ゲンダイ・クオリティ示すカンニング竹山氏報道

The following two tabs change content below.
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 日刊ゲンダイDIGITALがお笑い芸人のカンニング竹山氏に番組内の発言に関して訂正を求める抗議文をTBSに送付していることを伝えた。記事は、日刊ゲンダイの媒体としてのクオリティを示すものとなっている。

■カンニング竹山氏は訂正も東京とは抗議文送付

都庁は「伏魔殿」なのか?(撮影・松田隆)

 日刊ゲンダイが独自ニュースと銘打って報じた記事は「激オコ小池都政“辛口”カンニング竹山に『猛抗議文』の仰天」というタイトル(公開4月1日12時20分、更新同日17時11分)で、記事を紹介するツイッターの投稿には【独自】のマークが付されている。

 カンニング竹山(隆範)氏が3月28日の生放送「アッコにおまかせ!」(TBS系)で小池百合子都知事が出演したYouTubeの広報動画について「制作に4.7億円かかっている」という趣旨の発言をしたことが、騒動の発端。番組中に誤りに気づいた竹山氏は「4.7億円は、動画制作費ではなく、広告費全体の経費でした」と訂正し、「すみません」と謝罪した。

 これに対してゲンダイでは東京都に問い合わせたところ、政策企画局から「動画の制作にかかった費用は計1800万円。4.7億円かかった事実はない。訂正を求めるため抗議文を送付した」との回答を得た。これに対して、番組内で訂正し謝罪した事実を伝えたところ「4.7億円という数字が独り歩きし、都庁に抗議電話が殺到し迷惑している。正しい情報発信をしてもらうためにも抗議が必要と判断した」と、抗議の理由を説明された(以上、日刊ゲンダイDIGITAL該当記事から)。

■記事の4つの問題点「伏魔殿」の意味が分かっているのか

 日刊ゲンダイが取材をしていた事実はある種、驚きであるが、他の媒体に出ていないニュースであれば、それはそれでよくやったと言えるかもしれないし、事実を事実として淡々と伝えればいい。ところが、この独自ネタについて、以下のような理解に苦しむ伝え方をしている。

(1)「猛抗議文」、「『女帝』が君臨する“伏魔殿”」との表現を使用

(2)タレントに発言を訂正するように抗議することを「前代未聞の異常な感覚」と事実を誤認

(3)行政機関による個人への抗議は言論封殺と取られかねないとし、抗議そのものをすべきではないととれる主張をしている

(4)識者のコメントが事案と関係のない話

写真はイメージ

 1つ1つ見ていこう。(1)については、見出しで「猛抗議文」とあるが、東京都が提出した書面に「猛抗議文」と記載されているわけではないはず。実際に本文は「抗議文」で統一されている。東京都が出した抗議文を”猛”抗議文とした理由については一切触れていない。

 要は見出しをセンセーションな表現にして、読者・ユーザーを誘引したかっただけのことであろう。事実を事実として伝えるメディアとして適切な行為とは思えない。

 「『女帝』が君臨する“伏魔殿”」に至っては、意味不明である。公正な選挙で選ばれた都知事を専制君主であるかのような表現をするのは適切ではない。また伏魔殿とは「①悪魔のかくれている殿堂。②悪事・陰謀などが陰で絶えずたくらまれている所。」(広辞苑 第7版 岩波書店)と説明される存在であり、そのように書くのであれば、根拠を示すべき。

 そうしたものが一切なく、ただ、罵詈雑言を浴びせ、根拠なく東京都を悪者であるとするスタンスを取ることを示しているのである。(この記事は思い込みによる決めつけを前提で書きます)と冒頭で宣言しているに等しい。

■「前代未聞の異常な感覚」は事実なのか

 (2)については、行政機関がタレントに対して、発言の訂正を求めることが「前代未聞の異常な感覚」というのは、事実誤認である。例えば、昨年4月27日に「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)で社員コメンテーターの玉川徹氏が新型コロナウイルスのPCR検査について、都は土日の行政検査を休んでいると受け取られる発言をして都側から強い抗議を受け、謝罪し訂正したことは記憶に新しい。

 それに先立つ1月21日には、同番組で玉川氏が箕面大滝に関する事実誤認の発言をしたことで、箕面市から抗議を受けている。

 今回の件は番組内で訂正されているとはいえ、誤った事実を伝えてしまったことは事実であり、その誤った事実認識に基づき都庁に抗議が殺到し、都庁が迷惑している(当該記事より)のだから訂正が十分に伝わっていないのは明らか。さらに訂正を求め正しい情報を伝えてほしいとするのは行政として当然である。このように行政機関がタレントに対して発言の訂正を求めることは前代未聞でなく、社会通念からして異常な感覚でもない。

 (3)は「行政機関による個人への抗議は言論封殺と取られかねず」としているが、誤った情報に対しての抗議は円滑な行政には必要であることが理解できていない。誤情報を伝えることと、都政を批判することは全く次元の異なる話。

