免職教師の叫び(終)棄却裁決 舞台は札幌地裁へ

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 30年近く前に生徒にわいせつな行為をしたとして2021年1月28日に免職された鈴木浩氏(仮名)が事実無根であるなどとして復職を求めていた審査請求は、棄却裁決がなされた。札幌市人事委員会が3月7日付けで札幌市教委の処分(懲戒免職)を認めたものである。鈴木氏は札幌地裁に処分の取り消しを求める訴訟を提起する予定で、復職を求める戦いは最終章に入る。

■請求を棄却する裁決

鈴木浩氏(仮名)の復職を目指す戦いは司法の場へ

  3月7日、鈴木氏は担当の弁護士から電話連絡を受け、弁護士事務所へ駆けつけた。内容は審査請求が認められず、棄却裁決がなされたというもので、その裁決書を受け取った。鈴木氏によって2021年3月1日に請求された事案は2年の時を経て、ある意味予想外と言えるゼロ回答という結末となった。

 鈴木氏が求めた審査請求の理由は、主位的には、処分事由(わいせつ行為をしたという事実)が存在しないにもかかわらず、市教委が誤認して認定したもので、裁量権の逸脱・濫用であって、違法・不当なものである、とするもの。

 予備的理由としては、①(免職とする際に行われるべき)告知、聴聞・弁明の機会の付与原則に違反し、②当初、市教委は関連する訴訟において鈴木氏と共同被告として、わいせつ行為がされたとする元生徒(写真家の石田郁子氏)の主張する事由の存在を否定していたものが、突如、態度を豹変させて事由の存在を認めて処分したもので、信義誠実の原則に違反する、それらは裁量権の逸脱・濫用であって、違法・不当なものであるというもの。

 これら3つの理由を全て認めず、鈴木氏の請求を棄却する裁決がなされたのである。

■悪魔の証明を求める理不尽さ

鈴木浩氏が描いた石田郁子氏

 当サイトでは、石田氏の主張するわいせつな行為はすべて虚偽であり、それを示す証言(連載(12)CAN YOU CELEBRATE?)や、証拠(連載(19)影なき闇の不在証明)を示してきたが、そうした点は、裁決では全く言及がない。

 鈴木氏が2015年12月3日、石田氏の求めに応じて札幌市内の居酒屋で会って、石田氏が言うままにわいせつな行為が行われたことを認める発言をしたことを根拠に、そのような事実があったと認めているのである。

 この時、鈴木氏は石田氏の精神状態が少なくとも健康ではないことを確信し、相手を興奮させると何をされるか分からないという恐怖を感じ(実際に直前に女性から硫酸をかけられる事件がニュースで伝えられている)、『気持ちよく帰ってもらうしかないな』と思って迎合したと、説明していた。

 しかし、そのような主張は一切認められなかった。

 「危害を加えられることを回避するのであれば、まずは会うことを避けようとするのが通常の行動であると考えられるところ、録音音声によれば、請求人(筆者注・鈴木氏)は…むしろ進んで面談に応じていると認められるのであって、請求人の『本件女性の希望を断ると、本件女性が、請求人宅を訪れたり、請求人、あるいは、家族に対して危害を及ぼすのではないかと危惧したから』という主張は、採用し難い。」

 このような理由で居酒屋での会話の真実性を否定する鈴木氏の主張を認めなかった。この点はおかしな話で、勤め先の中学校に電話をかけてきた石田氏からの面談の要求を断れば、直接会いにくる、さらにつきまといなどの被害が予想されるため、それを避けるために面談に応じるのはリスク回避としては間違っていない。実際に、以前、そのような被害に遭っているという事実が無視されており、恣意的な判断のように思える。

 結局、人事委員会は居酒屋での会話で鈴木氏が行為の存在を認めていることを唯一の拠り所にして処分に違法性、不当性はないとしていると言っても過言ではない。石田氏が主張した虚偽の事実を否定する鈴木氏側の主張は、その事実を完全には否定しきれていないという論理構成となっている。「教育委員会は自分たちに都合の悪い録音データは存在しないとか、都合の悪い部分だけ書類を提出しないなど、不誠実極まりない」と鈴木氏は怒りを露にし、その市教委の言い分をほぼ100%認める裁決となっていることに不信感を募らせる。

 この裁決を読む限り、石田氏の主張した事実が存在しないことを証明しない限り、鈴木氏の復職は認められないことになる。いわゆる「悪魔の証明」を求めているに等しい。

 これが刑事事件であれば、検察側が石田氏の主張する事実を立証する義務がある。当サイトが指摘したように石田氏の主張のほとんどは客観的な事実に反するため、検察側は起訴しないのは明らか。そう考えたから市教委も石田氏の訴えに耳を貸さず、鈴木氏を処分しなかったのである。

