免職教師の叫び(38)もはや茶番「山頂の口淫」

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 1994年夏、山頂付近の岩場でわいせつな行為が行われたという塩谷丸山(小樽市)を訪れたレポートの続編をお届けする。当時高校1年生だった石田郁子氏(写真家)が主張するわいせつ行為が行われたとする現場はゴツゴツした岩が転がる場所で、落ち着いて行為を行うには極めて困難と思われる場所であった。果たしてこのような場所で言われるような行為があったのか考察する。

■わいせつ行為の舞台とされた場所

塩谷丸山の山頂

  前回で示した標高629mの塩谷丸山への登山と聞いて、多くの人が抱くであろうイメージについて(1)~(3)については、それが誤りであることは指摘した。今回は(4)についての考察である。

(4)山頂付近の岩場では、口淫をするような場所がある。(参考・連載(37)山頂付近で口淫の信憑性

 登山道の入口で入山届を書いてからおよそ80分。整備されていないため登るのも一苦労の登山道を上がったせいで息が切れ、全身汗まみれになりながら、ようやく辿り着いた山頂は拍子抜けするほど簡素なものであった。「塩谷丸山 629m」と記された木製の小さな看板と、八角柱で上部が円形の方位を示すオブジェが置かれているだけ。広さは8~12畳(約16.6~21.9平方m)ほどか。ごく狭いスペースで、地面には大きな岩がゴロゴロと転がっている。

 無粋と言えるような光景にはベンチなど休む場所はなく、登山者は岩に直接腰掛けるか、あるいは八角柱のオブジェに腰を下ろすしかない。そのオブジェは小樽山岳連盟が寄贈し、2012年に設置とされているため、石田氏が登ったとする1994年には存在していない。

 前回同様、石田氏の主張を示そう。鈴木氏と札幌市教委を相手に損害賠償を求めた訴訟で提出された訴状には、以下のように記述されている。

頂上付近の岩場にしゃがみ込む筆者

「1994年(平成6)年8月2日にも、小樽市にて山登りに誘い、頂上近くの岩場で、被告●●(鈴木氏の本名、筆者註)は原告(石田氏のこと、筆者註)に対し、被告●●自身の性器を口にくわえるように指示し、口腔性交を行った。」

 通常の感覚であれば、石田氏の言う「頂上近くの岩場」は、この山頂付近に広がる岩場と判断されるであろう。その岩場がどのようなものかは写真を見ていただきたい。様々な大きさの岩、最大のもので長径が50cmを超えるようなものが不揃いに、転がっている。

 この場所で口淫を行うことを想像していただきたい。どのような体勢で行うかと考えれば、この岩場に男性が横たわることは考えられず、男性が立ち、女性が膝をつく姿勢が自然である。そこで実際に筆者がしゃがみこめそうな場所を選んで膝をついてみた。すると、思わずバランスを崩し、不安定な姿勢で岩の間に足を入れる形になった。この姿勢を行為の間(短くて3分程度か)保つのはかなり難しいと感じられた。

 写真で筆者が笑みを浮かべているのは「この姿勢で、できるわけないだろう」といった趣旨のことを口にしながら失笑したせい。女性が岩に腰掛け、男性がその直前に立つ形も可能かもしれない。しかし、岩の上に3分程度座り、上半身だけを動かして口腔”性交”を行えば、臀部が痛くなるのは明らかで、中腰の姿勢を保つのも辛く、そのようなアクロバットのような性的行為を高校1年の女子がこなせるとも思えない。しかも、山頂到着時に汗まみれであったに違いない男性器を口に入れるのである(参考・連載(37)山頂付近で口淫の信憑性)。

■もう1つの「頂上付近の岩場」 

塩谷丸山の見晴台

 このように「頂上付近の岩場」である山頂で口淫をすることは、岩場の状況を考えると現実的ではない。そうなると、石田氏が示した場所は別にあるのではないかという疑問も生じる。実は、頂上の近くにもう1箇所、岩場が存在する。それが山頂からおよそ60m離れた「見晴台」である。

 塩谷丸山を紹介するサイトなどを見ると、その多くが見晴台の景色を掲載している。連なる山や下に広がる町の全景、石狩湾を一望する絶景が楽しめるポイントで、登山者は通常、この場所を目的に訪れると言っていい。祠(ほこら)と、海が見えることから豊漁と安全を祈願したのか、錨(いかり)が鎮座しており、記念撮影をするにも絶好の地点である。

 見晴台は頂上よりはるかに広い場所で、多くの人が滞留すると思われる。そして山頂以上の剥き出しの岩が折り重なっているのは写真を見ての通り。この場所も「頂上近くの岩場」と考えることは可能であろうが、そこで口淫をすることは岩場が山頂付近より険しいという状況、滞留者が多いという状況を考えても山頂よりも困難と言えるであろう。

■わいせつ行為を見て誰も何も言わない?

