馬の顔を蹴る騎手と伊是名氏問題の共通点

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 帯広市は4月30日、ばんえい競馬の能力検査で騎手が馬の顔を蹴って処分された問題で、会見を開いた。動物を虐待する行為として強い批判を浴びているこの問題、報道されている内容を見る限り、社民党常任幹事の伊是名夏子氏の一連の問題と事件の構図が似ていることに気付かされる。

■2歳牝馬の顔を蹴った騎手に戒告処分

鈴木騎手と競走馬ドウナンヒメ(北海道テレビ画面から)

 北海道帯広市が主催するばんえい競馬(馬が重いソリを引いて争う競馬)で4月18日に行われた能力検査の第18レース、2歳の牝馬ドウナンヒメが第2障害で座り込んでしまったため、鈴木恵介騎手は「手綱を引く等の対処をしたもの、起き上げることが出来ないため、馬の顔を蹴るという行為」に至った。

 その様子がインターネットで配信されたことで帯広市に抗議が寄せられ、同市は4月21日、同騎手を戒告処分とした。その理由を「如何なる理由があっても、当該行為は認められるものではなく、きゅう舎関係者の責務に反し、競馬に対する不信を招くような行為を行ったものとして、過去の類似の事例も参考に判断した結果、両者(筆者注:鈴木騎手と、別のレースで同様の行為を行った厩務員)とも戒告処分とした」と説明している(以上、4月30日の帯広市配布の記者会見資料より)。

 実際に映像を見ると、鈴木騎手はかなり強く馬の顔を蹴っている。動物虐待と言われても仕方なく、本人がその後、騎乗を自粛しているとはいえ戒告処分が軽すぎるのではないかという感想を抱く者は少なくないと思われる。過去の事例が分からないため感覚的なものでしか判断できないが、僕も処分が軽すぎると思う。

■鈴木騎手が謝罪文 イライラではなく起こそうとした結果

 30日に行われた帯広市の記者会見では鈴木騎手の謝罪文も公開された。以下、全文を記す。

みなさまへ

 この度は、全国のばんえいファンの皆様、いつも競馬を応援してくれている方々を、不快な気持ちにさせてしまい、大変申し訳ありません。

 ただ、自分としては、何度も手綱を使い起こそうとしましたが起きあがれず、あのままの状態では馬にとって相当の負担がかかり、早急に起こさないといけないと思い、咄嗟の判断で馬をビックリさせ、顔が上がったその反動で起こそうとした結果です。決して馬に腹が立ち、イライラとして、という気持ちで取った行動ではないということをわかってもらいたいです。

 そして、競馬に携わる全ての人が、馬に愛情を持って接している事を理解して頂きたいです。

 今回の事は深く反省し、今後はこの様な事がないように致します。

鈴木恵介

 この謝罪文で注目したいのは、馬を起こさないといけないと思って蹴ったというエクスキューズ。動画を見ると、実際に手綱を引いて起こそうとした時に、馬は起き上がることができなかったものの、顔を蹴られた後に、右前脚を立てて起き上がろうという姿勢を見せている。

 動画を見る限り、蹴った行為はイライラをぶつけた結果ではなく、一種の扶助であったという説明には一定の合理性は見られる。競馬ではレース中にステッキ(ムチ)で馬を叩き、闘志を促す行為は認められている。ただし、使用に関して制約があり、必要以上に叩く行為は禁じられている。それは競走馬の能力を引き出す効果がそれほど見られず、苦痛を与える効果しかないと考えられているからである。

 鈴木騎手が馬を蹴った行為は決して許されるものではない。しかし、それは虐待目的ではなく、扶助目的だったという説明には耳を傾ける必要がある。

■馬に愛情を持って接している

 ばんえい競馬の能力検査は、合格しないと競走馬になれないという、デビューのための大事な関門である。この関門を通過できない場合、多くの場合、食肉にされるという。帯広市の発表で、4月18日の第1回能力検査では175頭が出走し、合格は112頭。4月30日に行われた第2回能力検査では83頭中53頭が合格している。合格できなかった馬は、来年にはいなくなっているかもしれない。競走馬は自らの生命をかけて能力検査に臨んでいると言っていい。

 生き残るために合格して競走馬になってほしいと願うのは、人間として当然の感情であろう。その点を鈴木騎手は「競馬に携わる全ての人が、馬に愛情を持って接している事を理解して頂きたいです。」と表現したものと思われる。

 生きるか死ぬか、その瀬戸際で障害を越えられない馬に対して、(お前が生きていくためだ、がんばってくれ)という思いから、強い行動に出てしまったということであろう。

 もちろん、だからといって馬の顔を蹴ることは許されない。帯広市が「如何なる理由があっても、当該行為は認められるものではなく」としているのは当然で、別の方法があるなら、それを用いるべきであった。

■鈴木騎手と伊是名氏の目的と手段

笑みを浮かべる伊是名夏子氏(社民党 Official You Tube Channel 画面から)

