深田恭子さん結婚報道に見る悪しき伝統
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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女優の深田恭子さん(39)が不動産会社社長の杉本宏之会長(44)と年内に結婚する方向で調整と元日付けの日刊スポーツが報じた。昨年も一気に4人の結婚話を掲載し、実際に結婚したのは2人。今回もスポーツ新聞の正月恒例の”飛ばし”記事のようで、後追い報道もなく、他媒体から無視される結果となっている。
■婚姻届を提出する方向で調整
日刊スポーツ電子版によると、深田さんと杉本氏は2019年1月に表面化。深田さんが2020年5月26日に適応障害治療で芸能活動を一時休止すると所属事務所から発表され、同年9月2日に活動再開が自身のインスタグラムで明らかにされた。その間、支えていたのが「杉本氏だったようだ」としている。
「深田と杉本氏は今年中にも婚姻届を提出する方向で調整しているという」との複数の関係者の話を紹介。「2人とも、子供をつくりたいとの願望が強いといい、幸せな家庭を築きたいという思いが、結婚を後押しする側面もあるとみられる。」としている。
伝えられる限りでニュースソースは「複数の関係者」で、当事者2人の話は全くない。「杉本氏を知る人」が、杉本氏が結婚について「『タイミングがきたらお伝えします』という趣旨のことを話している」という。
『タイミングがきたらお伝えします』というコメントは、「杉本氏が婚姻届を出すのに適した時期が来たら、はっきりと伝えます」という意味に解釈できるが、そもそも、それも杉本氏を知る人の直接のコメントではなく、その趣旨として紹介されているから、さらに分かりにくい表現だったものと思われる(以上、深田恭子結婚へ 交際中の杉本宏之氏が周囲に意思示す から)。
結婚に関する報道なら、まず当事者にあたってその真意を確認すればいいと思うが、そうした様子はない。それをしないのは、明確に否定されるか、事務所から「書くな」と圧力をかけられるなどの事情があるものと思われる。
■昨年は4人の結婚を報じる
日刊スポーツでは鬼越トマホークの坂井良多さん(36)が一般女性と結婚の意思を固めたと言う記事も同日、報じている(鬼越トマホーク坂井が真剣交際中恋人と結婚意思固める、相方金ちゃんも公認)。
実際に深田さんと坂井さんが近いうちに入籍するかどうかは分からず、極論すれば記事を書いた記者が周辺取材の結果、そう思っているというものにすぎない。元日付けの紙面ではこうした有名人の結婚話を載せるのは昔からよくある手法。昨年の元日付け紙面では、日刊スポーツは4人の芸能人の結婚があると報じた。
その4人とは河北麻友子さん、徳井義実さん、藤森慎吾さん、狩野英孝さん。このうち、河北さんは1月に結婚を発表し、狩野さんは6月に入籍した。その意味では”当たり”も含まれていたわけだが、徳井さん、藤森さんに関しては誤報となっている。正解率が5割をどう評価するかだが、数字的にもまさに「話半分」、報道機関としての信頼性を落とすだけの行為であろう。
日刊スポーツ側からすれば、仮に深田さんが年内に結婚しなかったとしても「今年中にも婚姻届を提出する方向で調整している」と報じただけであり、その後、調整がうまくいかず、年内入籍が実現しなかったと言い訳できるし、破談になった場合は「調整がうまくいかず、やがて隙間風が生じて…」と知らん顔で報じることができる。もし、本当に結婚したら、1面の見出し写真をつけて「元日付けの本紙がスクープした通りゴールイン!」と派手に宣伝できるという計算はしていると思われる。
こうしたスポーツ新聞の詐術のような報道は他のスポーツ紙も分かっているようで、各紙、無視を決め込んでいる。夕刊紙の日刊ゲンダイが1月4日に取り上げたものの、「元日付のスポーツ紙の芸能面は…絶対的な確証が取れていない“飛ばし記事”も混在しており…元日付のこの手の記事は“お年玉”と呼ばれて事務所側がリークしている場合もあります。」というスポーツ記者のコメントを紹介。その上で、今回はリークではなく(飛ばし記事だろう)と言わんばかりの内容の記事となっている(深田恭子「年内結婚報道」をファンはどう受け止めたのか? 微妙だったネットの反応)。
おそらくライバルのスポニチをはじめ、サンスポ、報知の芸能担当記者も「また、やってるよ」程度の認識しかないと思う。こうしたことを考えると、当該記事は読者をバカにした話であり、かつ、読者も分かっていて、(だからスポーツ新聞は)と見下されるだけの結果になることは容易に予想がつく。
■代表監督ホセ・ペケルマン氏の誤報
10年以上前になるが、2010年8月30日、日刊スポーツは1面でサッカー日本代表の監督について「ホセ・ペケルマン元アルゼンチン監督」が決定と断定的に報じた。ところが同日午後にアルベルト・ザッケローニ監督に決定したことが日本サッカー協会から発表された。
この1週間後の2010年9月6日、僕は当時社長であった三浦基裕氏の「社長を囲む会」に出席し、直接話をする機会に恵まれた(日刊スポーツの歴史に残る社長解任劇(3)三浦氏がハマった首切りパターン)。この時、出席者の1人が三浦社長に「ザッケローニ監督の就任発表の当日に、誤報を打ったのはどうなのか」という質問をした。
その時、三浦社長はこう答えた。「あれは担当記者が勝負をかけたんだ。一か八か勝負に行ったんだから仕方がない」。
52歳で日刊スポーツの社長に就任した三浦社長は野球部出身の取材記者上りで、現場は分かっているはず。その現場を知る社長が、真実かどうか確定できなくても断定的に報じることを肯定的に評価することに衝撃を受けた。(こんな考えの人が社長で大丈夫なのか)と思っていたら、その半年後に株主総会で電撃的に解任されたことは、以前、連載でお伝えした通りである。
■ネットのせいにする前に
スポーツ新聞の部数の凋落は激しい。日本新聞協会が2020年12月22日に発表した16のスポーツ新聞の発行部数は263万7148部で、1年前から10.1%の減少となっている(スポーツ新聞1年で1割減 本格倒産時代到来か)。1年で市場が10%シュリンクするのは新型コロナウイルスの影響があったとはいえ、異常な事態である。
その原因はインターネットの発展と国民への浸透もあるが、それ以外にも「伝えられる内容に信頼性がない」「伝えられる内容に興味がない」という意見も少なくないと思われる。現実的に僕は退職した2014年10月以降、日刊スポーツを読んだのは2、3回しかないが、特に不便も感じない。そのような思いをする人は少なくないと思われる。
(ネットのせいだ)と新聞が売れない理由を嘆く前に、まず、買ってもらえるような新聞を作っているのかと自問自答すべき。(正月だから、有名人の飛ばし結婚記事で紙面を賑やかにしよう)などと思って作っていたら、読者離れはより深刻なものとなる。
出身母体を悪く書くのは気が引けるが、どうか売れる新聞、信頼される新聞をつくってほしい。それが日刊スポーツOBとしての願いである。
ペケルマン1面、その当日ザッケローニ発表覚えていますよ。
日刊スポーツという媒体は単独スクープは誤報が多く、そして特落ちも目立つ印象です。
社長が「一か八か」を是とするような風土なんですね。納得です。
しかしこのネット時代に正確性に欠ける単独スクープとやらはどこまで意味があるんでしょうかね。非常に疑問です。
「一か八か」でなく正確な情報を報じてほしいですね。
誤報も厭わずの姿勢だから信頼されないんだと感じます。