 ここで見晴台と山頂の位置関係を確認しておこう。イメージ図を作成したので、ご覧になっていただきたい。塩谷丸山の登山道は2つあるが、ほとんどの登山者はJR塩谷駅の方向から入る登山道を利用する。9割ほどであるとするサイトも存在する。

塩谷丸山頂上付近のイメージ図

 つまり、多くの登山者はまず山頂に着き、そこから60m先の見晴台を目指すことになる。そして、見晴台に滞留した登山者は、下山を開始する時に山頂の横の登山道を通ることになる。もちろん、逆の登山道から入ってきた登山者は見晴台を通り、60m先の山頂を目指すことになる。

 いずれにせよ、山頂で3分間口淫をしている間に、その横を山頂を目指す人、見晴台を目指す人、下山する人が通ることになる。山頂での口淫は公然わいせつ罪(刑法174条)が成立し、他人が見れば、眉を顰めるだけでなく「みっともないことはやめろ」「別の場所でやれ」などと怒鳴りつけてくることも予想される。

 そのような状況が容易に想像がつき、中学教師である鈴木氏がわざわざそのようなリスクを冒してまで行為を指示するというのも考えにくい。

 塩谷丸山にはほとんど登山者などいないのではないか、という考えもある。確かに筆者が登った8月20日(土)には下山時(14:07)、入山届に記されている入山者は3組7名しかいなかった。これは当日の天候が曇りと雨の予報で雷注意報も出されていたことが影響したのかもしれない。

 しかし、前日8月19日(金)は8:45から13:15までの4時間30分の間に27組51人が入山届に記載している。以前、小樽山岳連盟に電話で問い合わせところ「入山届を記載せずに入山する人も存在する」(担当者)とのことで、少なくとも51人が4時間30分の間に入山していたのは間違いない。石田氏が登ったとする1994年8月2日(火)のデータは残っていないが、天候は曇り一時雨(ただし降水量は0mm、気象庁HP・過去の気象データより)で、一定数の人数が滞留していた可能性は否定できない。

■わいせつ行為を再現してみると…

塩谷丸山の遠景(撮影・松田隆)

 前回の連載でも摘示した事実を加え、ここまで明らかになったことから石田氏の言うわいせつな行為を再現してみる。

 昼過ぎまで札幌市中央区の「さいとうギャラリー」で友人と話をしていた鈴木氏は、その後、石田氏と会って登山することを噯(おくび)にも出さず、石田氏と待ち合わせ2時間近くかけて塩谷丸山へ向かう。

 スポーツのように激しく発汗する運動と言える登山をこなした後で、頂上近くの岩場で鈴木氏は汗まみれの男性器を出して高校1年生の石田氏に口淫を指示する。

 性的経験の少ない女子高生は足場の悪い中、不安定な姿勢のまま一定の時間(3分程度か)、男性器を口に入れて口腔性交をする。その間、多くの人が滞留していると思われる見晴台や、山頂や見晴台を目指す登山者から見られることはなく、見られたとしても「やめろ」とも言われない。

 この出来の悪い成人向けの映画のようなシチュエーションを、鈴木氏を免職させるため、損害賠償を求めるため、石田氏は札幌市教委や東京地裁に訴え出たのである。結論を申せば、上記(4)「山頂付近の岩場で口淫するような場所がある」についても、実際に取材してみた感覚ではあり得ない。

 現在、鈴木氏は免職処分の取り消しを求めて札幌市人事委員会に審査請求をしている。あくまでも免職が妥当であるとする市教委には、一度、塩谷丸山に登ることをお勧めする。そうすれば石田氏が脳内で組み立てたと思われる妄想が現実にあり得るかどうか、今までと違う考えもできるというもの。

 そうせずに、書類だけ見てそれを事実と判断する考えを変えないのであれば、石田氏の言い分と同様、市教委の判断とそれに基づく処分は茶番と言うしかない。

(次回最終回

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第1回に戻る)

"免職教師の叫び(38)もはや茶番「山頂の口淫」"に6件のコメントがあります

  1. 通りすがり より:

    山頂のパノラマ風景で仁王立ちフ〇ラですかw
    何から何までAVみたいな主張ですねぇ。AVだったらちゃんと現場を下見して足場などについてはそれなりに小道具を用いるなど対策しそうなものですが。
    これまでの記事から察するに、石田氏は上京してから性知識が豊富になられたと推測できますし、そういう辺りから発生した妄想という事でしょうか。

    1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

       629mの山を登り、石田氏の主張がいかに現実離れしているかを実感しました。

       まずはその場に行ってみないといけませんし、行ってこそ分かることがあると思います。現場百回、これが基本と改めて思いました。それから、札幌土産の白い恋人のおいしさも再認識です(笑

      1. 通りすがり より:

        九州の某大学の件といい本件といい、時間もお金もかかるのにわざわざ現場を取材された松田さんには頭が下がります。

        本件は民事裁判ということで「現場百回」を実践するのは警察ではありませんが、本来であれば本件を担当する裁判官が行うべきことでしょう。
        昔の2時間もののサスペンスドラマに登場するような熱血裁判官でもなければそこまでしないでしょうけどね。
        しかしそこまでしないと辿り着けない真実がある、ということは疑う余地もない。

