免職教師の叫び(11)心の闇

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 17年ぶりに石田郁子氏と会った札幌市の教師・鈴木浩氏(仮名)の、彼女との居酒屋でのやり取りの続きをお伝えする。石田氏に気持ち良く帰ってもらおうと、相手の話に迎合し、全て肯定する策に出た。その結果、責任を認めるよう求められ、後に自らを破滅的な状況に追い込む言質を取られることになる。そして事件の背後にあるとされる「心の闇」に触れる。

■取られた言質「全部認めるしかないんですよ」

 鈴木氏は全く身に覚えのない石田氏が中高生だった時の性的な関係、石田氏の妄想の産物であるとする関係について「はい、はい」という感じで全て認めた。石田氏はさらに(なぜ、そのようなことをしたのか)(今はどう思っているのか)を聞いてくる。

石田:…まあ色々分かりました。まあ結構先生も結構よく覚えてたので。

鈴木:忘れ…忘れられないでしょう? それは。

石田:うん。先生にとってはいい思い出みたいな感じですか?

鈴木:いや…いい思い出でした。

石田:はい。うん? 私ですか? 私は…今、あれは一体なんだったんだろうと考えてる途中ですね。まあ、先生はどうですか?

鈴木:いい思い出。

石田:先生にとってはいい思い出だったみたいな?

鈴木:いや…いい思い出でした。

石田:はい、なるほど。

鈴木:だから、あなたとのあった出来事は、あの…多分一生忘れないと思います。だからそういうのがあったから、あなたから電話来たとき、ものすごく驚いたんですよ。

石田:それは…嬉し恥ずかしってさっき言った。

鈴木:はい。だからきっと性的なね、話や、話をされて、たとえばね、「あの時にああいうことをされて」

石田:はい。

鈴木:「私はショックを受け」

石田:はい。

鈴木:「傷つき」

石田:はい。

鈴木:ね、「あなたのせいで人生が狂いました」って、もし、あなたに僕が言われたら

石田:はい。

鈴木:全部認めるしかないんですよ。そうなったら。

石田:はい。あ、先生はそいうふうに思ってた?

鈴木:そういうふうなのも少し覚悟して来た。

 後半部分が特にメディアに紹介され、鈴木氏が中学・高校の頃にわいせつな行為をしたことの証拠のように扱われているのは多くの方がご存知であろう。

 このやり取りは、後に石田氏が提起する訴訟の訴状(平成31年2月8日付け)で「原告(筆者註:石田氏)に対してわいせつ行為を行い、原告が高校生の頃に性交類似行為を行わせたこと…それぞれの具体的事実を挙げた上で認め、謝罪するとともに…自ら(筆者註:鈴木氏)の責任及び損害賠償債務があることを認めた。」と記載された。

 一方、鈴木氏は答弁書(同4月15日付け)で「『精神病院に通院中という人がここで暴れ始めたら、自分の身が危ない』…『原告の発言を否定したり、反論したりせずに、穏便に、原告の言い分をすべて認めて、この場を納める方法にする。…』などと考えて、ともかく原告の話を肯定することにして会話を進めた」と反論している。

 2人で店を出た後、鈴木氏は1人で3軒の居酒屋に入って飲酒している。飲みたかった訳ではない。「地下鉄で帰る」と言って歩き出した石田氏を目で追うと、駅とは反対の方向に歩き出したのを見て(真っ直ぐ家に帰ると、後を付けられるのではないか)と不安に感じたからである。各居酒屋で30分飲んで、入ってくる人をチェック。自分を追ってくる人がいないかを確認し、最終電車で自宅に戻ったそうである。

■物証なき裁判での(虚偽の)自白 

豊平川の河辺に座る鈴木浩氏(仮名、本人提供)

 石田氏が中学・高校時代にわいせつな行為をされたという物証は裁判では全く出されていない。鈴木氏に言わせれば、交際が始まったのは石田氏が大学2年の時からなので物証があるわけがない。

 裁判以外では、市教委に提出された鈴木氏が石田氏の両親に宛てて出したとされる手紙、フジテレビに出した石田氏が高校3年の頃に一緒に撮影したとされる写真がある。前者は鈴木氏はそのような手紙は書いていないとし、後者は石田氏が高校3年時に2人は会っていない。どちらも真正ではない疑いが濃い。

 それなのに鈴木氏がメディアからわいせつ教員呼ばわりされるのは、東京高裁が事実認定し、市教委が免職処分としたのに加え、この(虚偽の)自白があるためである。そう考えると(虚偽の)自白はあまりに軽率だったのではないか、あるいは、否定しているものの本当はわいせつな行為をしていたのではないかという声が起きても仕方がない。

 実際に連載第10回・そこまでまだ覚えていないでは「そういうリスクを考えなかったのでしょうか。失礼ながら、短絡的思考としか言いようがない。鈴木氏の年齢からいっても、この甘い判断は無いよなと感じます。」というコメントがついた。

