免職教師の叫び(32)君の気持ちはよく分かる
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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28年前の事件を理由に免職された元教師・鈴木浩氏(仮名)と同様の”冤罪”で大学を去った元教授が当サイトの取材に応えた。女子学生からレイプされたと訴えられ、身の潔白を主張したが最後は大学を去るしかなかった元教授には、鈴木氏の考え、思いは理解できる部分があるという。
■首都圏の私大・元教授
取材に応じた元教授のA氏は60代前半、首都圏の私大で教授であった。その事実は当サイトも確認できている。A氏が大学を辞めた経緯を本人の説明のまま紹介する。ただし、法的に守秘義務があるなどの事情から、関係する人物や団体が特定できないように詳細は明らかにしていない。
A氏の教え子にB子さんという精神的に不安定な学生がいた。躁鬱病と統合失調症の薬の処方を受けており、感情の起伏が激しく、自傷行為に及ぶこともあった。しかし、在学中、A氏から学業だけでなく自身が有する精神面の問題でもフォローも受け、無事に卒業することができた。ところが卒業後しばらくして「A氏に何度もレイプされた」と言い出し、大学に訴え出たのである。
A氏からすればB子さんの証言は虚偽で、提出された証拠は荒唐無稽なものばかりであり、客観的事実と異なることが証明できる部分は証拠を付して反論した。しかし、そうした反論は聞き入れてもらえず、その後、裁判で処分をめぐって争うことになるが、結果的に退職金と解決金を受け取る形で大学を去ることになった。
A氏は、当サイトの「免職教師の叫び」の連載を第1回から全て読んでいるという。当連載の事例では、写真家の石田郁子氏が自身が中学3年生の頃(1993年3月)から教師の鈴木氏からわいせつな行為を受けていたとして処分を求め、2016年に札幌市教育委員会に訴え出て、さらに2019年2月に東京地裁に鈴木氏と札幌市に対して損害賠償請求の訴えを提起している。
鈴木氏によれば石田氏の主張は事実に基づかない虚偽であり、当サイトでは石田氏の証言には虚偽があり(連載(12)CAN YOU CELEBRATE?)、証拠は捏造されたものであることを示した(連載(19)影なき闇の不在証明)。
■札幌市の事件との類似点
A氏のケースは鈴木氏のケースと類似する点がある。
(1)被害を訴えたのは指導を受けていた女子学生
(2)指導を受けていた時を含め、長期間、良好な関係を保っていた
(3)卒業後、しばらくしてから態度を豹変させ、性的被害を訴え出た
(4)被害を受けたとする場所に学内の研究室が含まれる
(5)被害を訴え出る前に長期間にわたって精神的に不安定な状況にあった(石田氏に関しては連載(26)聖女の仮面 ほか)
(6)処分者が客観的な証拠より、被害者の主張を重視した
A氏に鈴木氏のケースについてどのように感じるかを聞くと、連載で示された事実を見る限りという条件で、以下のような答えが返ってきた。
「石田郁子さんと私の卒業生の発言や行動の共通性については、2人の性格や状況等が異なると思われるので、具体的に指摘することは難しいように思います。しかし、はっきりと感じるのは、通常では、とても考えられないような嘘の付き方をすることです。相手とどれだけ付き合いが深かったか、世話になったか等を全く顧みず、思い切った嘘を堂々とつき、迷いを見せないということです。普通の人であれば、途中で反省や遠慮、羞恥、思いとどまりを見せるでしょうが、それがありません。そこは連載を読む限り、共通していると思いました。」
男性の側からすれば荒唐無稽な主張は怒りを感じると同時に、(こんな嘘が他人から信用されるはずがない)という油断が、後で決定的な結果を呼び込むことになったように見える。処分を受けた男性側からすれば(何でこんな嘘を信じるの?)という思いがすることであろう。A氏は続ける。
「石田さんは写真を合成したとされていますが(連載(19)影なき闇の不在証明)、後でどうなるか考えなかったのかなと思います。B子に関して言えば、自分が嘘をついたことで、あとで自分に何が起きるかを考えていないように見えました。自分にとっての損得を考えないで虚偽を述べる、そのことが周囲の人間にとって彼女たちが『真実を語っている』ように映るのではないでしょうか。何かのキッカケがあれば、こちらの想像を超えた、振り切った発言や行動をするのです。
B子と一緒にいたときに、そのまともではない部分の片鱗を事あるごとに感じていました。こちらが精神的に飲み込まれてしまうということもあったようにも思えます。小さな底なし沼のような感覚でした。全国にそういうことで職を失うなどの被害を受けた人がいるかもしれません。鈴木氏も含まれるのでしょうが、そうした人々に共通する体験ではないかと思っています。」
