慶大4年新沢かれん容疑者 薄い毛髪の謎を推理

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 慶應義塾大学4年の新沢かれん容疑者(22)がアルバイト先のスポーツ施設で利用客のクレジットカードを盗んだ上、不正に利用したとして、警視庁は17日、窃盗と詐欺の疑いで逮捕した。各メディアが一斉に報じている。報道によると、直接の容疑とは別に総額約100万円の被害について余罪を調べているとされ、捜査の行方が注目される。一方、テレビカメラに映った新沢容疑者は頭髪が薄く見え、地肌が透けて見える。この点に、今回の容疑を読み解く鍵が隠されているように思える。

◾️化粧品は約1万4000円

当該事件を伝えるFNNプライムオンライン画面から

 被疑者にかけられている容疑は今年4月、アルバイト先である東京都渋谷区のスポーツ施設で、50代の女性客のクレジットカード1枚を盗み、そのカードを使って化粧品2点を不正に購入したというものである。

 報道によると、新沢容疑者は施設の受付で勤務しており、保管されていた更衣室のロッカーのマスターキーを使ってカードを盗んだとみられている。不正に購入した化粧品は約1万4000円相当で、新沢容疑者は「カードは更衣室で拾った」と窃盗容疑を一部否認する一方、「商品が欲しいと思って衝動的にカードを使った」などと話しているという(TBS NEWS DIG・「衝動的にカードを使った」盗んだクレカで化粧品購入か 慶応大学4年の新沢かれん容疑者(22)逮捕)。

 また、別の報道では警察が同様の手口による余罪が約100万円分あるとみて調べていると伝えられている(女性自身・《NY生まれの超ハイスペ女子がなぜ》慶應大学4年生の女が窃盗容疑で逮捕の衝撃…キラキラTikTokは非公開、所属部活、ゼミは関連情報を削除)。

 筆者が一連の報道を見て気になったのは、被疑者の頭髪である。前頭部から頭頂部にかけて地肌がかなり目立つように見える。これは特定のテレビ局だけではなく、複数の報道映像で確認できる。もちろん、逮捕時は頭を深く下げ、髪を後方で束ねている。照明の当たり具合もあり、分け目や毛束の間から地肌が見えやすい条件であることは間違いない。

 ただ、女性自身が掲載している慶大スキー部のブログに掲載されていた写真などを見ると、少なくとも逮捕時の映像ほど地肌が目立つようには見えない。比較的最近になって頭髪に変化が起きた可能性もある。

◾️脱毛症のリスク

 ここからは全くの筆者の推理である。被疑者は美容・痩身目的での使用が社会的に問題となっているチルゼパチドなどGLP-1関連薬を使用していたのではないか。そう考えると、逮捕時の頭髪と報道されている約100万円の余罪が、一本の線でつながる可能性がある。同種の薬剤を、医師によるオンライン診療を経て自由診療で処方し、配送するクリニックも少なくない。

 厚生労働省は6月16日、2型糖尿病治療薬が美容・痩身・ダイエット目的で使用されている問題を受け、医療機関や製造販売業者などに適正使用を徹底するよう通知した。同省は、美容・痩身・ダイエット目的で使用した場合の安全性と有効性は確認されていないとしている。上野厚労相も同日の記者会見で「臨床試験でダイエットなどの効果は証明されていない」と述べたと報じられている(yomiDr.・「マンジャロ」適正使用の周知求め厚労省が通知…上野厚労相「ダイエット効果は証明されていない」)。厚労省も公式サイトで注意を呼びかけている。

被疑者のSNSから

 ここで注意したいのは、チルゼパチドそのものに体重減少作用がないという意味ではないことである。チルゼパチドを成分とする「ゼップバウンド」は、日本でも一定の条件を満たす肥満症患者に対する治療薬として承認されている。問題になっているのは、2型糖尿病治療薬として承認されたチルゼパチドなどの薬剤を、承認された効能とは異なる美容・痩身目的で使用することである。

 そして、チルゼパチドと脱毛との関係については興味深いデータがある。

 肥満または過体重の成人を対象とした国際第3相試験「SURMOUNT-1」の原著論文が2022年、医学誌「The New England Journal of Medicine」に掲載されている(Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity)。

