“冤罪”で免職の札幌元教師 フラッシュバックあった
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
最新記事 by 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 (全て見る)
- 高田氏謝罪も会社沈黙 許されないトカゲの尻尾切り - 2026年9月6日
- wakatte.TV福島暴言で武田塾FCオーナー大迷惑? - 2026年9月5日
- “冤罪”で免職の札幌元教師 フラッシュバックあった - 2026年9月3日
全く身に覚えのない28年前の女子生徒に対する行為を理由に、2021年1月に懲戒免職された札幌市の元中学校教師・鈴木浩氏(62、仮名)が、3日までに当サイトの取材に応じた。同氏は現在、札幌市を相手取り、免職処分の取消しを求める訴訟を札幌地裁に提起している。これまでに16回の準備手続が行われており、判決はそれほど遠くないとみられる。免職から5年7か月、提訴から3年が経過した。長期化する裁判への思い、教壇から引き離された苦しみ、復職への思いを聞いた。
◾️札幌―東京16往復
取材は8月、鈴木氏が都内を訪れた際に行った。訴訟係属中のため裁判の具体的な内容には触れず、現在の心境を中心に話を聞いた。訴訟は札幌地裁に係属しているが、鈴木氏が依頼した弁護士は東京の弁護士会に所属している。鈴木氏は準備手続にオンラインで参加するため、そのたびに札幌から東京へ出向いている。
これまでに行われた16回の準備手続には、全て参加してきた。 最初の準備手続では、裁判官から「えっ、東京にいるんですか」と驚かれたことが記憶に残っているという(参照・もう一度教壇に立つ 元教師が免職取消訴訟提起へ)。
「もう、わずか1キロか2キロぐらいのところに行けば裁判官がいるんだけど、東京の弁護士さんのところに行かないといけない。何回もそこで弁護士さんと直接お話をすることで、ものすごい信頼関係が生まれ、話の道筋もやっぱり分かりますよね。」
しかし、長期化する戦いによって、疲労感や集中力の低下を感じることもある。そのため、日頃から体力と健康の維持を心がけている。
「やっぱり裁判って、元気でなければダメなんですよ。例えばインフルエンザやコロナにかかった時などは、もう頭が空っぽになりますから。体調が悪くて悪くて、もう裁判どころではありませんでした。」
注意しているのは健康だけではない。交通事故や、痴漢などの冤罪事件に巻き込まれないよう、日常生活でも慎重に行動している。「満員のモノレールが来たら乗りません。次は空いているのが分かっているから、各駅停車に乗るんです。変なところで『この人に痴漢されました』みたいなことになったら、大変なことになるでしょう。今、冤罪を晴らすための裁判をしているのに、弁護士さんだって呆れてしまいます。だから札幌でも、公共交通機関にはできるだけ乗らず、自転車や車を利用しています」と、その日常は、裁判に勝つため、そして裁判に悪い影響を与えないための行動を最優先にする生活となっている。
◾️「俺、今、何やってるんだ?」
裁判資料は膨大な量に上る。事案の全体像を正確に把握するためには、資料を読み込み、どこに何が書かれているかを理解しておかなければならない。鈴木氏によると、裁判資料をまとめたファイルは19冊になったという。あまりに量が多いため、内容を10枚ほどの一覧表に整理した。その一覧を見れば、必要な記述がどの資料にあるかを、すぐに確認できるようにしている。
免職から5年を超え、先行きの見えない戦いは、精神的にも金銭的にも大きな負担となっている。実際、同じような境遇に置かれた人が、鈴木氏のように徹底して復職を求め続ける例は少ないという。「これはもう、どの弁護士さんに聞いても、『こういう状況で諦める人の方が圧倒的多数です』と言います。『第二の人生を頑張ります』と、みんな言うそうです」とするが、それでも本人は戦いを続けている。その執念が、処分取り消しと復職という大きな結果につながる可能性はある。
現在は教育とは異なる業種で働いている。仕事そのものは好きで、同僚との関係も良好である。それでも、教員への復職に対する思いが消えることはない。実際、今でも「水墨画を描かせたり、焼き物を生徒に作らせたり、風景画を描いている生徒を指導したりする夢を見ることがあります」という。
「今の仕事もいい仕事なんですよ。大好きだし、仲間もいい人たちだし。でも、夜中に巡回していて、『あれ、俺、今、何やってるんだ。今、3月15日で、明日は卒業式の日だよね。何で俺は夜勤をやってるんだ』と、ふっと思うことがあります。夜中の2時頃に、何回かありましたね。『今日は入学式だな』『今日は夏休みに入る前の終業式だな』とかね。」
全く身に覚えのない行為によって職を失ったとする鈴木氏の痛みは、このように、今も心に深く刻まれている。「普通に退職しているのだったら、『ああ、ほほ笑ましいな。俺たちの後輩が頑張っているな』と思える。でも、そんな退職ではなく、不当な懲戒免職だから、引きちぎられている。もう引きちぎられているんですよ。あの場所から引きちぎられたんです」と言葉は強くなる。
◾️名誉回復の先にある人生
免職となった直接の理由は、1993年に授業を担当した当時中学3年生の女子生徒に対し、わいせつな行為をしたと認定されたことにある。元生徒は顔と実名を公表し、メディアを通じて被害を訴えた。写真家の石田郁子氏(48)である。
しかし、鈴木氏は石田氏の訴えを全面的に否定している。
例えば石田氏は、鈴木氏と登山した際、登山客が行き交う山頂付近で口淫を強要されたなどと主張している。これに対し鈴木氏側は、そもそも当日にアリバイがある上、主張された行為の内容も不自然であるとして争っている(参照・免職教師の叫び(37)山頂付近で口淫の信憑性)。
名誉を回復し、教壇に戻るためには、この点は必ず乗り越えなければならないポイントである。そこを裁判所に認めてもらってこそ、次の人生が開ける。そのことについて「弁護士さんから『あなたは勝って、80歳、85歳になっても、幸せな人生を送ってほしい』と言われました。幸せになることで、今までつらかったことを全部振り返ることができるし、相手を見返すこともできる。相手というのは、市教委であったり、石田であったりね」と、弁護士の言葉を受け止めている。
もっとも、まだ裁判の途上であり、勝った後の人生をまだ具体的に思い描くことはできないという。裁判に全力を注ぎ続ける間にも、家族の生活や人生は変化してきた。その一方で、自分だけが免職された時点にとどまり続けているように感じるとのことである。
「この6年間で、家族がどんどん変わっていって、成長していくけれども、僕自身が変わっていないというのは何だろうなってね。そう思います。」
裁判に絶対に勝ちたいという思いがある一方、そのために人生の長い時間を費やしてきたことへの複雑な心境ものぞく。
◾️教壇に立つ日を目指し
2023年の提訴から3年が経過した。判決の具体的な時期は明らかになっていないが、既に16回の準備手続が行われている。審理は相当程度進んでおり、判決はそれほど遠くないとみられる。現在62歳の鈴木氏は、処分が取り消されれば、再び教壇に立つ可能性がある。
「この裁判で勝ったら、今の職は辞めます。65歳まで再任用できるのだから、意地でも再任用を申請して、どこかの学校で美術の先生をやりたい。3年間でもいいですね。最後は、お別れの3月に生徒の歌声を聞ければ満足です。『ああ、生徒の歌声を聞けてよかったなあ』と。」
教壇に立つことへの強い思いが、辛い日々の支えとなっているのは間違いない。








