コロナを圧倒 台湾の”鉄人部長”支持率91%

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葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

京都産業大学外国語学部中国語学科、淡江大学(中華民国=台湾)日本語文学学科大学院修士課程卒業。1998年11月に台湾に渡り、様々な角度から台湾をウオッチしている。

■優しさの一方で締めるべきところを締める

 台湾では4月2日から5日までお墓参り休みの「清明節」4連休でした。驚いたことに、この時世に台湾中部・南部の観光地、景勝地には大勢の行楽客が押し寄せたのです。これに対し中央感染症指揮センターは「災防警細胞廣播訊息(Public Warning Cell Broadcast Service)」を通じ、中部・南部の景勝地に位置する携帯電話へ緊急メッセージを一斉配信しました。

災防警細胞廣播訊息から出された緊急メッセージ(提供:葛西健二)

 室内では1.5m、室外は1mの社会的距離を保つこと、マスクと手洗いの励行など、防疫に努めるよう注意を促しました。年に一度、家族や親族が一同に会する清明節、中部南部へ帰郷した人も多かったと思います。家族揃って行楽に出かけたい気分もあったのでしょう。政府や民間の努力で蔓延を押さえ込んでいることから気の緩みがあったと思われます。

 緊急メッセージを一斉配信したのには、感染注意と防疫を呼びかけるとともに、国民に再度気を引き締めるよう促す思惑もあったのかもしれません。

 優しいだけではなく、締めるところは締めるのは現場のトップとして当然でしょう。

■ダンスホール・キャバクラ無期限休業を決定

台北市内の酒店(撮影・葛西健二、映像は加工してあります)

 陳部長が、締めるべきところを締めた例が最近ありました。

 4月8日の定例会見では、翌9日から酒店(キャバクラ)、舞廳(ダンスホール)を全て休業とすることを発表しました。

 これは新たに3件の感染者が出て、そのうちの1人が週に3回キャバクラ嬢として働いていたことが判明したためです。

 再開期日は設定されておらず、無期限の休業命令と、思い切った対策を打ち出しました。台北在住の外国人である私から見れば、以前から他者との接触が多い施設の休業命令のタイミングをうかがっていたところ、今回のキャバクラ嬢が当初「家庭の主婦」と偽っていたこともあって大きく報道されたのを機に乗じたというイメージです。

台北市内のダンスホール(撮影・葛西健二)

 日本でも緊急事態宣言の発出により、東京などでは同様のことができると聞きます(特措法45条2項及び3項、特措法施行令11条1項11号)。

 東京ではまだ要請の段階のようですが、台湾ではそのあたりは躊躇なく休業命令に踏み切りました。

 このあたりが「鉄人部長」の本領発揮なのかもしれません。ただ、休業に追い込まれた店が秘密裏に営業を続け、ウイルス拡散の温床になる可能性もあるのではと、個人的には危惧しています。

■ブレない原則で国民の信頼「會以防疫優先」

 日本では補償について問題になっています。当然、台湾でも補償は大きな問題です。連休期間中に前述の緊急メッセージが配信されたことについて、一部の観光業者から衛生福利部へ苦情が寄せられました。

 4月6日、陳時中部長は影響を受けた業者に謝罪しました。その一方で今回の措置は「不得已 (やむを得なかった)」ことであり、防疫は全てを禁ずるのではなく経済活動とのバランスを図って行うもので、経済と防疫活動に矛盾が生じる状況下であれば「會以防疫優先 (防疫を優先する)」と力強く述べました。防疫の担当者としては当然のことでしょうが、補償というのはそもそも損失が出た時に補填するものですし、金銭での補償なら多少、後になっても問題はないはずです。

 補償対策に時間が取られて防疫が遅れたら元も子もありません。そうした大原則をブレることなく維持している部分に対する国民からの回答が、陳部長の絶大な人気と信頼であり、蔡政権支持率の高さに表れているように感じます。

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