一般に虚偽を述べる者は、自己に利益があるように、少なくとも不利益が及ばないようにする目的を有している。そのことを1つの判断基準として発言の真偽が見極められることは少なくない。そうした損得の計算を抜きにした嘘、さらにいえば自分が不利益を被ることになるような虚は言わないはずという思い込みが、正確なジャッジを阻害することは論理的にはあり得る。客観的な状況と一致しない虚言も、虚言の動機がないことで信じられてしまう可能性がある。
極めて抽象的に表現すれば「だって彼女がそんな嘘を言う理由ないじゃない!」という言い方で虚偽を頭から信じてしまう人を見た経験がある人は少なくないと思う。
■鈴木氏の気持ちは分かる
A氏が連載の中で「気持ちが分かる」としたのは、鈴木氏が石田氏と17年ぶりに居酒屋で会った時のエピソードである。この時、鈴木氏は石田氏が精神的に不安定であることを確信し、「これは危ない」と感じ「こうなったら相手が言うことを認め、『はいはい、おっしゃる通りでございます』と言って、気持ちよく帰ってもらうしか方法はないと思いました。」という考えから、相手の言う話をすべて肯定した(連載(9)妄想と迎合、連載(10)そこまでまだ覚えてない)。
この時の音声は石田氏によって録音され、その後、裁判では「債務の承認」という形で主張され、録音データは証拠として提出された。鈴木氏も現在は「それは間違いでした。石田氏に格好の攻撃材料を与えてしまったわけですから。…石田氏が『15歳の時にキスをして…』などと言い出したら、『お前は20年前の嘘をまだ言っているのか』と言えばよかったと思います。」(連載(27)命のコメントに感謝)と悔やんでいる。
この点についてA氏は言う。
「鈴木氏は失敗しているのは確かですが、彼が相手の話に合わせたくなる気持ちは分かります。精神的に不安定な人とやりとりすると、こちらも不安定になってくるものです。『早く終わってくれないかな』『もう治まるんだったらいいや』と思って、相手の言うことを肯定してしまいたくなります。」
実際にA氏はB子さんと接するときに恐怖心を覚えることはあったという。
「たとえば、相手の女性にお願いをされた時などに『そんなことできないよ』と断った瞬間に、相手がどう変わるか分かりません。後から何を言われるか分からないと恐怖を感じるものです。B子も普段、調子が良い時は穏やかですが、気に入らない話になると表情が一変します。それが続いていると、もう相手のペースに飲み込まれていきます。ですから、鈴木氏が『あの時、こうだったね』と言われて『うん、そうだよね』と言ってしまう気持ちは分かります。普通の状態ではないものを感じた時、それがごく小さなものでもとても怖いものです。」
■現在進行形の問題
鈴木氏は今、復職を目指し、札幌市の人事委員会に審査請求をしているが、「石田氏の言っていることは虚偽である」という主張はメディアではほとんど取り上げられていない。そのせいか一般の人でも「本当にそんなことがあるのか」という思いを抱く人は少なくないかもしれない。
しかし、現実にはA氏のような例も存在する。相手の女性が全くの虚偽を述べ、それをなかったことを証明するように求められても、極めて困難であるのは言うまでもない。その困難さゆえに疑惑を払拭できないとして処分され、社会的な地位も、名誉も失う。そのように疑われる事例が現在進行形の問題として存在していることは認識すべきである。
(第33回へ続く)
(第31回に戻る)
(第1回に戻る)
【おことわり】
A氏の表現の中には精神障害者に対して誤解を生じかねない表現があったため、本人の了解を得た上で、別の表現に改めました。また、本文は精神を病んでいることが原因と思われる事象で、本来、処分を受けるべきではない人が処分を受けていることの不条理を明らかにするものであり、精神障害者への偏見や差別を助長するものではありません。
松田様、
お疲れ様です。
読ませてもらいました。
いるんですね、全国にはまだまだいるんですね。
冤罪シリーズを本にして下さい。
冤罪救済センターなどはあるんですかね。
松田さんが作って設立して欲しい。
精神疾患は誰でも罹患すると思います。その時に、近くに病状を理解できる家族がいれば、よいのですが、この方々の場合どうでしょうか?親であっても、精神疾患については疎い方が多く、よい医者がついていれば、一緒に考えてもらえますが、日本の精神科医のレベルには格差が大きいですね。専門家ではないので、個人的な意見として、ご本人を責めても問題は解決しません。良い主治医を紹介できる方が、周りにいればよいのですが。
事態を悪くしているのが、精神的に不安定な女性を利用しようとうする組織があることです。そうなると、個人では太刀打ちできません。できるだけ、ご自分の信頼できる人を作ることかと思います。相談機関に相談し、仲間を増やしていくこと、同じ被害にあった方が団結することなど、つながることが必要かと。助言になりませんが、思いつめないようにしてくださいね。