 ここで考えたいのは、鈴木騎手の行動の目的と手段である。

① 目的:馬への扶助を行い、競走馬になれるようにして、馬の命を助ける。

② 手段:馬の顔を蹴る

 見ての通り、①の目的については正当性が認められる。しかし、馬の顔を蹴る手段が許されず、多くの人は②を批判している。①の目的が正当だからといって、②の違法性は阻却されない。

 今、話題の伊是名夏子氏に関して目的と手段について考えてみよう。

❶ 目的:駅のバリアフリー化が遅れていること、JRの対応の現状を世に知らしめる。

❷ 手段:無人駅まで案内させ、電動式車椅子を4人の駅員に持たせ階段を昇降させた。

 こちらもこれまで何度も触れてきたように、❶の目的そのものは悪くない。多くの人が❷の手段がJRに過度の負荷をかける方法であると批判しており、仮に❶の目的が正当でも、❷の手段は許されないとしているのである。

■鈴木騎手と伊是名氏の対応の違い その後の展開に影響

 以上の点を踏まえて両者の問題が起きた以後の対応を比較してみよう。

鈴木騎手:②の手段が不適切でした。反省しております。ただ、①の目的だったことをご理解ください。

 一方、4月26日に発表された社民党の声明も踏まえて伊是名氏の言い分を抽象的に表現すると以下のようになる。

伊是名氏:❶の目的は正しいものです。❷については相手が悪いので、謝ってほしいです。

 鈴木騎手の対応が問題を起こした後の対処法としては、適切なものであろう。同じように伊是名氏や社民党も最初からそのように対処しておけば、現在のような状態にはならなかったと思われる。自らの過ちを認めて「やり方が適切ではありませんでした。すみませんでした」と一言、謝罪しておけば、その後の展開も大きく変わったのは間違いない。

 その点が理解できていない、理解する能力がないことが、政党とその幹部として決定的に欠けているものがあると言わざるを得ない。

 ばんえい競馬の不祥事を他山の石としてほしいと思うが、社民党と伊是名氏にそれを望むのは、百年河清を俟つ類なのかもしれない。

8 thoughts on “馬の顔を蹴る騎手と伊是名氏問題の共通点

  1. アバター teddy より:

    おっしゃる通りですね。
    一言謝罪すればその後の展開は大きく変わっていたはずですが、正当な批判すら「障害者差別にもとづく誹謗中傷」ととらえて社会を批判し続けるその卑怯なやり方が騒動そのものよりも嫌悪感を与えていると思います。

  2. アバター 匿名 より:

    行為の主体と客体の関係でも整理できます。
    鈴木騎手の場合、主体(騎手)と客体(馬)はパートナーである。
    伊是名氏の場合、主体(障害者)は客体(JR)に優先する。
    前者の考え方なら行為はパートナーを助けることと理解できますが、
    後者は目的に関わらず、普通の車椅子利用者にとっても、共感できない考え方です。
    普通の女性が、ラディカル・フェミニズムに共感しないのと同じです。

  3. アバター アツシ より:

    松田様
    競馬好きの自分から言うのもどうかと思いますが、内容にしたら鈴木騎手とて「悪意」もっての事では無いと思いたいです。
    「競走馬」としての手順を間違えたと言いますか度が超えてしまったと解釈したいですし、結果公然の前での行為が全世界に流れてしまった事で騒ぎになったと思います。
    愛護の観点と言えば「拍車」の禁止もそうですが、口悪く言えば「博打の駒」なんですから。
    そういう人は農耕馬の祭か馬術を観た方がストレスにはならないと思いますが。
    乱文過ぎて申し訳ないです。

  4. アバター ななし より:

    松田さんこんにちわ
    今日の東京新聞の伊是名氏のコラム
    謝罪どころか自分擁護の詭弁のみ。
    呆れるのみです。

  5. アバター 匿名 より:

    伊是名さんが本日の中日新聞に書かれたコラム、本当に腹が立ちました。かつて誹謗中傷した犯人だと名指しで暴露されたのは伊是名さんの方ではなかったかと。中日新聞社も裏付けなしにこんなコラムを載せるとは…

  6. アバター ななし より:

    伊是名氏への批判が当初はJRへの謝罪でしたが、マスコミが擁護、伊是名氏の法主張で健常者や軽度障碍者に嫌悪感。
    自分はこういった事に関わりたくない。
    できれば避けたい。
    に変わってきた感があります。
    これは良くない流れです。
    伊是名氏、社民党、素人でも不正を発見できるブログを上げていたにも関わらすコラムニストに迎えた東京新聞は早急に謝罪すべきだと思います。

  7. アバター 社民党共産党撲滅 より:

    松田様
    今回も素晴らしい記事と思います。
    炎上騒動に便乗して帯広競馬を潰せ!などと大はしゃぎしてる連中には非常に嫌悪感を覚えます。

    反省も謝罪も知らない社民党こそぶっ潰すべきです。

  8. アバター 匿名 より:

    この対応の差を説明するのは簡単です。
    社民党などの特定野党では「謝ったら負けを認めたことになる」というのが不文律だからです。

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