 公の場で誤った情報を伝える行為は、表現の自由として保護されないと考えるべき。一方、竹山氏は日頃から都政に厳しい論評をしていたようであるが、そのような政治的主張に関しては表現の自由の保護範囲内であるのは疑いない。主張が的外れなものであっても、それは思想の自由市場の中で淘汰されていくべきもの(参照:丸山穂高議員事件で「思想の自由市場論」を否定する東京新聞伊藤詩織さん擁護の方へ「私は脅しに屈しない」ほか)。

 客観的に誤った事実を伝え、視聴者を錯誤に陥らせる行為が国民の権利として認められることはなく、それを訂正して国民に正しい情報を伝えることは行政機関として当然なすべきなのはメディアであれば理解してほしい。

■識者コメントが本文とズレている

 (4)は、コメンテーターである法大名誉教授の須藤春夫氏(メディア論)の話が的外れであることを指す。まず「行政機関が一個人の発言をとがめるなど、あってはならないこと。自由な言論を制限する由々しき事態です。」としているが、これは(3)で説明したように、客観的な事実の訂正を求めるのは行政機関として当然であることが理解できていない。誤った事実を伝えられることで、円滑な行政が阻害されるのであるから、行政機関は積極的に訂正を求めるべきで、それは「発言をとがめる」ことではない。

 さらに須藤氏は「首都を預かる行政機関なら、批判をキチンと受け止め、真摯に説明を尽くすべきでしょう」とするが、今回の東京都の抗議は竹山氏の政治的主張ではなく、事実誤認について訂正を求めているのである。本文もその点を問題としているのに、それとは異なる話題についてコメントしている。

■競馬記事以外は読む価値なし

 以上のように日刊ゲンダイの記事は一言で言えば「お粗末」と言うしかない。その主張に賛同する人がいてもいいが、最低限、客観的事実と政治主張の峻別をつけて報道しなければ、いずれ思想の自由市場の中で淘汰されていくことを覚悟した方がいい。

 個人的な感想を申せば、日刊ゲンダイは競馬以外の記事は読む価値がないと思っている。

5 thoughts on “ゲンダイ・クオリティ示すカンニング竹山氏報道

  1. アバター MR.CB より:

    》》ジャーナリスト松田様

    小生は約35年、土日の限定ではありますが日刊ゲンダイの愛読者であります。はっきり言いますと、競馬面しか読みませんので愛読者ではないのですけどね(笑)。
    周知の通り一面の見出しは、常に下世話で感情を煽るものがほとんどです。特に安倍政権時代は、毎日が罵詈雑言の紙面作りに徹底していました。一国のトップをまるで犯罪者以下に扱う記事の内容には、ある種の狂気さえ感じました。まあ、読者のほとんどはゲンダイの読み方を理解しているのでしょうが。
    その点、同じ夕刊紙でも東京スポーツは違いますね。一面でネッシーやUFO、雪男などを堂々と愉快に報じます。若い頃はキヨスクや売店で見つけた東スポの見出しに、何度となく笑顔と希望をもらったこともあります。
    とにかくタブロイド紙のメディアであっても、良識あるルールのもとで知的水準(中曽根さんではないけど)を感じることの出来る報道をお願いしたいです。

    1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

      >>MR.CB様

       コメントをありがとうございます。

       僕も昔は止まり木ブルースを読むのを楽しみにしていましたが、あの小説も後からグダグダになってしまいましたね。塩崎さんには取材でお世話になったことがあるのですが、(もうやめ時ですよ)といつも思っていました。

       ゲンダイの競馬は本当によく取材しています。熱心に厩舎を回っていいコメントを取っています。それから東スポも競馬はすごいですね。渡辺薫さんの馬を見る目は素晴らしいと思いましたし、人を見る目もすごかったです。僕が競馬担当を離れる時に渡辺さんは「松田、良かったな。お前、競馬、全然好きじゃないもんな(笑)」と言って送り出してくれました。

       つまり、夕刊紙は競馬欄だけ見ましょう、ということで(笑)。それ以外の部分はあまり読む価値がありませんよね。

      1. アバター MR.CB より:

        》》ジャーナリスト松田様

        東スポの渡辺薫さん。とても懐かしいですね。だいぶ以前に馬券でお世話になりました。知人に甘いものが好物だと聞いて、東京競馬場で差し入れしたことがあります。
        その時にレース後のパトロールフィルム(ビデオ)の見方を丁寧に教えて頂いた思い出が私の宝物です。真面目な姿勢に感動しました。
          返信は不要です。

      2. アバター 高山椎菜 より:

        松田様、おはようございます。
        ゲンダイは競馬だけではありませんよ。風俗のおねえさまの記事も参考になりますよ。逆にいえばそれくらいしか価値がないんですけどね。

        あともうご存じとは思いますが、ゲンダイは新聞協会に入れてもらえないハミゴでして・・・。

        1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

          >>高山椎菜様

           コメントをありがとうございます。

           ゲンダイの風俗記事は知りませんでした。正直、(あったかな?)というぐらいで、イメージがすごく薄いです。

           ゲンダイも一時期、「止まり木ブルース」が面白かったのですが、さすがに飽きました。「健坊、働け」と言いたくなりますね。

           しかし、高山様はよくゲンダイのことをご存知ですね。僕より詳しいですね。女性では稀有な存在と感じます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。