“巨人坂本醜聞”報じないスポーツ紙5つの法則
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
最新記事 by 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 (全て見る)
- 藤田菜七子騎手 処分も引退も当然 - 2024年10月12日
- 共同通信報道に元教師の怒り ”全くの虚偽” - 2024年10月5日
- 武豊騎手に勝機 アルリファーで挑む凱旋門賞 - 2024年10月3日
NPB巨人の坂本勇人選手の醜聞が報じられてから2週間、スポーツ新聞は当該事件について沈黙を守っている。一部メディアはそのことを異常な状況であるかのように報じるが、スポーツ新聞出身者から見れば予想通りの展開。その報道の法則を紹介し、坂本選手の件で当てはめて考えてみる。
■スポーツ紙OBの分析
巨人の坂本選手の醜聞は、週刊文春が報じた。私的な会合で同選手と知り合ったA子さん(20代)は肉体関係に発展。避妊をせずに性交渉に及び、1年以上アフターピルで妊娠を防いでいた。しかし、A子さんは妊娠してしまい、それを告げると「望んでもないのにできた子なんて可愛いと思えるか」と笑いながら言われた。結局、A子さんは中絶することになったが、精神的に深いダメージを負い、自殺を図る(未遂)。この件について読売巨人軍に問い合わせたところ、A子さんに謝罪し、双方の弁護士で示談が成立した。(週刊文春オンライン・「性行為のたび3万円でアフターピルを…」巨人・坂本勇人選手(33)に元交際女性の親友が告発《LINEに「なかだし? ダメ?」「髪もひっぱりたい」》 9月10日公開から)
衝撃的な内容であるにも関わらず、それから2週間、プロ野球の専門紙でもあるスポーツ新聞が一切、報じないのは一般社会からすれば不思議に思える事態。デイリー新潮ではスポーツ新聞OBの話として紙面の責任者は後追い記事を書けとは言えない、その理由としては示談が成立していること、民事上の紛争であること、報じた場合、巨人サイドから選手のプライバシー侵害と言われる可能性があることなどを挙げた(デイリー新潮・「そりゃ坂本選手の中絶トラブルは記事にできないよ」スポーツ紙OBはなぜそう言うのか 9月24日公開)。
スポーツ紙OBなる人が言うことは、外れてはいないと思う。ただ、それは表面的にはそのような経緯で報じられていないということを説明したにすぎない。実際に妊娠中絶をさせ、暴言を吐くなどで女性の肉体と尊厳を傷付ける行為を見ないふりをして、ゲームでの活躍にだけスポットを当てて報じる姿勢に多くの人が疑問を抱いているであろう点には言及がない。その部分こそが大事なところである。
■スポーツ新聞・報道の5原則
僕自身、日刊スポーツ新聞社に1985年4月から2014年10月まで足掛け30年在籍し、スポーツ新聞の行動原則のようなものは内部から見て、いやと言うほど分かっている。僕が実感したスポーツ新聞報道5原則を以下に示そう。
(1)ニュースバリューより記事の面白さを重視
(2)強い相手には逆らわない
(3)強くても文句を言ってこない相手なら報じる
(4)人権や関連法に無知、無頓着
(5)人権や関連法を理由に報じない
紙面はこの5つの原則に則って構成されていると思って間違いない。順に説明していこう。
(1)スポーツ新聞は1面の大見出しが即売の売上を左右するため、いきおいセンセーショナリズムに走る傾向がある。そのためには大上段に正論を振り回すよりも、下ネタでも読まれる記事、売れる記事が大事にされる。
(2)記事にクレームをつけられると正論で返す能力がなく、簡単に謝罪文や訂正文を出して鎮火を図る。正論を主張して紛争が長引くより、引き下がってでも早めに解決した方が評価される。差別を解消するための団体や在日外国人の団体、暴力団まがいの政治団体などには本質的に恐れを抱いており「触らぬ神に祟りなし」が基本的な姿勢。
