免職教師の叫び(14)先生の影
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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中学・高校時代に性的な暴力を受けたとする石田郁子氏がフジテレビに提供した写真を連載第13回オコタンペ湖の謎で紹介したところ、人物の影が写っておらず、合成写真ではないかという声が一部で起きた。この点は、取材する際に特に問題視した部分であり、既にフジテレビにも取材している。今回はこの問題についてここまでの検証をお伝えする。予定していた写真撮影時期の考察の後半は第15回で扱う。
■支柱の影か鈴木浩氏の影か
ライブニュースイット(フジテレビ系)は2020年9月30日、写真家の石田郁子氏が中学・高校時代に札幌市の教師・鈴木浩氏(仮名)にわいせつな行為を受けていたという訴えについて、石田氏の言い分をそのまま報じた。
その中で、石田氏が高校3年の頃に撮影したとする、オコタンペ湖(千歳市)の展望台での写真が紹介された。それが写真①と写真②である。
写真②に印をつけたのが写真②-2である。赤い矢印の先にある「影A」は柵の支柱の影かもしれず、鈴木氏の体を透過しているようにも見える。そのことから鈴木氏の影がなく、写真に鈴木氏の姿を合成したのではないかという疑問の声がツイッターを中心に広がった。
確かに影Aは鈴木氏の影ではないように見え、写真はフェイクではないかという疑いは拭いきれない。しかし、ここまでの取材等で得られた結論を言えば「その疑いはあるが、断定はできない」というものである。
この点を明らかにするため、6月23日、フジテレビ広報局企業広報室に11項目の質問をした。裁判資料の一部に閲覧制限がかかっていることから、この場で公開できない質問が含まれており、それを除いたいくつかの質問をそのまま示す。
■フジテレビジョンへの質問と回答
<株式会社フジテレビジョン広報局企業広報室御中>
問2:石田郁子氏から写真提供を受ける際、写真は加工されたものでないことは確認されていますか
問5:ニュース写真(筆者註:写真②)において、太陽は写真に向かって左奥から射しているように見えます。当該写真において人物後方にある柵の影を、御社は確認できますでしょうか、確認できるのであれば、どこにあるのかお示しください
問7:ニュース写真において、鈴木浩氏(筆者註:実際は本名を記載)の影を、御社は確認できますでしょうか、確認できるのであれば、どこにあるのかお示しください
問10:御社では現時点でサイト写真(筆者註:写真①)、ニュース写真ともに加工されたものではないとお考えでしょうか、根拠とともにお示しください
2日後の6月25日にフジテレビジョンからの回答があった。たった一言、「取材の詳細についてはお答えしておりません。」である。
■フィギュアを使い影を作り出す実験
写真②-2の影Aは果たして支柱の影なのか。影は鈴木氏の足先から伸びており、足の影と見えなくもない。気になるのは写真②ー2で示した赤い丸で囲った部分である。ここで 影Aと影Bが繋がっているように見える。支柱の影であれば上部で影が繋がることはあり得ない。
そうすると、これは鈴木氏の股間の部分ではないかという見方もできる。こうした疑問を解消するため、フィギュアと木材を使用し、現場と似た状態を作り出し実際に影を作ってみた(写真③)。
柵の横棒(ビーム)は写真と同じ4本にし、一番上が人物の胸のあたりに来るようにした。写真では背中が日光に照らされており、そのようにして撮影したのが写真④である。
注目していただきたいのは、足の影がかなり細くなっている点 。実際には鈴木氏はズボンを履いているため、その影はさらに直線的になることが予想される。
太陽の位置が低くなると必然的に影は長く伸びるため、相対的に細く見えるのである。その結果、足の影と柵の支柱の影と見分けがつきにくくなる。
そして写真④の赤い丸印に注目していただきたい。これは股間部分であるが、写真②の赤い丸印で囲んだ部分も同じように股間に見えなくもない。何より写真②の赤い矢印の先の影Aは、柵の横棒(ビーム)の影だけでなく、木柵と同じ地面と垂直に伸びる影と繋がっているように見える。
フィギュアを上から撮影した写真⑤を見ると、股間で繋がっている部分がより明確に分かる。
■股間の先が見えない 裁判所に提出されていない
この検証結果を見た時に、正直、明確な判断はつかなかった。影A・影Bは鈴木氏の足の影にしては細すぎるようにも思える。しかし、柵の一番上の横棒の部分で股間のように繋がっているようにも見える。鈴木氏の後方にある支柱の影が影A・影Bのどちらなのかも判然としない。
その点は、股間部分のように見える、さらにその先が写っていれば人物の影か、支柱の影かははっきりとするであろうが、その部分は故意か偶然か公開されていない。公開されていないということはフェイクであることの傍証にも思えるが、これを見ただけでは写真②が真正なのか、それとも合成されたのかはいずれとも断言できない。
なお、この写真は裁判には証拠として提出されていない。物証が極めて少ない裁判で提出されていないという事実をどう考えればいいのか。それも写真の真偽を判断する上では重要なポイントの1つかもしれない。
以上のように画像から得られる情報だけでは決め手となる材料がないことから、取材は柵と看板の設置時期を確定し、1995年頃に撮影したという石田氏の証言の信憑性を確かめる方向へと舵を切ったというわけである。その結果、2000年以前に撮影されたものであることは判明。他の証拠と合わせると1995年、1997年、1998年の可能性はほとんどないということは前回第13回オコタンペ湖の謎で明らかにした。
あらためて次回、撮影した時期について1996年、1999年、2000年を検討し、写真の真正性を検証する。
(第15回へ続く)
(第13回に戻る)
(第1回に戻る)
フジテレビジョンからの回答があった。たった一言、「取材の詳細についてはお答えしておりません。」である。
何なんでしょうね。その態度。多分、フジは、松田さんほど検証してないと思いますよ。きちんと検証してフェイクではないとわかっていたなら、はっきりと応えるでしょうから。まさか検証していてフェイクとわかった上で放送したとは、さすがに思いたくはないですしね。
松田さん、凄いですね。私は松田さんの記事でこの事件を知り、そして、松田さんの記事で、真実を知るのでしょう。人一人の人生がかかっています。伊藤詩織事件の山口氏同様、鈴木先生の冤罪もはれることを、心から祈ります。
伊藤詩織氏の虚偽告訴罪と名誉毀損罪の、検察審査会も、今行われていますね。こちらも、大変気になります。
松田さん、これからもどちらの事件も、追い続けてくださいね。大変期待しております!
2005年9月のオコタンペ湖の画像を引用してもらったブログの管理人です。
記事のアップについてご連絡頂きありがとうございました。どのような案件でオコタンペ湖の古い画像を調べているのか気になっていましたが、よく分かりました。
どこかで聞いたようなセリフですが真実はひとつしかないはず。事実ではないことで苦しんでいる方がいて、ジャーナリストと呼ばれる人が真実を明らかにできるのならこれ以上ない尊いことだと感じました。