「桜ういろう」共同通信デスクか 業務妨害罪も
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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ツイッター上のアカウント「桜ういろう」が共同通信所属で社会部のデスクであるとする記事を18日、NEWSポストセブンが公開した。保守系の文化人やナザレンコ・アンドリー氏らに執拗に絡み誹謗中傷や、個人情報の開示などをする左翼系かつ迷惑系のアカウントとして一部では知られていた。投稿されたツイートには偽計業務妨害罪が成立するのではないかと思われるものも含まれており、報道が事実であれば共同通信は厳しい処分をするのは確実とみられる。
■健全な批判と程遠いツイート
「桜ういろう」はこれまで百田尚樹氏や有本香氏ら保守系の文化人を批判だけでなく揶揄、罵倒するなど問題の多いアカウントとして認識されていた。さらにウクライナ人で政治評論家のナザレンコ・アンドリー氏に対して、ヘイトスピーチともとれるもの、本人が全く関係がないとする特定の宗教と関連付けるもの、さらに個人情報を拡散するものなど、健全な批判とは程遠いツイートを続けていた。
これに対し、ナザレンコ氏は情報開示請求を行うとしてツイッター上で協力を呼びかけたところ、55時間で553名の協力者があり、支援金は320万円を上回ったとした(2023年2月18日午後0時30分投稿)。
ネット上で「桜ういろう」の特定は、Colabo問題ですっかり有名になった暇空茜氏の2月14日のツイートがきっかけになった。「桜ういろう」のものと思われるインスタグラムに実名が記載されていたことから毎日新聞と共同通信に同名の記者がいる(いた)ことが判明。既にネット上では実名が挙げられている。
こうした中、NEWSポストセブン(週刊ポスト)は桜ういろうが共同通信の記者であるとする記事(以下、当該記事)を公開し、共同通信の関係者の話として以下のコメントを掲載した。
「桜ういろうは…共同通信記者です。現在は名古屋社会部のデスクで、2月16日には緊急の会議が開かれました。その結果、当該記者は10日間の自宅待機が命じられた。…10日間の自宅待機の間で、ツイートを精査したうえで正式な処分を下すとみられています」」(NEWSポストセブン・【独占】ツイッターでヘイト発言を繰り返していた「桜ういろう」は、共同通信の社会部デスクだった)。
■偽計業務妨害罪成立の可能性も
NEWSポストセブンの伝える内容につき、当サイトは共同通信に問い合わせを行った。20日午後6時を回答期限に設定し、以下の質問をしている。
当該記事の内容につき、お聞きいたします。
(1)「桜ういろう」は、御社の記者であるとされていますが、事実でしょうか。
(2)当該記事内で御社の関係者が「桜ういろうは…共同通信記者です。現在は名古屋社会部のデスク」とコメントしていますが、事実でしょうか。
(3)「桜ういろう」が御社の社員であることを前提にうかがいますが、御社では「桜ういろう」のSNSでの言論活動を把握していたのでしょうか。
(4)社員のSNSを利用した活動について、御社ではどのような規則を設け、どのような指導をされているのでしょうか。
もし、NEWSポストセブンの伝える内容が真実であれば、「桜ういろう」は業務時間内を中心に業務とは関わりのない投稿をし、また、会社が取材の過程で得たのかもしれないナザレンコ氏の住所を、本来の目的以外で使用したことになる。
また、ナザレンコ氏の講演会に関するツイートを引用し「私のエージェントが何名か潜入を検討中です。一見ネトウヨ風なので、見破るのは想像以上に大変かも。ナザレンコ・アンドリーさんにウォッカで挑むそうです」と投稿したことは、ナザレンコ氏の講演会への参加を妨害の結果を発生させるおそれがあり、偽計業務妨害罪(刑法233条)が成立する可能性がある。
そのような点を考慮すれば、共同通信は相当、重い処分を下すのは間違いない。
■デスク業はツイッターをやりやすい?
「桜ういろう」の正体が共同通信の社会部デスクであるという報道が間違いないと思われる理由の1つに、通常業務との関係でSNSを利用しやすい環境にあることが挙げられる。
通信社も新聞社も「デスク」と呼ばれる職種があるが、管理職である次長が担当するのが一般的。最も重要な役割は現場の記者から送られてくる原稿を手直しする、あるいは手直しさせて完成品にするというもの。そのため勤務に入ると長時間パソコンと向き合うことになる。原稿のチェックや直しの最中にツイッターに投稿するのは比較的簡単である。
もっとも、業務時間内にツイッターの画面を開いていたら、あるいはスマートフォンでツイッターをしていたら目につくのではないかと思われる人もいるかもしれない。
その点、桜ういろうがどのような方法で行なっていたか分からないが、おそらく、堂々とパソコンで画面を開いていたのではないかと想像する。
僕自身、日刊スポーツ新聞社に在籍し、2000年代中盤から2010年代初頭まで自社サイトの運営を担当する電子メディア局に在籍していた。記事を作成してアップする仕事であったが、自社がアップした記事の反応を探るため、掲示板の「2ちゃんねる」は頻繁に見ていた。リアルタイムで入ってくる記事のPVの状況に加え、2ちゃんねるから一般ユーザーが記事をどのようにとらえているか、あるいはスレッドができるほど社会にインパクトを与えているかを探るのである。それはその後の記事作成の指針となる上、サイトのトップの記事に何をもってくるかなどを決定する要素ともなるから、極めて重要な仕事と言っていい。
当時はツイッターも今ほど盛んではなかったので専ら2ちゃんねるの反応を見ていたが、今ならツイッターを見ても不思議はない。そのために閲覧用のアカウントを作成して、随時、パソコン画面上で見ていたとしても問題とされないのではないか。
現場の記者であれば、コンスタントにツイートを投稿するのは難しい。記者がパソコンを開くのは調べものをするときか、記事を書くときぐらいで、勤務中はデスクのようにずっと開いたままという状況はそれほどない。そのため、デスクであるという報道がなされた時に「デスクなら可能だ」と考えたメディア関係者は少なくないと思われる。
■なぜ傍迷惑なツイートを続けたのか
最後に、なぜ、桜ういろうが傍迷惑なツイートを続けていたのかという点を考えてみよう。僕自身、日刊スポーツ在職中、会社の報道姿勢に全く賛同できなかった。特に朝日新聞の劣化版のような左翼的な政治・社会面のつくりが不快でならなかった。その不快さは、自分が全く好みではないファッションで毎日通勤している時に感じるストレスのようなものと思っていただければいい。
「自分はこんなことは思っていない」、「書いた記者も通したデスクもバカじゃないか」という思いがずっと胸の中にあると、どこかで自分の主張をしたくなる。僕の場合、それは自社サイトで実現させていたが、桜ういろうは、それをツイッターに求めたのではないか。共同通信も十分に”左寄り”の通信社であるが、桜ういろうにはそれでも偏りが足りないと感じたのかもしれない。
そうした状況を考えると「桜ういろう=共同通信社会部デスク」は十分にあり得る話と思われる。共同通信が当サイトの取材に答えるか分からないが、今後、さまざまな事情が明らかになってくると思われる。共同通信にはこれ以上メディアとしての信頼を損ねないような真摯な対応が求められる。