        足場が悪かろうと暑かろうとクサかろうと、行為自体はやろうと思えばできないことではないかも知れませんが、衆人環視をものともせず行為に至れるかといえば普通の感覚の人間であれば難度が高いことでしょう。
        山頂でそういった行為を強要されたという証言も周囲に先客や後続の登山者がいないことを前提にしているのだと思いますが、意外に利用者が多いスポットであることも石田氏の想定外だったのではないでしょうか。
        とりあえず別の機会でも現場に訪れたことがあるのであれば現場がどういう所かはわかるし、そういう行為が可能かどうかは自明の理。
        人ふたりが隠れられる場所くらいあるだろうと高を括っていたのであれば、その目論見も崩れたということですね。

        ありもしない事実を組み立てるのは極めて困難なことであり、ましてやそのフィクションによって他人を陥れようともなれば、どれだけ綿密に企てないといけないかよくわかったことでしょう。
        せめて現場を山ではなく、伊藤詩織のように密室に設定しておくべきでした。それも鈴木氏の自宅を除いて。

        こうして一つ一つ石田氏の証言が覆されていくことで鈴木氏(仮)の復職が叶う日が来ることを願っています。

  2. MR.CB より:

    》》ジャーナリスト松田様

    ご無沙汰しております。

    松田さんの相変わらずの取材力と、わかりやすい説得力のある記事、さすがです。読みながら小生の様なリテラシーがない爺さんでも、石田氏の主張の怪しさが腑に落ちました。
    確かに性欲には個人差がありますから断定は出来ないまでも、石田氏の訴えに矛盾と疑問を抱くには十分すぎる検証内容だと思います。

    これからも松田さんの取材を楽しみにしておりますが、くれぐれもご自身の健康にもよりご配慮してくださいね。

    PS 
    もちろん海外競馬の記事もしっかり読まさせて頂きました。

    1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

       お久しぶりです。数少ない海外競馬記事のユーザー・MR.CB様、ありがとうございます(笑)

       今年は馬場次第ですが、日本馬が凱旋門賞を勝つ可能性があるのではないかと思っています。今年はバーイード以外の欧州勢は大したことがないというのは感じますので。もっとも、ステイフーリッシュが2〜4着ぐらいで日本馬最先着、「マジか〜」みたいな結果もありそうですが(笑)。

       それはともかく、8月末に実際に塩谷丸山に登ってみて、石田氏の主張が無理筋であることを実感しました。行ってよかったと思いましたし、同時に現実味のない証言などで鈴木浩氏が失職させられたのかと思うと怒りが込み上げてきました。これが日本社会の現実、そういう部分に異議を唱え続けないといけないと感じています。

  3. 山上の昼食 より:

    「麻布食品」の件で松田さんの記事を読みました。第5回で最終回と書いてありました。残念です。その件で、百尚樹さんのYoutube動画を見ております。30日の動画でしたか、31日だたかな、小西議員自らが「麻布食品」と取引している政治団体について、自民党に11、他党に15以上の団体があることを表明したということを、百田さんが動画で述べていましたがこれには驚きました。小西はこれをどこで調べたのでしょう?また、なぜ、このことを自らしゃべったのか、不思議ですね。

    山中での性愛の件ですが、実は、わたしも経験があります。不倫の相手とよく山に登っていました。ある山に登って、下山中に懇願してフェラと手淫で抜いてもらったことがあります。ここに出てくる山より300mほど高い山でした。登山客数はおそらく5~6倍はある山です。時間があれば下山してラブホに行くこともできるのですが、時間的に無理でしたから、途中でお願いしたことがあります。「バカね、もう、なんてこと言い出すのよ?人に見られたらどうするのよ」と詰りながらもしてくれました。あの頃はいい性愛を交換し合っていました。欲求というのはどうしようもないもので、射精の快感を想像したらどうしようもなくなるものです。しばらく勃起した状態で歩いていましたから、咥えてもらって、掌で包んでこすってもらうと射精までそう時間はかかりません。5分もかからなかったと思います。45過ぎの頃でした。その後も順調に50過ぎまで関係は続いていました。お互いの子供がそれぞれ結婚する時期になったこともあり、関係を断ちましたが、わたしにとってはいい女でした。

    わたしね、この件を読みながら、女が19~21の頃、男が30後半のころ2年弱の付き合いがあったと書いてありました。40の頃、女が20というのは、それこそ魅力あるsexができていたろうと思いますよ。そして離反。この離反の仕方こそがその核心だと思います。女の恨みですよ。おそらく女から再度の付き合いの申し入れがあったと思います。それを冷たくあしらったことと想像します。それへの復讐だと思います。棄てられたことへの報復に女が立ち上がったのだと思います。

    男と女の関係というのは、性愛の在り方が肝心だと思います。好きでないと勃起しないようになります。好きという感情がお互いを求めると思うのです。快楽の頂点に上り詰めて墜落していくときの感覚に愛を実感するように思います。欲求が先にあるのではなく、好きという感情が欲求を振るい起こさせるように思うのです。

    男と女の離反の始まりを男も女も肌で感じ取っていると思うのです。話す言葉や仕草とか、性愛の大きさの減退とか不満というか、おそらくsexの内容にその変化を男も女も肌で身体で感じ取っていると思います。

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