 同試験では、有害事象としての脱毛症(Alopecia)が、プラセボ(偽薬)群では643例中6例の0.9%だったのに対し、チルゼパチド5mg群では630例中32例の5.1%、10mg群では636例中31例の4.9%、15mg群では630例中36例の5.7%に認められた。

 米国の肥満症治療薬Zepboundの添付文書でも、脱毛(Hair Loss)はプラセボ群1%に対して5mg群5%、10mg群4%、15mg群5%となっている。さらに女性に限れば、Zepbound投与群では7.1%、プラセボ群では1.3%であり、添付文書には脱毛反応は体重減少と関連していたと記載されている。

 日本でも同様である。2026年5月改訂のPMDAのゼップバウンド添付文書を見ると、「その他の副作用」の1~5%未満の欄に「脱毛症」が明記されている。

 米国の添付文書では脱毛反応は体重減少と関連していたとされており、少なくとも臨床試験で脱毛症の発現率がプラセボ群を上回っていることは事実である。

◾️月数万円の自由診療

 こうしたチルゼパチドを美容・痩身目的で使用すると、どの程度の費用がかかるのか。美容・痩身目的でオンライン診療により処方される同種の薬剤は自由診療となるため、価格は医療機関や用量によって異なる。各医療機関が公表している料金を見ると、1か月分で2万円台から7万円台に設定されている例もあり、継続して使用すれば相応の負担となる。大学生が毎月数万円の自由診療を継続するとすれば、決して小さな負担ではない。

 仮に被疑者がチルゼパチドを継続的に使用していたとすれば、その費用を捻出する必要がある。仮に報道されているような行為に及んでいたとすれば、そうした金銭的負担が動機の一つになった可能性も考えられる。

 今回の逮捕容疑となったのは、カードを盗んで約1万4000円の化粧品2点を購入したという一件である。しかし、警視庁はそれとは別に、他の利用客からも総額約100万円に上る被害を確認していると報じられている。問題は、その約100万円が何に使われたのかである。

 仮に、その中にオンライン診療を利用したチルゼパチドを含む薬剤の購入が含まれていたとしても、今回の化粧品購入と同じように直ちに立件できるとは限らない。店舗でカードを使用した場合、防犯カメラや販売記録などから、カードを使った人物を特定できる可能性が高い。一方、オンライン診療を経た購入では、カードの利用記録だけで実際に操作した人物まで直ちに特定できるわけではない。診療を行った医療機関、決済記録、患者情報、配送先などを一つずつ確認していく必要がある。

 捜査の流れを推測するなら、まず映像など客観的な証拠を得やすい店頭での化粧品購入を立件し、その後、他のカード利用について順次捜査を進めるという流れは十分に考えられる。

 そう考えると、「逮捕容疑は化粧品2点なのだからチルゼパチドを含有する薬剤とは関係ない」と単純に結論づけることはできない。約100万円とされる被害の使途が明らかになれば、この推理が的外れなのか、それとも何らかの接点があるのかも見えてくるであろう。

◾️推定無罪の原則

 被疑者はニューヨーク生まれで、カリフォルニア州の高校を卒業後に帰国し、慶大に入学した帰国子女であると報じられている。大学では体育会スキー部のマネージャーを務め、SNSには友人らと学生生活を楽しむ様子が投稿されていた。

写真はイメージ

 そのような22歳が、なぜ他人のクレジットカードを使って約1万4000円の化粧品を購入したとの嫌疑をかけられているのか。逮捕時の映像で目につく頭髪、チルゼパチドの臨床試験で確認されている脱毛症、自由診療では月数万円に及ぶ薬剤の価格、これらをつなぎ合わせると、1つの仮説が浮かぶということである。

 もちろん、これは現段階で公表されている情報を材料にした筆者の推理にすぎない。被疑者がチルゼパチドなどのGLP-1関連薬を購入し、使用していたという報道は一切ない。また、窃盗容疑については「カードは更衣室で拾った」と一部否認していると報じられている。

 刑事事件は推定無罪が原則であることは忘れてはならない。

 筆者の推理が当たっているのか、それとも全くの見当違いなのか、取調べの進展で明らかになってくるであろう。

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