 東京高裁は事実を認定したが、それは理由中の判断であって、既判力が及ばない部分で処分者を法的に拘束しないはず。そして、鈴木氏は勝訴しているために、その部分を不服と思っても上告して争うことはできないのである。反撃の機会がないまま不利な認定をされ、それを根拠に免職されているのであるから、たまったものではない。

■真実追求は司法の場で

 当サイトではこれまで石田氏の主張するわいせつ行為が客観的な事実と異なることを示し、また、その点を石田氏に取材を通じて明らかにするように求めてきたが、何ら有効な回答は得られていない。その意味で免職の理由とされた事実の存在を懐疑的に見ている。

 しかし、審査請求は、行政上の救済手続きであり、中心となるのは処分者側の手続きに瑕疵がなかったか、処分は行政上の裁量権の範囲にあったかという部分。被害を受けたとする者の主張が事実であるかどうか、真実追求は司法の分野という棲み分けがあると言っていい。

 実際、この審査請求は市教委と鈴木氏という対立構造であり、石田氏は全く関与していない。鈴木氏は人事委員会の関係者から「真実、何があったのかは我々は解明できるものではない」という話を聞かされている。

 とはいえ、被害が事実であったかどうかは、審査にかかる部分ではあるため、ある程度は立ち入らざるを得ない。そこは居酒屋での会話に信憑性があるという点で、そのような被害は事実であると認定しているのである。

 つまり、唯一の証拠は自白であり、自白があるから、鈴木氏のわいせつな行為はあったと断じて免職という”有罪判決”に等しい裁決をしているのである。法律を学んだ人なら分かるであろうが、日本国憲法38条3項は、以下のように規定している。

【日本国憲法38条】(自己に不利益な供述、自白の証拠能力)

3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

 刑事事件なら、とても有罪にできないケースで、鈴木氏は事実上の有罪とされたのである。

■担当の弁護士選びから

  審査請求は行政上の救済措置であり、鈴木氏の主張からすれば司法でこそ救済されるべき事案と言える。ここまで鈴木氏を担当してくれた弁護士は行政上の救済等が得意分野で「訴訟になっても、これまでと同じ主張しかできません。他の弁護士さんに頼んだ方がいいでしょう」と事実上の辞任を申し出ている。

 そのため、鈴木氏は早急に弁護士を決めて、札幌地裁に取消訴訟(行政事件訴訟法3条2号)を提起することになる。費用も時間もかかる戦いを前に、現実を受け入れて別の人生を歩み出す人は多いとされる。

札幌市教委の入ったビル

 鈴木氏も「今の心境としては2度目の免職処分を言い渡された気分です。前回の時と同様、暗黒が広がっていくようです。」とさすがにショックの色は隠せない。

 しかし、新たな戦いに向けて動き出している。

 「以前と異なるのは『飲みに行くか』『大丈夫か』と友人から連絡をもらうなど、周りの皆さんに支えていただいている点です。私は石田が言うようなわいせつな行為はしていませんし、免職される理由などありません。これは自分や家族の名誉を守るための戦いです。絶対に諦めません。周囲の人に支えられている今なら、自分を見失わずやっていけそうです。」と前を向く。

■真実追求に終わりはない

 当サイトでは事件の真相に迫るべく、ここまで38回の長期連載を組んでお伝えしてきた。裁決が出たことで、ここはひとまず、連載を終了することとする。

 鈴木氏の名誉を守る戦いは、司法の場に舞台を移して続く。当サイトでは、その戦いを皆さんにお伝えしていく考えで、近日中にタイトルを変えて、新たな連載をスタートする。

 真実追求に終わりはない。どこまでも真相を追い続けていくことを約束して、39回の連載をひとまず終えることとする。

(終わり)

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"免職教師の叫び(終)棄却裁決 舞台は札幌地裁へ"に2件のコメントがあります

  1. ナナシ より:

    某議員と某食品の記事からこちらのサイトに辿り着き、この連載を第一回から全てしっかり読みました。

    今この瞬間も、こうして新しい読者が生まれて、当連載で書かれてきた内容が誰かに届いていますとだけ、伝えたくて。

  2. 匿名 より:

    先生、負けないでください!先生から多くの事を学ばせていただいた大学の後輩であり、現職教員として応援しています!!!

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