(3)一方で、強大な力を持っていても全くスポーツ紙を相手にしない団体、たとえば政権与党などは遠慮なく攻撃する。仮にクレームがついても電話で一言、二言、言われる程度で、その後、取材拒否とされても、もともと取材ができないから痛くない。
(4)憲法が保障する権利や公共の福祉との関係などについては、無知に基づく無頓着。基本的に大学で法律を一生懸命に勉強して入社する人間は少ない。少年法の報道に関する規定すら知らず、元巨人の有名投手が高校卒業後、成人(当時は20歳)前に起こした暴力事件を実名で報じ続け、後から「事件が重大なので実名で報じました」というお断りを入れたのはその代表例。
(5)報じることができない場合、その理由を人権や関連法に求めて報じないことを正当化する。
■坂本選手の事件への当てはめ
この件を今回の坂本選手の事件に当てはめてみる。
(1)坂本選手の記事はセンセーションであるから、1面大見出しにすれば一時的には売れるであろう。しかし、既に示談が成立し、両者がこの件については口外しないという合意が成立しているようであるから、文春が報じた内容を超える事実は出てこない。そうなると報道をなぞるだけになり、下世話な話が好きな読者が見出しに釣られて新聞を手にしても、記事の内容で満足させることはできない。報じる価値はあるが報じても売上は大して伸びないとの判断に至るのは必然と言える。
(2)スポーツ新聞にとってプロ野球は重要なコンテンツであり、一時期の人気はないとはいえ、今でも巨人は最高のブランド。坂本選手の件を報じたことで、その後、さまざまな面で取材に圧力がかかれば紙面作りに大きな影響が及ぶ。「後追いしないで」と広報担当から申し入れがあったとすれば、従った方が得と考える。
圧力団体を恐れる点については、日刊スポーツでは1980年代後半、食肉処理関係者への差別を助長するようなプロ野球関係者の発言をそのまま掲載し、強い抗議を受けたことがトラウマになっている部分はある。この時は担当記者、直接の上司、編集局長が謝罪に訪れ、関係者から罵声を浴びせられ、さらに何度も関連する団体が実施する研修を受けさせられたと聞く。最終的に1ページの半分近くを使って経緯を詳細に報じた上で謝罪する記事を掲載。その後、社内では使用禁止用語の徹底などの教育が行われている。他社もその経緯は把握しており、同様の体質であることは容易に想像がつく。
(3)日刊スポーツが2020年2月29日付けの1面で安倍政権批判をしたのは記憶に新しい(参照・日刊スポーツが休校要請を「丸投げ」と批判 中学生も失笑するような非論理性)。相手が時の政権であっても、それを批判しても報道の自由で守られ、事実を誤った上での批判などがない限りクレームがつくことはない。文句を言ってこない相手には強気に出る。逆に取材拒否などの報復が予想される相手には下手に出る。
(4)坂本選手の行為は不法行為と呼べるもので、それを公にした際に名誉毀損で訴訟を提起されるリスクがあるというのは理解できているはず。しかし、名誉毀損の違法性阻却事由(不法行為の阻却事由と言うべきか)である①その行為が公共の利害に関する事実に係り、②もっぱら公益を図る目的に出たこと、③摘示された事実が真実であることが証明されたこと、の3点が当該事件にあてはまるかどうか、そして不法行為がA子さんの尊厳を著しく傷つけるものであること、その点への意識が希薄。女性の人権侵害への怒り、憤りがあれば、上記の②についても自信を持てるはずだが、そこまで考えず、(黙っていた方が得)という考えに至ったものと思われる。
(5)最終的に報道しないことになり、その理由を説明する場合には(1)~(4)を主張するわけにはいかない。そのため、示談が成立している、坂本選手のプライバシー保護など、報道機関としての責任を表に出し、報じない不作為を正当化する。
■スポーツ新聞の宿痾
