法務省「必要あれば対応」裁判官のラジオ発言

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 仙台高裁の岡口基一判事が5月13日にラジオ番組に出演、森まさこ法相の名誉を毀損する発言をしたことについて同18日、法務省と仙台高裁に見解を聞いた。双方とも発言内容を確認していなかったが、法務省では「名誉毀損ではないか」という質問に対し、必要があれば対処する旨の回答をした。

■岡口基一裁判官による名誉毀損罪成立か

岡口基一判事が出演した「角田龍平の蛤御門のヘン」(KBS京都HPから)

 岡口判事は5月13日のKBS京都の「角田龍平の蛤御門のヘン」に出演し、パーソナリティーの角田龍平氏と検察庁法改正案について40分近く話をした。そこでの問題点は以下の2点。

(1)ラジオ番組に出演し、法案に反対する意見を話したことが裁判所法52条1号で禁止されている「積極的な政治運動をすること」に該当するか

(2)番組内で森まさこ法相の答弁に関して「とんでもない嘘」などと言ったことにつき、名誉毀損罪(刑法230条1項)が成立するか

 個人的な見解としては、いわゆる寺西判事補事件の最高裁決定(最高裁大法廷決定平成10年12月1日)に照らし、(1)は難しいと考えているのは、既に書いた通りである(参考:裁判官がラジオ出演 法相への名誉毀損罪成立か)。一方、(2)については、名誉毀損罪の成立は十分に可能性があると思われる。

■法務省「対応する必要があれば対応」

 5月18日に法務省に電話で問い合わせをした。対応してくれたのは刑事局総務課教養係。

松田:岡口基一判事のラジオ番組での発言を全部聴きまして、これは森まさこ法務大臣への名誉毀損ではないかと思いました。一国民として看過できない問題です。具体的には「今回のような大事なことをですね、口頭決済で済ませるはずがないんです。これはとんでもない嘘なんですね。」というものです。

担当者:なるほど。

松田:また、人事院の一宮なほこ総裁を含めて「森まさこさんと一宮なほみさんは、どちらも法律家なんです。そういう法律家がですね、口頭でやりましたなどとですね、真顔で平気で嘘ついて」とも言いました。裁判官がラジオでこのようなことを言うと、「法務大臣は国会で嘘を言うんだ」と多くの国民は思うのではないでしょうか。この点について法務省では何らかの対処をされるのかと思って、電話でお聞きする次第です。

担当者:そのようなラジオ番組があったことを、少なくとも私は承知しておりませんでした。こちらの方でも、そういった内容があったということを、今、おうかがいいたしましたので、それを踏まえて、こちらとしてもどのように対応…もし対応する必要があるのであれば、対応していくことになると思います。

 また、今回、現職の裁判官がそういった発言をしたということで、場合によっては裁判官として(裁判所が)処分、懲戒ということもありうるかもしれませんので、その点は裁判所は裁判所の方で検討していくことになろうかと思います。

 私もそういった発言があったということ、詳細を承知していませんでした。情報をいただいたということを踏まえ、こちらの方でも必要があれば対応していく必要があるのかなと思っています。現時点ではすぐに「こう対応します」とはお答えできませんが。

松田:仙台高裁に電話をしましたら「内容を把握していないので、何も答えられない」とのことでした。一国民としての意見ですが、この裁判官の発言は行政の信頼性を失わせる行為であると思います。しかも法の番人の裁判官です。法務省としても、うやむやに済まさないでいただきたいと思います。そのようなことをすると「行政が司法に介入するのか」と言い出す人もいるかもしれませんが、私のような意見もあるということを受け取っていただければと思います。

担当者:承知いたしました。ありがとうございます。

■寺西判事補事件との違い「司法内部の問題ではない」

 省庁の仕事を「お役所仕事」などと、その反応の悪さを批判する声が国民の間にあるが、僕はこれまでお役所に電話で問い合わせをした時に、適当に対応されたことは一度もない。昔は知らないが、少なくとも今の役所、官僚は国民の声に耳を傾けてくれる印象を持っている。