 こうした声に鈴木氏は「今から考えればもっともなことだと思います。裁判、ネットによる虚偽の事実の拡散、マスコミからの誹謗中傷、免職という事態は、当時は考えもしなかったとはいえ、私の考えや行動が甘かったという指摘には反論できません。」と言う。

■石田氏の精神状態を疑っていた鈴木氏の思惑

 結果論になるが、このように迎合することなく、以前のように否定する、あるいは会うことを拒否していれば、今のような悲劇的な状況は避けられたかもしれない。しかし、可能性だけを言えば、さらに悲惨な状況になっていたかもしれない。まさに結果論である。

 鈴木氏がこのように卑屈なまでに相手に迎合したのは、上述の答弁書で示されたように石田氏の精神状態が正常ではないと感じていたからである。確かに、鈴木氏がこれまで明らかにしてきた石田氏の言動を見る限り、正常とは思えない部分が少なくない。

 別れ話をした時に全くありもしない妄想を口にしたこと、半狂乱になって叫んだと思ったら突然笑顔になる、その後も自宅の前で待ち伏せしたり、全く面識のない鈴木氏の恋人のアパートを突然訪問したり、さらに17年後に勤務先を探し当てて再会を迫ったり、病的な様子を感じさせる事実は枚挙にいとまがない。そうした過去の経緯に加え、再会時に石田氏から精神科でカウンセリングを受けていることを告げられたことで、鈴木氏は彼女の精神状態が少なくとも健康ではないことを確信したのである(参照:連載第9回・妄想と迎合)。

■岡田尊司氏著「パーソナリティ障害」の興味深い記述

岡田尊司著「パーソナリティ障害」(PHP研究所)

 精神科医の岡田尊司氏の著書「パーソナリティ障害」(PHP研究所)に興味深い記述がある。妄想性パーソナリティ障害の特徴として、以下のように説明したものである。なお、岡田氏はパーソナリティ障害を持つ人を「彼」と表記しており、混乱を避けるために「彼(女)」とした。

「(妄想性パーソナリティ障害の人は)いったん心を開き始めると、相手の存在は非常に特別なものとなる。彼(女)の中の幼い誇大自己は賦活され、相手が自分のためだけに存在するかのような思い込みに陥っていく。親切を好意と解釈し、恋愛妄想を膨らませていく場合もある。熱烈で、執拗な求愛が始まる。勝手な思い込みが、期待外れな反応に裏切られると、今度は逆恨みへと向かう。

 彼(女)の本性を知らずに交際を始めたりすれば、後で大変な思いをすることになる。『殺すぞ』『火をつけるぞ』と脅され、本当に実行に移されてしまうこともある。このタイプの人は、ねちっこく、執着傾向が強く、いっそう手強いストーカーになってしまう。」(同書p178)

 こうした妄想性パーソナリティ障害の人とトラブルになることの危険性を、同書はこう指摘する。

「心の中を打ち明けるような関係になったら最後、こじれたときが怖いのが、この妄想性パーソナリティ障害である。もし彼(女)から、経済的な利得を得ていたりすれば、間違いなく、すべての返還を要求されるだろう。恐らくそれだけではすなまい。彼(女)はあなたのものを根こそぎ奪い取ろうとするだろう。訴訟は避けられないかもしれない。

 彼(女)にとって訴訟など朝飯前のラジオ体操のようなもので、あなたにとっては、寿命を縮める出来事でも、彼(女)には活力源となるのだ。最悪の場合、命を付け狙われることになる。」(同書p186)

 この部分を鈴木氏に見せて感想を聞いたところ、「岡田先生の著書は読んだことがありませんが、石田と私の話を書いているように感じました。岡田先生が現状を予想していたかのようです」とのことであった。

 繰り返すが、石田氏がこの障害であるなどとは一言も言っていない。岡田氏の著書にある妄想性パーソナリティ障害の人の特徴が、鈴木氏が主張する石田氏の特徴と似ているという感想を持ち、鈴木氏はそれは知らなかったものの本能的に危険を回避する行動をとったということである。

■頭を下げて、許しを請うのが身のため

 岡田氏はこうした妄想性パーソナリティ障害の人にどのように対処すべきかを読者に示している。代表的な部分を挙げよう。

「そうした状況(筆者註:関係がこじれた状況)に立ち至ったら、下手に言い訳したり、彼(女)と議論して説得しようなどとは思わないほうがいい。ましてや、戦おうとは思わないことだ。彼(女)と互角の戦いができるのは、国家権力だけだ。あなたが、普通の庶民なら、頭を下げて、許しを請うのが身のためだ。」(同書p186)

 多くの不安を抱きつつ17年ぶりの再会に応じ、店を出てから3軒もはしごして尾行を防ごうと涙ぐましい努力をした鈴木氏を、一体誰が責めることができよう。石田氏に敢然と異を唱えていたら、今よりも悲惨な状況に陥ってしまったかもしれない。岡田氏はこうも書いている。

