靖国神社落書き 中国動画投稿者”鉄頭” 前科あり

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 靖国神社にある石柱に赤い文字で落書きされていることが1日午前に発見された。通報を受けた警視庁では捜査が進められ、マスメディアも次々と報じている。SNSではマスメディアの報道より遥かに進んでおり、容疑者は中国の動画投稿者の”铁头(鉄頭)”と特定され、中国で過去に賭博場開帳、違法な監禁で2年以上懲役刑に服していたという情報が中国のサイトでは明らかにされている。

◾️中国のサイトで次々と動画投稿

動画投稿サイトbilibili画面から作成

 事件は1日午前6時過ぎに靖国神社の入口にある石柱に赤い文字で「Toilet」と書かれているのを通行人が見つけて警察に通報したことで明らかになった。警視庁では器物損壊容疑で捜査を進めている。また、中国のSNSでは落書きをした時のものと思われる動画が出回っていると報じられている(テレ朝news・靖国神社 石柱にスプレーで落書き SNSに動画も)。

 1日の時点では事件の概要のみで、2日午前6時過ぎにテレビ朝日がこの件に関して中国のSNSでこの問題に関する動画がアップされていることを伝えた。とはいえ、動画投稿に関しては「中国のSNSなどでは何者かが、同じ柱にスプレーで落書きをする動画が出回っているということです。」と伝聞形式で伝えたのみ。

 実際に中国の動画投稿サイト「bilibili」を見ると、2日午前の段階で次から次へと関連の動画がアップされている。

 中でも決定的な証拠となると思われるのが原題は中国語の「靖国神社の石柱に『トイレ』と落書きされ尿をかけられる、作者の第一視点から!」と題する動画。ここでは実行犯と思われる中年男性が自分は「iron head」(鉄頭、中国簡体字で”铁头”)と自己紹介。石柱の台に上がり、放尿していると見られるシーンが映し出され、その後、ズボンのポケットからスプレーを取り出し、石柱に赤い文字で「Toilet」と書いている(bilibili・靖国神社石柱被涂写厕所,并撒尿,作者第一视角!)。元の動画は動画投稿サイト「小紅書」の云尚という名のアカウントからアップされたものと思われる。

 自身が石柱に放尿し、(この場所はトイレだ)という意味で「Toilet」と書いたと思われ、石柱にそのような単語を書いた理由もこの行為から明らかになった。この動画には「iron head」がサングラスを外して顔をはっきりと示すシーンもあり、犯行の発覚から1日で容疑者の顔やその背景が明らかになったと言っていい。

◾️铁头36歳未婚、前科あり

鉄頭の動画画面から

 铁头とは一体、何者なのか。米国の掲示板のredditで、r/runto Japanというアカウントが、その詳細なプロフィールを記している。その信頼性はともかく、書かれている内容について紹介する。

 铁头は本名が董光明で、1987年12月1日生まれの36歳、未婚。戸籍地は湖南省郴州市で、同地の出身と思われ、居所は上海との登録がある。2006年に浙江越秀外国語学院に入学、2010年6月に卒業している。

 特筆すべき事項として「若い頃、賭博場の開設と違法監禁で…刑務所に入れられたが、復帰後は悪を懲らしめ善を広める活動を行い、海鮮市場での偽物摘発や新東方の補習授業を告発した(後述)。売春を自白した後、全ネットアカウントが一瞬で凍結された。」とある。さらにここでは今回の事件に関連して早くもその事実が「小粉紅(中国の愛国主義者)の感情を煽るために日本の靖国神社に行き、『toilet』と書いて尿をかけた。」と書き込まれている(reddit内のアカウントr/runto Japan・铁头新鲜出炉的开盒信息,麻烦诸位发给正在通缉他的日本太君)。

 前科の部分の詳細については、中国の大手サイト「新浪新聞」が1月に報じている。中国裁判文書ネットが2015年11月に公開した湖南省郴州市中級人民法院の二審刑事判決書によると「賭博場開帳罪で3年3か月の懲役と4万元(約88万円)の罰金、違法拘禁罪で6か月の懲役を言い渡され、合計で3年6か月の懲役と4万元の罰金が科された。2016年12月の減刑判決書によると、董某明は刑期中に規則を守り、教育改造を受け、悔改の姿勢を示したため、1年の減刑が認められ、刑期は2015年1月26日から2017年5月23日までとなった。」と明記されている(新浪新聞・网红“铁头”回应直播间自曝嫖娼经历)。

 なお、新浪新聞は铁头の職業を「広州で衣料品ビジネスに従事」としている。仕事のかたわらSNSで情報発信し、2024年1月の時点でTik Tokのフォロワー数は515万人余、2000万のいいねを獲得していたと報じている。

 上述の「海鮮市場での偽物摘発」に関しては、2023年7月に海鮮市場で購入した海鮮を自前の秤で量り直して商人が不正な取引をしていることを見つけて政府のホットラインに通報したこと、「新東方の補習授業を告発」については、「新東方補習中心」という教育施設が中学生に対して有料の学科教育を行っていたことを暴露したと説明している。

◾️鉄頭の勧善懲悪?

 上記のように「铁头」は正しくは「铁头惩恶扬善(鉄頭の勧善懲悪)」は暴露系、あるいは迷惑系動画投稿者として活動を続けていたが、最終的に抖音(Douyin)、快手(Kuaishou)、微博(Weibo)などのプラットフォームで全てアカウントが凍結された。

 そのきっかけは今年1月12日のライブ配信中にわいせつ行為を自白し(買春であったとされる)、ユーザーから通報されたこと。2月11日の時点で澎湃新聞の記者が確認したところ、「铁头惩恶扬善」のアカウントは抖音プラットフォームで518万人のフォロワーを持っていたが「アカウントが凍結された」と表示されていたという。また、快手、微博でも同様の状態となっていたと報じられた(捜狐・网红“铁头惩恶扬善”遭全网封禁,曾在直播间里自曝涉黄经历 )。

 こうした経緯を見ると、2010年に浙江越秀外国語学院を卒業後に、違法賭博などに関与して2015年に刑務所に入り、2017年5月に出所。その後、広州で衣料品ビジネスに従事しながら動画投稿を続け、バズることもあったが、2024年2月にはTik Tokの抖音など大手SNSから締め出された。その後、小紅書という動画サイトで自らの活動をアップする中で、6月1日、今回の事件を起こしたという流れが推認できる。あくまでもネット上だけの情報である。

◾️出国させない努力を

靖国神社と石柱(2020年撮影・松田隆)

 铁头こと董光明が6月1日犯行を行ったとして、その日のうちに出国している可能性はある。この場合は事件の解決が難しくなる。2011年に中国人が靖国神社に放火、その後、ソウルの日本大使館に火炎瓶を投げ込み、懲役10か月となった。

 日本政府は韓国政府に身柄の引き渡しを求めたが、ソウル高裁が引き渡しを拒否する決定を行い、結局、劉強という名の容疑者は日本で刑罰を受けることはなかった(人民網日本版・靖国神社放火容疑の中国人が韓国で釈放 韓国「大義のための犯罪」)。現在も動画投稿サイトで情報発信をしており、反日の人物として一定の人気を誇るようである。今回の铁头の事件を知ると、ライブチャットで「敬礼」をしたと伝えられている。

 もし、铁头を出国させるようなことがあれば、逮捕は不可能となるであろう。出入国管理を厳重にし、間違っても铁头を出国させてはならない。重要参考人として事情聴取から逮捕、起訴、有罪としなければ同種の事件が繰り返されかねない。捜査当局の迅速な動きが期待される。

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