道新 鳥潟かれん容疑者逮捕に女性団体抗議

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 北海道新聞旭川支社の鳥潟かれん容疑者(22)が22日、建造物侵入容疑で旭川東署に逮捕された件で、「メディアで働く女性ネットワーク」が28日、抗議声明を発表した。メディアで働く女性の団体だという同ネットワークは、鳥潟容疑者の逮捕を行き過ぎたものだとしている。もっともその主張は、基本的な法律の知識もない杜撰なものになっている。

■現行犯逮捕の目的を取材妨害と断定

「メディアで働く女性ネットワーク」ホームページから

 「メディアで働く女性ネットワーク」は略称WiMN(Women in Media Network Japan)で、ホームページのトップにはメディアで働く女性の団体であることが明記され「社会をよりよいものにするべく活動しています。」と掲げられている(同団体HP)。

 抗議声明「旭川医大で取材中の女性記者逮捕・勾留に関する抗議声明」は28日付けで発表されている。内容を簡単に説明すると、鳥潟容疑者の逮捕・勾留は「取材・報道の自由に抵触し、取材活動に委縮効果をもたらしかねない重大な問題をはらんでいる」と考えているとする。

 同大による私人逮捕は「目的が取材妨害であることは明らか」とし、国立大学法人のため「国民に対して開かれた存在であり、取材記者の通行も当然認められるべきもの」であって「警察に対して記者であることと取材目的を明らかにしており、逃亡や身元不明の恐れがないのは明らか」なので、逮捕・勾留は行き過ぎた措置だとする。

 その上で「22歳の女性記者が…逮捕・勾留という行き過ぎた権力行使を受けた今回の事態を見過ごすことはできません。ここに、今回の逮捕・勾留に抗議するとともに、関係各機関が取材と報道の自由の意義を理解し、尊重するよう一層の努力をすることを求めます。」としている。

 なお、鳥潟容疑者は24日に釈放され、今後は在宅で捜査が続けられると報じられている。

■抗議声明に見られる欠陥

 この抗議声明にはいくつかの欠陥が見られる。

(1)建造物の管理権者の権限の一部が記者に及ばないことの根拠が示されていない。

(2)建造物の管理権者の権限の行使を「取材妨害の目的」と断じる根拠が示されていない。

(3)国立大学法人の庁舎は「研究・教育活動の妨害や器物損壊の恐れがあるといった特段の理由がないかぎり、国民に対して開かれた存在」であるべきとするが、会議の盗聴という行為が教育活動の妨害にあたらないと考えているであろうこと。

(4)当日、記者会見を行うとしていた同大について、重要事項に関して取材拒否や情報の非公開を続けたとしていること。

(5)鳥潟容疑者が現行犯逮捕された後、身分と目的を伝えたことを逮捕・勾留が行き過ぎたとする根拠としていること。

 順番に見ていこう。

(1)声明は国立大学法人の庁舎は「研究・教育活動の妨害や器物損壊の恐れがあるといった特段の理由がないかぎり、国民に対して開かれた存在であり、取材記者の通行も当然認められるべきもの」としている。

 彼らのいう「開かれた存在」はどのようなものか分からないが、学長選考に関する会議は組織の秘密事項に属するのは当然。会議の内容が常に公開されるのであれば、会議の出席者の自由な発言に対する強力な制約となる。そのことは学問の自由、ひいては個人の表現の自由の制約となるのは疑いない。

 そのような大学やそこで働く人々の重大な自由や権利の保護よりも、北海道新聞の記者が禁止されている場所に立ち入って盗聴・録音する、犯罪を実行する権利が優先するという主張はもはや「クレイジー」以外に表現のしようがない。

■建造物侵入に会議の盗聴 教育活動の妨害そのもの

旭川医大(同大HPから)

(2)「4日前にも同じ会議室付近で道新を含む複数社の記者が取材制限を受けてもめており、この私人逮捕の目的が取材妨害であることは明らかです。」としているが、同大では新型コロナウィルスの感染症拡大防止のために立ち入りを制限している。

 医大が感染防止措置を取ることは当然。少なくないメディアが感染拡大を懸念して東京五輪の中止や延期を訴えている状況下で、看護学科棟への立ち入り制限は医大として当然の措置であり、それを取材妨害が目的と断ずるのであれば何らかの証拠を出すべきであろう。しかし、実際にはそのような証拠は示されていない。

(3)国立大学の庁舎は「研究・教育活動の妨害や器物損壊の恐れがあるといった特段の理由がないかぎり、国民に対して開かれた存在であるべき」とするが、非公開で大学の運営の根幹に関わる会議を盗聴し、録音して外部に公表しようという行為は、教育活動の妨害そのものである。

(4)同大が重要事項に関して取材拒否や情報の非公開を続けたとしているが、もし、そう思うのであれば根気よく取材をする、あるいは情報公開制度を利用するなど合法的なやり方はいくらでもある。

 まして、この時の立ち入り禁止措置は取材対応をする午後6時までとされていた。大学側は取材に応じることを明らかにしており、全く情報を開示せず取材にも応じないということではない。

■通常逮捕と現行犯逮捕の違いを分かっているのか

(5)「女性記者(筆者註:鳥潟かれん容疑者)は、警察に対して記者であることと取材目的を明らかにしており、逃亡や身元不明の恐れがないのは明らかです。」としているが、逃亡や身元不明が問題になるのは通常逮捕(刑事訴訟法199条)である。

 一方、鳥潟容疑者は現行犯逮捕(同213条)されている。現行犯人とは「現に罪を行い、または現に罪を行い終わった者」(刑事訴訟法212条1項)を指す。現行犯逮捕の要件は「『犯罪と犯人の明白性』と『犯罪の現行性・時間的接着性の明白性』」(新・コンメンタール刑事訴訟法第2版 後藤昭・白取祐司 p514 日本評論社)である。

