜ偏向報道をしたのかと背景を考えれば、頭の体操になる。また外国の新聞は日本のものより面白いし、読めば語学の訓練になる。新聞の好き嫌いは離れて、道具として使いこなすべきだ」

 確かにその通りだ。実は同じようなことを、私が有能だと思った人がさまざまな場で語っている。

 戦前の優秀なシンクタンクであった満鉄調査部は、新人のアナリストに新聞を読ませた。多彩な知的活動をする「怪人」、元外務省情報分析官の佐藤優氏は、在モスクワの日本大使館の下っ端時代に新聞切りの役割を与えられた。そこで新聞の端に出ていた民族紛争の話を掘り下げていって調査、報告をしたところ上司に認められ、ロシアでの人脈が広がったという。そしてこの民族紛争はソ連解体のきっかけの一つになった。(出典「自壊する帝国」(新潮社))

 第二次世界大戦中のドイツ参謀本部の有能な情報将校で、戦後はドイツ連邦情報庁長官を務めたラインハルト・ゲーレンは、敵の動きは「95%は公開情報の中から得られる」と述べ、その集める手段として新聞の活用を勧めた。

 昭和陸軍のエリート軍人で大本営参謀を務め、戦後は伊藤忠商事会長、そして政治家の参謀として知られた瀬島龍三氏にも同じエピソードがあるという。

 瀬島氏が記者に「キミは、ボクの情報源がどんなところにあると思うか」と、唐突な質問をした。記者は「大本営参謀時代からの人脈ネットワーク、伊藤忠商事が持つ情報ネットワークなどからの情報でないか、と想像します」と答えたら、意外にも「全く違う。情報源はキミのすぐそばにある。それは新聞の10行程度のベタ記事だ。ファクト(事実)情報こそが重要だ」といったそうだ。

 瀬島氏の意見を聞いてみよう。

 「新聞のベタ記事は、見る人によって価値のないミニ情報でしかないかもしれない。しかしさまざまな情勢の変化を注意深くウオッチしている人間にとっては、そのベタ記事のファクト情報こそが、実は重要な意味を持つ。新聞の1面トップ記事は、メディアによっては「スクープ記事だ」と大々的に書いているが、力みが先行して冷静な情勢判断分析に欠ける。あまり信用しない。それよりも、ベタ記事のファクト情報は、起きた事実をコンパクトに書いてあり、メディアの予断が入り込む余地がない。そこで、ファクト情報がどういう意味を持つか分析判断することが勝負になる。(中略)君ら新聞記者はニュースだと走る。大事なのは早耳情報にとどめず、その情報の底流や背景を探って情報価値を見極め、ビジネス行動に移すことが重要だ」(出典:故瀬島龍三氏から学ぶ「戦略的思考」

 瀬島氏は毀誉褒貶のある人物だが、彼を知る人は有能さを一致して語る。大変頭の回転が速く、読みが鋭かったそうだ。その行動の凄みは、こういう分析能力が背景にあったのだろう。

 自分の経験からも、新聞はとても役に立つ道具だ。

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