中国人と間違えられ大迷惑 台湾が新パスポート

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葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

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京都産業大学外国語学部中国語学科、淡江大学(中華民国=台湾)日本語文学学科大学院修士課程卒業。1998年11月に台湾に渡り、様々な角度から台湾をウオッチしている。
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 中華民国行政院(内閣)は9月2日、新版台湾パスポートの表紙を発表しました。従来のパスポートとの大きな違いは、「中華民国」の下に記されていた「REPUBLIC OF CHINA」の文字が国章を小さく囲む形に変更されたことと、「TAIWAN」の文字が大きく表記されたことです。

■中国人と間違えられた笑えない話

 従来のパスポートに関しては、以前から海外の空港で中華民国の英字表記である「REPUBLIC OF CHINA 」が「People’s Republic of China」の中国(中華人民共和国)と間違われるという問題が起きていました。例えば航空会社のチェックインカウンターで「CHINA」の文字から中華人民共和国籍と間違われビザの提出を求められたり、入国審査場の係官が緑色のパスポートを偽造旅券と見做され(中国のパスポートは赤色)、別室で取り調べを行われたり、という笑えないケースもあったということです(聯合新聞網9月2日付け)。

 特に新型コロナウイルスの世界的流行以降、国外で中国籍と間違われ深刻なトラブルになるケースが多発していました(例えばインドでは台湾人がホテルのチェックインの際提示したパスポートを中国のものと誤認した従業員により宿泊を断られたり、更には海外の空港でも入国管理場で中国人と誤認した係員により入国を一時拒否されたりするケースが発生(沃草2月5日付け)。

 このためパスポートの表紙デザインを変更するよう求める声が日増しに強くなっていきました。これを受けて立法院(国会)は7月22日、識別向上を求める提案を可決、パスポートの「台湾」「TAIWAN」識別度向上を政府に要請していました(自由時報7月22日付け)。

■「TAIWAN」の表記を大きく「台灣的護照」

現行の台湾パスポート(筆者の夫人提供)、 右:新台湾パスポート(中華民国外交部領事事務局HPから)

 今回のパスポートデザイン変更はこれを受けたもので、新版パスポートは来年1月から発行されます。呉釗燮外交部長(外務大臣)は9月2日に台北の行政院で行われた発表会見上、「TAIWAN」の表記を大きくして「PASSPORT」の文字と並べて配置することで「台灣的護照(台湾のパスポート)であることが強調され、一目で識別ができる」と説明しました。

 また記者から「REPUBLIC OF CHINAの文字が小さくなったことで反発が起きるのでは」という質問には、パスポートデザインに必要な要素は維持されており問題はないこと、国章を囲むようあしらうよう配置したことが「凸顯台灣能見度 (台湾の視認性をはっきりと表している)」、そして「這個作法最能避免混淆  (「中華人共和国との」混淆を避けることができる最良の方法)」と、「台湾」のパスポートであることを再度強調しました(中央通訊社9月2日付け)。

■デザイン変更に様々な声

 パスポートデザイン変更に台湾のネットでは多くの声が寄せられています(以下Facebook, Taiwan Yahoo, 批踢踢實業坊 参照 )。

終於有改版 (ついに改訂版だ)

哈哈 Republic of China要用放大鏡才能看到囖  (ハハ、虫眼鏡使ってRepublic of Chinaの字がやっと見える)

不知道多少台灣人,為了護照封面上那個”CHINA”吃盡了苦頭,謝謝外交部 (パスポート表紙の「CHINA」の文字にどれだけの台湾人が苦い経験をしたことか ありがとう外交部)

一本讓台灣人有尊嚴的護照 (台湾人に尊厳を抱かせるパスポートだ)

掲載された理想のパスポート 中華民国外交部Facebookページ9月2日 コメントから

 多くは今回の変更を良しとするもので、「CHINA」表記が小さくなったことに対して肯定的な意見が多く見られました。その他では国章に対する議論やコメントが多いことが特徴的でした。

不滿意但可接受!因為車輪餅還在 (満足ではないが受け入れられる! 何故なら車輪餅がまだあるから)

※車輪餅:日本の今川焼、大判焼のような円形をした伝統的デザートで、ここでは台湾(中華民国)の国旗の青天白日の部分を比喩している。

青天白日怎不換掉 (なぜ青天白日は変更しなかったのだ)

黨徽不要放護照上 (パスポートに党旗は要らない)

 また理想のパスポート表紙をつけくわえたコメントも複数ありました。

應該用台灣地圖取代才是真正的台灣䕶照 (台湾の地図を使ってこそ真の台湾パスポートだ)

這才是真正的台灣護照 (これこそが真の台湾パスポートだ)

■台湾国内の国章をめぐる問題の複雑さ

 中華民国の国旗「青天白日満地紅」の左上の紋章は「青天白日」と呼ばれ、中華民国の国章であると同時に中国国民党の党章でもあります。これは中華民国の成立に中国国民党が深くかかわっていることと関連しています。

 国民党による中華民国政府(台湾国民政府)は1949年の台湾遷都から1996年の直接民選選挙まで一党独裁制を行ってきました。複数政党制を主体とした民主共和制の台湾で中国国民党の党章が今でも国章として用いられていることは国旗を巡る問題とともに度々議論されています。特に独立志向の強い人々の間では台湾島をかたどったものを「中華民国」ではない「台湾」の国旗とする考えが強いため、上述のような「理想のパスポート」が掲載されるのでしょう。台湾国内の国章を巡る問題の複雑さを感じました。

 中華人民共和国は台湾に対して香港のような一国二制度を提案したことがあります。そして、1つの中国にこだわっているのはご存知の通りです。今回の台湾のパスポートの改訂の背景には「台湾は中国ではない」という台湾人の声があります。しかし、名目上は中国との混同という現実的な問題に対応し実用的な面からの差別化(TAIWANであってCHINAではない)に過ぎず、政治的な思惑は表に出てきていません。

 このあたりが台湾と中国の関係の難しさであり、面白さであり、興味深く感じられる部分です。

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