あったことは証明出来ても、無かったことは証明のしようがない。そういう意味で、冤罪の認定は困難を極めます。
精神的に不安定なのと、精神疾患は別物です。過労や何かのアクシデントにより、心のバランスを崩すことは誰にでも起こり得ることで、一時的に不安定なのか、何らかの病気を発症してしまったのか、見極める必要があります。外科的なものと違って、痛みも出血も伴わない心の病は発見が遅れがちです。
本人に病識が無ければ、受診することも無いでしょう。それが一番怖いことで、治療を必要とする人が放置されたまま、時間が経過していくことは、ご本人にとっても周囲にとっても不幸なことです。心の病が疑われたら、一刻も早い受診に繋げるのが周囲の役目だと思います。でも、これが一番難しい。(>_<)
通常は起こり得ないことが発生するのは、「私達の通常」と「病にある人の通常」が異なるからだと思います。
そこに鬼がいて鬼退治が必要な時、退治する方法に配慮する必要はありません。鬼を倒すことが目的なのですから。倒す為なら、どんな方法でも構わない。
伊藤詩織氏や石田氏は、この考え方なのかもしれません。鬼ではない人を鬼と思い込んで退治しようとするのですから、鬼とされた当人はたまったものではありません。
相手に精神疾患が疑われるような場合、個人(一人で)で解決しようと思わないことです。一対一になるシーンは出来るだけ避け、相手への不安を第三者に話しておくことが大切です。状況を知っている第三者がいれば、「相手に迎合し、事実と異なる話をした」ことの理由付けを証明して貰えます。
他人の妄想により、善良な市民が人生を奪われることなどあってはなりません。
月の桂様
伊藤詩織氏勝訴の記事の時、さりげなく優しいお心遣いを見せて下さいまして、ありがとうございます。タイミングがうまく合わず、その場でお礼が言えなかったもので、この場をお借りし御礼申し上げます。
いつも、品と知性あふれるコメント、楽しく読ませていただいています。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
返信は不要ですよ。ありがとうございました。
石田氏の件は「写真のねつ造を指摘すれば解決」と思っていましたが、そうは思わなくなりました。
伊藤詩織事件の控訴審判決で、伊藤氏の虚偽がほとんど認められなかったからです。沢山の証拠がありながらも。
だから、石田氏の写真ねつ造がバレたとしても「写真のねつ造については認める。でもわいせつ行為は真実」のような結果になるかもしれません。
伊藤詩織事件の一審の時「裁判官は世間知らずだ」と思いました。でも二審判決を知った時、もう、そのようには思わなくなりました。
「裁判官が世間知らずだから、あのような判決になったのではなく、故意にそうした」と。
私は今判決文を読んでいますが、その端々に、恐ろしい悪意を感じます。理由はわかりませんが、伊藤氏の名誉毀損をできるだけ少なくしようという意図が。現に、レイプドラック以外のものは、ほとんど虚偽とは認められていません。カルテも防犯ビデオもあるのに。
かと言って、諦めては、絶対にいけません。私は伊藤事件、石田事件、そして今回の元教授の事件を知り、人間の底知れぬ悪意を知りました。と同時に「一見犯罪者だとされている人はもしかしたら冤罪かもしれない」という幅の広い見方ができるようになりました。そのような見方を世間に広めて、そして味方を増やして下さい。
今回の伊藤事件の控訴審判決を聞いて、鈴木先生も元教授の方も、本当にショックを受けていらっしゃると思います。でも、山口氏の為にも、どうか諦めずに前を向いて下さい。山口氏もそうしているのですから。そして、私達も応援しているのですから。おごれる者久しからず。今にきっと、状況が変わってきます‼️
名無しの子 様
伊藤事件の控訴審判決が出た際、名無しの子様のことが頭に過りました。
落胆しておられるだろうな~と。
司法に頼れない以上、山口氏ご自身でこの事件を世に伝えるしかないように思います。今は法廷戦略もあって、発言するのは難しいと思いますが、しかるべき時期に、ご自身の言葉で全てをお話下さることを期待しています。
私は、中立的立場でこの事件を注目して来ました。山口氏の支援者である名無しの子様とは登山経路に違いはあれど、登頂を目指す目的(冤罪被害者の救済)は同じなのです。
山口氏には、冤罪被害、報道被害を社会問題化させる重要なお役目があると思っています。それは、鈴木氏(仮名)や本記事に登場された元教授への光にもなり得ます。
名無しの子様の癒し系コメントは、私のオアシスでもあります。
今後共、どうぞよろしくお願い致します。
お返事は不要です。(^-^)