 法務省でも、発言内容について把握していなかったようである。寺西判事補事件では裁判所法が禁じた「積極的な政治運動をすること」に該当する問題であるとして、裁判所が懲戒処分を決定した。法務省は司法内部の問題であるから、当然、介入はしていない。

 ところが今回は刑法上の問題である。司法内部で片付けられる問題ではない。その事案の違いがあることを主張したことで、法務省はその点に興味を持ってくれたということであろう。

 この先、どうなるか分からないが、刑事責任追及という可能性もあるかもしれない。

■仙台高裁「お答えできません」

 法務省とのやり取りの中で出てきたように仙台高裁にも岡口判事の森まさこ法相に対する名誉毀損にかかる発言に対する見解を電話で話を聞き、以下のような回答を得た。

 「(仙台)高裁としましては、(岡口判事に関する)報道があったことは存じておりますが、具体的にラジオの中でどういった発言をされているかということについては、把握しておりませんので、お問い合わせの件についてはお答えできないということになります。確認する予定があるかどうかについてもお答えできません」。

 名誉毀損の疑いがあるということであれば、それは検察庁が捜査をして刑事責任を追及するかどうか決めるから、裁判所としては関知するところではないということであろう。こうした回答になるのは当然であると思われる。

One thought on “法務省「必要あれば対応」裁判官のラジオ発言

  1. アバター 野崎 より:

    こんにちは

    記事違い、裁判官ではなく検察官ですが、以下。

    ロッキード事件の捜査に携わった松尾邦弘元検事総長ら検察OBが検察庁法改正案に反対する意見書を法務省に提出した。

    元最高検察庁検事の清水勇男氏は、今回の意見書を提出した動きについて「私は1964年(昭39)に任官し、ロッキード事件を担当し、ロッキード仲間に声をかけた」と語った。

    定年延長は三権分立主義の否定につながりかねない、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力をそぐことを意図していると考えられると。

    松尾氏らロッキード仲間は、
    ロッキード裁判において、問題とされた嘱託尋問調書を証拠として採用し反対尋問を封じ込めたこと、それが結果、最高裁で違法とされたことをどう総括するのか。

    以下、ネットより。

    平成7(1995)年2月22日、最高裁まで争われた「丸紅ルート」で、檜山広、榎本敏夫両被告の上告が棄却されたが、ここで嘱託尋問調書について、判断が覆った。
    全裁判官一致で、刑訴法・憲法の趣旨に則り、刑事免責の約束をしたコーチャン等の嘱託尋問調書を、違法収集証拠と断定し、証拠能力がないからとして証拠排除(有罪の証拠としてはならない)としたのだった。

    大野裁判官のが付した補足意見は次の通りである。

    本件においては、証人尋問を嘱託した当初から被告人、弁護人の反対尋問の機会を一切否定する結果となることが予測されていたのであるから、そのような嘱託尋問手続によって得られた供述を事実認定の証拠とすることは、伝聞証拠禁止の例外規定に該当するか否か以前の問題であって、刑訴法一条の精神に反する。

    ちなみに、刑訴法第1条は以下の通りである。
    第1条 この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。

    ⇓⇓⇓
    松尾、清水氏らの、
    三権分立の否定云々には笑わせる。
    政権の意に沿わない検察、ではなく検察の意にそぐわない政権に対しては、成ろうことなら何でもありということだろう、検察のみならず裁判官もだ。
    最高裁で嘱託尋問調書の違法判断がでるまでのプロセスに問題があったのは専門家ならばわかっていたはずだ、正義感故その方法は問わない、は成立しない。

    丸紅より金銭提供を示されたとき、故田中首相が、ヨッシャ、ヨッシャと快諾したとの検察の主張は、講釈師見て来たような何とやら、で故田中首相を貶める印象操作にほかならない。
    三億円授受の具体的方法に関してはその虚構が指摘されており評論家、田原総一郎はそのことを上梓している。

    これは、その後発生した大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件にも連なる検察が内包している資質であろう。

    御返信は不要です。

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