スポーツ新聞に足掛け30年お世話になった身として、このように出身母体を含めた業界を悪く言うのは本意ではない。しかし、これが実情であり、そうしたことを多くの人に伝えるのは中にいた人間としての務めであると考える。極論だが、野球ばかり報じていた媒体に、報道機関としての責任を求めるのは八百屋で魚を求めるようなもの。
スポーツ新聞がこのような体質になるのは、1つは一般紙の資本が入っており、その販売を一般紙の新聞販売店に委託していることから生殺与奪を一般紙に握られているという構造があるのかもしれない。
一般紙の意向に逆らって存在することができないため、正論を主張して滅びるよりは自らの主張を曲げてでも生き残りたいという考えが染み込んでいるように感じる。上の意向に唯々諾々と従う人間が重用されることで、社のDNAとして連綿と受け継がれてきたと思う。
坂本選手の醜聞が報道されない裏には、そうしたスポーツ新聞の宿痾のようなものが見てとれる。
坂本勇人選手の醜聞が報じられないもう一つの理由として、読売巨人軍(読売ジャイアンツ)の親会社である読売新聞グループ本社の存在も否定できないと思います。
巨人のオーナーから離れたとはいえ、代表取締役主筆として現在も在籍している渡邊恒雄氏の存在が大きく、他の新聞社が及び腰になっているのでしょう。
「新聞社」としているのは、スポーツ紙に限らず一般の新聞社も同じだからです。
新聞社が新聞社を批判することは、大抵は思想の相違であり、例に挙げるとすれば、産経新聞や夕刊フジが朝日新聞を批判している事です。
それ以外のことに関しては、殆ど批判することはありません。
これはマスコミに蔓延る「談合体質」が原因だと思います。
示談が成立していること、民事上の紛争であること
って、香川照之だって同じだったじゃん!
それなのに坂本はスポーツ界だからって報じないのはおかしい。
一誌だけ書いたら叩かれるから、お得意のジャーナリズム魂で全紙一気に書いたらいいのに。
いいね
香川照之氏の記事でもコメントさせて頂きましたが、坂本選手の件については別の意味で日本の社会を象徴している様に感じています。
日本には根っからの「イジメ体質」があるのではないかと思えてなりません。叩きやすい相手を徹底的に叩く、例えそれが事実であっても気持ちの良いものではありません。また、利害や諸般の事情で対応が分かれてしまうのが見え見えになる、そこには更に日本社会の矛盾や理不尽さを感じます。日本のメディアは特定の人をヒーローか極悪人のどちらかにしたがる、一般の方もそれを楽しんでいる人達が多いのか?とも思えてしまいます。伊藤詩織事件にも同様の事を感じていました。
それぞれ何年か前の出来事、しかも示談が成立している、それがたまたま表に出て騒いだり騒がなかったり。記事にしても話題性がない案件は記者さんや自分達の周りにも星の数程ありそうなのに、何とも情けないものです。
ただ一つ言える事は、後で問題となって困る人は普段の生活態度やSNSでの発言内容に気を付ける事ですね。
敢えて厳しい意見を申し上げますが、相手が腐っても巨人の選手だから報じないと言うならJRA並び馬主にも当てはまるのではないでしょうか?
違いますか?
何を言ってるのでしょうか? 正気とは思えませんが。
>>相手が腐っても巨人の選手だから報じないと言うなら
報じない理由はそれだけではない、5つの原則を挙げています。それが読み取れないのでしょうか。
>>JRA並び馬主にも当てはまるのではないでしょうか?
仮に当てはまったとしたら、それが何か?
>>敢えて厳しい意見を申し上げますが、
どこが厳しいのでしょうか?
読解力に問題があるのか、表現力なのか、それとも両方なのか。今回は公開しましたが、今後意味不明の書き込みをされた場合は公開しません。少なくとも、もう少し日本語を勉強してから書き込むよう、お願いいたします。
大変失礼しました。
スポーツ紙の巨人忖度。
そう遠くないであろう長嶋茂雄氏訃報トップ落ちは何が何でも阻止しないとね。
欠穴確定。