「(妄想性パーソナリティ障害の人には)法的な権力しか立ち向かうことはできない。無力な個人は、さっさと関わり合いを避けて、法権力に助けを求めることだ。国や行政は、こうした存在の性質を熟知した上で、国民を守ることが求められる。」(同書p187)

 しかし、鈴木氏は司法からも行政からも守られることはなかった。

第12回へ続く)

第10回に戻る)

第1回に戻る)

4 thoughts on “免職教師の叫び(11)心の闇

  1. アバター 名無しの子 より:

    はっきり言って、石田氏本人のためにも、真実を明らかにした方がいいのではないでしょうか。
    鈴木先生の言われることが真実なら、これほど深刻な症状を抱えていることを、彼女の主治医は理解しているのでしょうか。
    もはや、フェミ団体がしゃしゃり出てくるような案件ではないように思います。医者と警察の出番です。
    このまま、石田氏の発言を鵜呑みにして、鈴木先生を叩いて終わるだけなら、誰一人として、幸せにはなれません。
    そして今後、男性が担任や部活顧問だった場合、娘が担任や顧問を慕うことを、親は嫌がるようになるだろうし、また、教師の方でも、あまり親身になって相談などにのりたくないと思うようになるでしょう。たとえ、いじめなど、深刻な悩みであったとしても。
    面白おかしく、興味本位で報道するマスコミは、この問題を、ぜひ違う角度から報道してほしい!これは、性被害云々だけではなく、教師と生徒の信頼関係という、幅広い範囲での問題なのですから。

  2. アバター 真実 より:

    鈴木先生の発言が事実であるなら、しっかりした精神科医を複数裁判に呼ぶことはできなかったのでしょうか?精神科医を名乗る医師ほど、ピンキリです。鈴木先生の対応に甘さがあったことを今責めても仕方ないのですが、ここで諦めるという選択肢もありますが、同じような冤罪をマスコミは同様に煽りたて、人生を破壊します。それは、マスコミという名のもとの横暴であり、人間として許されないことです。私にも、同様の冤罪で苦しむ知人がいます。教師や上司からの性被害は許されませんが、マスコミに報道された破廉恥な自伝は同じ女性として違和感以外ありません。私の関わる事件について、マスコミに知人と通じて証拠の有無を聞いたりしましたが、物証はメールだけでした。情報公開請求で個人的に資料を収集しています。裁判記録も非開示になっているものも、諦めず請求してください。私は、鈴木先生を応援するのではなく、真実を応援しています。そして、マスコミも真実を伝えてください。

  3. アバター 月の桂 より:

    岡田尊司氏の著書を取り上げて下さり、有り難うございます!!
    岡田先生の著書は、本棚に沢山並べています。見識の高さに加え、先生のシャープな文章が好きで、「パーソナリティ障害」も読みました。

    精神疾患が疑われる場合、早急に専門医へ繋げることが重要なのですが、病識が無い人間に受診を強いることは極めて困難なことです。他人や自分を傷つける可能性が認められる場合は強制も出来ましょうが、普通に社会生活を送れる状態ならば、本人の意思に反して受診させるのは極めて難しいと思われます。

    石田氏は、別な裁判を傍聴したことで不安定になり、精神科でのカウンセリングを開始したとのこと。精神科受診は、これが初めてだったとすれば、病的な状況を長く放置していたことになりますね。(>_<)

    多くの人は、その事件に特別関心が無い限り、掘り下げて内容を追うことはしません。報道されたことをもって、鈴木氏=ワイセツ教員で完結です。
    人は、自分の目と耳で確認したことは信じるものですし、秘密録音がそれを揺るぎないものにしました。加えて、その行動に非合理を感じた場合、弁明に耳を貸さなくなります。

    今後、冤罪であることが証明されたとしても、大々的に報道されない限り、人々の記憶が書き換えられることはないでしょう。
    松田さんのように、真実を伝えようと尽力してくれる記者は稀です。
    報道に関わる方々には、報道被害者の救済をする義務もあるのだと自覚して頂きたい。

    世の中には一定数、無意識に災いを引き寄せてしまうタイプの人がいるように感じます。善良な市民ではあるのですが、自己を過信し、危険に対する認識の浅いタイプです。
    明日は我が身と自戒します。

  4. アバター 通りすがり より:

    こういうケースは往々にして原告側の精神鑑定は行われませんよね。
    クロ現で取り上げられた時に他のケースも見ましたが、まず告発側の言動から精神状態が正常かどうか図りかねると言わざるを得ないものがあったように思いました。

    本件鈴木氏の対応も年齢相応のものであるとはとても思えないほど脇が甘く、「命あっての物種」を善しとするならば現状を受け入れるしかないようにも思えます。

    白黒つけるつもりがお有りならば原告側の精神鑑定は必須かと思われますが、原告が被告から受けたPTSDが原因でそうなった、と診断されたらそれ以上踏み込めなくなります。
    引くも地獄なら進むのも現状からの更なる悪化も覚悟しなければならず、やはり厳しい状態であることは明白ですね。

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