国民党のECサイト「百年老舗」への微妙な反応

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葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

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京都産業大学外国語学部中国語学科、淡江大学(中華民国=台湾)日本語文学学科大学院修士課程卒業。1998年11月に台湾に渡り、様々な角度から台湾をウオッチしている。
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 台湾の最大野党である中国国民党は11月17日ネットショップ「百年老舗」を開設しました。台湾政党のECショップ立ち上げはこれが初の試みです。

■「百年老舗」にアクセスしてみたら…

「百年老舗」のページから。商品は若者向けか

 当ショップでは中国国民党の党章(同時に中華民国の国章)「青天白日」がデザインとして取り込まれたTシャツ・エコバッグや限定版「台湾通史」を販売、写真に若いモデルを起用するなど、若者を対象とした新たなマーケティング戦略の展開が窺えます。

 中国国民党の江啟臣主席はショップ開設にともなう発表会見で、今回の試みは営利追求をするのではなく若い世代を中心とする人心を引きつけることが重要な目的であり、ECショップの収入の半分は青年育成基金となると述べました(聯合報2020年11月17日)。

 最大野党の行う若者向けネットショップ、その新鮮な試みに興味を感じ早速にアクセスしてみました。「青天白日」に対しては様々な意見があると思いますが(詳しくは「中国人と間違えられ大迷惑 台湾が新パスポート」参照)、商品は全体的に良いデザインだと思います。特に抱き枕に関しては形状と「青天白日」がうまく融合しており、購買欲をそそられました。

 ただショップの使い勝手には少々難ありと思いました。「百年老舗」へは中国国民党公式アカウントウントからのみアクセスができます。まずLINEで「中國國民黨KMT」を登録、その後この公式アカウントウント内から「トーク」を選び「百年老舗」へアクセス、商品を閲覧することになります。商品詳細(サイズ表記や在庫確認等)も各商品クリック後に再度各項目へ進まねばならず、ステップが煩雑だと感じました。また決済方法も少々わかりにくく、今後の改良に期待します。

■民進党寄りのメディアの反応「多くの人が『沒興趣』」

「庶民感覚から非常にかけ離れている」と指摘する三立テレビニュースから

 中国国民党のECショップ立ち上げ、これを報じる台湾メディアには、各局各社の思惑や方向性が色濃く表れました(台湾メディアの政治的立場については「親中派テレビ局停波 露骨な偏向報道の実態」参照)。

 オーナー林崑海氏が与党民進党の一派「湧言文化基金會」の幹事長を務めるケーブルテレビ局最大手の「三立テレビ」は、自局ニュースチャンネルにて否定的な意見を表しています。一般人へのインタビューを交えつつ、当ショップの「台湾通史 再装丁版(木箱セット)」の販売価格(9999元:約3万6000円)が「很不親民 ( 庶民感覚からとてもかけ離れている)」、またショップへのアクセス方法も「超繁瑣  (とても煩わしい)」と指摘、「看來國民黨想要力拚轉型,恐怕還有很長一段路要走 (国民党はイメージを変えたいと考えているのだろうが、その道のりはかなり長いだろう)」と手厳しいコメントで締めくくっています( 三立新聞網 2020年11月 19日)。

 民進党党員として立法委員に複数回選出されている蔡同榮氏が設立に携わっているテレビ局「民視」は、「国民党のECショップ開設には多くの人が『沒興趣 (関心がない)』」とした上で、国民党の財務状況が芳しくないことに触れ、「江啟臣主席は『営利目的ではない』と発言しているが、国民党は今に至ってようやくお金を稼ぐことの難しさを知ったようだ」と、辛辣な言葉でまとめています(民視新聞網2020年11月17日)。

 活字メディアでは、2000年代以降民進党寄りの報道傾向にある大手新聞社「自由時報」が、国民党のECショップ設立を「國民黨設電商中心籌錢  (国民党、ECショップ開設で金集め)」の表題で、国民党の財務状況悪化を絡め報じています(自由時報 2020年11月17日)。

■国民党寄りのメディアは「受到熱烈歡迎」

開設24時間で15万元突破を大きく報じる中天TVニュース(中天快點TVから)

 では国民党寄りとされるメディアはどのように報じているのでしょうか。曾て国民党員として立法院(国会)議員を務めたこともある王令麟氏率いる東森グループのニュースチャンネルは、ECショップ開設を、江啟臣主席のコメント「募集人心才是目的 (民心を集めることが目的)」と共に表題に掲げ、大きく報道しました(ETtoday新聞雲 2020年11月17日)。

 露骨な偏向報道のため、放送免許の再交付が認められなかった「中天テレビ」(親中派財閥「旺旺グループ」経営)のニュースチャンネルでは、「開設から24時間で売り上げ15万元(約50万円)突破」と大々的に報道。

 当ショップが「受到熱烈歡迎  (熱烈な歓迎を受けた)」ことで、開設後24時間で3000人がLINEの中国国民党公式アカウントを追加、15万元という金額が「顯示支持者對國民黨的熱情與支持  (国民党に対する熱い支持の現れ)」だと強調しています(中天快點TV 2020年11月18日)。相変わらず国民党寄りの過激な報道姿勢を貫いていました。

■ネットの反応は…

 このように各社の政治的立場によって報道の方向性が大きく異なる台湾メディアですが、台湾最大の掲示板「批踢踢實業坊」では、「想要收集抱枕  (抱き枕集めたい)」 といった声も聞かれましたが、大半はあまり良い反応を示していませんでした。

ROC對他們來說就是選舉和賺錢的工具 (彼らにとってRoc(Republic of China)とは選挙と金稼ぎの道具なのだろう)

現在還有人到處穿國旗裝嗎? (国旗柄の衣装を身に纏いたい人が今でもいるのか?)

といった、「青天白日」の扱いに対する批判的な意見や、

好啦 以後靠自己賺錢 (わかった これからは自分で金を稼ぐわけだ)

 と、今までの資金源に対して皮肉を込めた反応も見られました。そして大半は、中天テレビや同系列の中国時報が大げさに報じた「24時間で15万元」に対する「少なすぎる」という反応でした。

以kmt黨員數來算, 15萬真的很少 (国民党党員の数からすれば15万元は本当に少ない)

營業額15萬哦,可悲 (売り上げ15万元、悲しい)

看了真可憐 (見てて本当にかわいそうになった)

平均1000,啊不就150人購買… (平均1000元の購入でも150人しか…)

(参照:批踢踢實業坊

■政党のECショップに現れたメディアの反応

 中国国民党初のECショップ、若者をターゲットにした商品展開、この新鮮な試みには個人的に興味を抱きました。ただアクセスの煩雑さやレイアウトの面でやや不便を感じました。今後の改良に期待します。

 また販売商品のデザインが台湾の人にとって敏感なものである為(中華民国の国章=中国国民党の党章)、政治色の強いものである為に、台湾メディアを含め様々な反応が現れたニュースとなりました。

 「青天白日」が描かれた枕を抱いて見るのは「独立」「帰還」、どちらの夢でしょうか。これが台湾の「同床異夢」です。

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