1面に「樺太」日刊スポーツ「ロシア領サハリン」事件
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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25日付けの産経新聞の一面に「樺太」の文字、何事かと思ったよ。センター試験で、日本政府が帰属未定としている南樺太について、「古くからロシア領と読み取れる」と疑義が出ているという問題である。地理ではムーミンの故郷がフィンランドかどうか議論が起きたばかりだが、センター試験の社会、ボロボロだな(笑)。
樺太の領有については幕末以前からの長い歴史があり、日露雑居地という、今では考えられないような状態だった時代もあり、千島樺太交換条約でロシア領となった後、日露戦争で南半分が日本領となった。第二次大戦末期にソ連軍が侵攻して占領。日本は南樺太の領有権を放棄したものの、最終的な帰属先は決定していないというのが公式の立場である。
これぐらいは高校生でも知っている、知らなければならない歴史だろう。戦後、日本の首相が樺太に足を踏み入れたのは2009年の麻生太郎首相が最初で、現時点では唯一の例である。この時、一部で「ロシアの南樺太領有に保証を与えるのでは?」という議論になった。
これが大まかな歴史的事実である。樺太の南半分を領有した経緯が「近代国家となった日本が、軍事的にアジア諸地域へ侵攻し、他国を植民地にしたり領有したりしたこと」の一部と言われれば、間違いではないかもしれない。千島樺太交換条約で樺太の領有権を放棄しており、それが日露戦争の勝利で南半分を取ったわけだから。しかし元は日本領で、それを取り戻したという意味もないわけではなく、日清戦争の結果、領有することとなった台湾とは性質が違うという主張も分からなくもない。そのあたりの違いを無視して一律に「侵攻の結果、領有」というのは、大学入試という極度に学術的な要素を持つ試験としては緻密さを欠いているように思う。
それでも僕がいた日刊スポーツ新聞社など、この比ではない。野球の原稿で「宗谷岬から、ロシア領のサハリン島の島影が見えた。年に数回しか見えないというサハリンの島影は・・」なんて原稿が出たから(爆笑)。僕がゲラ(下刷り)の段階で気づき、野球部の担当デスクが同期だったこともあり「これ、ダメだよ」と教えてあげて、世に出るのを防いだ。
(高校生レベルの知識もない、これがスポーツ新聞のレベルなんだな)と、脱力感に襲われたのをよく覚えている。
こうして樺太絡みでは不愉快なことが少なくない。しかし今の時代、「樺太」という文字を目にすることが少ないから、その点については今日の産経新聞の見出しは「いいものを見たな」という思いだね。