 鳥潟容疑者の行為は、①正当な理由なく、②他人の看守する建造物等に、③侵入する(管理権者の意思に反して立ち入る)、という建造物侵入罪(刑法130条)の構成要件を満たしており、犯罪と犯人の明白性は疑う余地はない。また犯罪の現行性は立ち入り禁止の場所に立ち入っていたのであるから、犯罪の現行性も問題ない。現行犯逮捕の要件を完全に満たしている。

 さらに同大が私人の現行犯逮捕を行なった後、警察に鳥潟容疑者の身柄を引き渡したのは司法警察職員への引き渡し(同214条)という手順を踏んだものであり、適法である。逆に引き渡さなければ旭川医大が逮捕及び監禁罪(刑法220条)に問われかねない。

 現行犯逮捕なのに、通常逮捕の要件を持ち出して逮捕が違法であると主張するこの団体には驚くばかり。鳥潟容疑者が現行犯逮捕された後に身分と侵入した目的を明らかにしたところで、法的には何の意味もない行為である。

■誰があなたたちを信用するのか

 「メディアで働く女性ネットワーク」という団体そのものが、ホームページから所在地も分からなければ代表者も明らかにしていない。自分たちが何者なのかも明らかにしない人たちの言うことを、世間が納得してくれるかと言えば、それは難しいであろう。

 何より、せめて、もう少し勉強したり、調べたりしてから書いた方がいい。このような抗議声明は「メディアで働く女性は無知蒙昧の民か」と多くの人に思われる以外の効果は認められないと思う。

10 thoughts on “道新 鳥潟かれん容疑者逮捕に女性団体抗議

  1. アバター 月の桂 より:

    松田さん!(*^ー゚)b グッジョブ!!
    研ぎ澄まされたキラキラの剣で、スパっと正してくれましたね。

    〉「メディアで働く女性は無知蒙昧の民か」

    多くの人は、そう感じるでしょう。
    この団体は、メディアで働く「他の優秀な女性」の足を引っ張っていますね。
    声明を出すなら、その前に、専門家に内容を精査して貰うなり、受け手を納得させるだけの根拠を示して発表するべきです。
    この手の人達は、感覚でしか物事を考えないようです。法律どころか、ルールという言葉さえも知らないのでしょう。
    これが、鳥潟かれん容疑者と同じ年齢の「男性記者」であったらどうしたのでしょうね。女性の団体なんだから、男性のことなんか知らないわよ~でしょうか。
    私は女性ですが、女性団体なるものには嫌悪感しかありません。女性の人権ばかりを訴え、男性の権利侵害はスルーです。
    失礼ながら、無知無教養の極みの方々だと思います。

    1. アバター NA より:

      例えば、セクハラと捉えられうる行為を受け過剰防衛して逮捕といった、女性記者ゆえに起きた事件なら、女性団体の登場も理解できますが(当該団体の素性等はイマイチよくわかりません)。

      防衛省集団接種のサイトへの架空予約の朝日、毎日。ホワイトハッカーとしてならまだしも、悪戯促進報道。いい加減、新聞社は、反社会的行為を弁えろ!

      1. アバター 月の桂 より:

        NA 様
        仰る通りですね。
        こういう人達は、「女性」に敏感なんですよね。事の善悪は関係なく、女性を守ることに使命があるのでしょう。
        公正で公平な記事を書いて下さるのは、令和電子瓦版だけですね。
        松田さん、YouTubeに進出してみませんか?
        人気出ると思います!!

        1. アバター NA より:

          月の桂 様 ご返信ありがとうございます。
          被疑者の鳥潟氏が起訴され、裁判の場で事実が明らかにされ、法が厳格に適用されることを望みます。上司からの指示であったのが、鳥潟容疑者単独の判断なのか、その辺りも重要です。一方、札幌医科大学も国立大学法人として、学長のパワハラや不正支出の調査報告や新たな人選について、社会に対して説明責任を負うものと思います。

          1. アバター 月の桂 より:

            NA 様
            札幌ではなく、旭川医大ですね。
            社命で行ったのか個人の判断なのか知りませんが、鳥潟容疑者には、記者を志した原点に立ち返って欲しいですね。

  2. アバター 名無しの子 より:

    ネットの情報ではありますが「メディアで働く女性ネットワーク」の会費は五千円とか。「マスコミ・セクハラ白書」とかいう本の出版と宣伝をしていて、あの伊藤詩織氏も、その本を推薦しているとか。住所も問い合わせ先もない。気味の悪い団体ですね。
    https://wimnjapan.net/

  3. アバター MR.CB より:

    》》ジャーナリスト松田様

    自称“◯◯団体”の類いでしょうね。その様な胡散臭い組織から応援される方は、やっぱり胡散臭いと思ってしまいます。
    松田さんも大変でしょうが、世の中の胡散臭い人物や団体を一つづつ暴き正して頂きたいです。

  4. アバター 高山椎菜 より:

    こんにちは。
    これってよもや脳内団体じゃありますまいね?

  5. アバター NA より:

    武漢肺炎禍、しかも機能獲得研究による人工ウイルスとの疑惑まで出ている最中。関係者立ち入り禁止の、医療関係者が集う施設内に不法侵入して逮捕。女性団体に支援されるようでは新聞記者としての資質欠如を露呈するようなもの?

  6. アバター 通りすがり より:

    小賢しい屁理屈を弄して論点を摩り替えるつもりなのか知らんが、子供でも常識の範疇として理解しているであろうことがなぜこういった連中には理解できないのだろうか。
    モラルの低下も甚だしい。

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