丸川大臣に7度答弁迫る無意味さと不気味さ

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 丸川珠代男女共同参画担当大臣が3日の参院予算委員会で、選択的夫婦別姓制度に反対の理由を7度にわたって問われた。社民党の福島みずほ党首が質問したもの。大臣とはいえ、個人の思想・信条を明らかにすることを強制されるいわれはなく、思想統制のような質問には違和感を覚える。

■各人がいかなる思想・良心を有することも自由

福島議員の質問は時間のムダ?

 3日の参院予算委員会での質疑で、福島氏は「なぜ選択的夫婦別姓に丸川さんは反対なのか」と質問を繰り返した。これに対して、丸川大臣は「私には私の考えがあるのは確かですが、それはそれとして今、私は大臣の任があるので私は大臣としてしっかり務めを果たしたいと思います」と答弁した。

 これに対し、福島氏は繰り返し反対の理由を問いただすこと7回。貴重な国会の論戦の時間が虚しく過ぎていった。福島氏の考えでは、男女共同参画担当大臣は選択的夫婦別姓制度に賛成しなければならないのであろうか。以前にも紹介したが、日本国憲法19条は以下のように定めている。

第19条【思想及び良心の自由】

思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

 思想・良心の自由の保障内容は「各人がいかなる思想・良心を有することも自由であり、それが内心にとどまる限り、国家が特定の思想・良心の保持を禁止することはできない。また、国家が、個人が有する思想・良心を理由に差別したり、不利益を課すこともできない。…国家が、個人に対してその思想・良心の告白を要求したり、思想・良心を探ることは許されない(沈黙の自由)」(市川正人 基本講義憲法 初版p117 新世社)というものである。

 丸川大臣がどのような思想や信条を持っていようが、それは他者から干渉を受けるような問題ではない。個人の思想を明かすように国会の場で追及されても、明らかにする必要などない。

 福島氏のしつこさには、国民の多様性を認めず(このような考えでなければならない)というファシズム的なニオイを感じる。

■死刑廃止論者の法相なら職務に影響

 確かに個人の信条が政務に影響を与える場合はある。たとえば死刑廃止論者、死刑に反対する考えを持つ者が法務大臣になった場合、死刑執行命令書に署名しないことが考えられる。その場合、法で定められた死刑執行が実施されない状況が生じることが考えられ、実際、過去にそのような法相は存在した。そのような場合、国会で法相の死刑に対する考え方を聞くことには意味がある。

 では、今回の場合はどうか。そもそも、男女共同参画担当大臣が夫婦の姓のあり方についてどのような考えを持っているかは、職務には関係のない話。男女共同参画社会基本法の目的は「…男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。」と定められている(同法1条)。

 「男女共同参画社会の形成」とは「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会を形成することをいう。」(2条1号)と定義される。

 ここをどう読んでも、夫婦の姓のあり方は絡んでこない。女性が在職中に姓が変わることで、社会の活動に参画する機会を阻害されるとは思えない。そのような場合、不便だと思えば仕事上は旧姓を通せばいいし、男性も然りである。実際、僕が日刊スポーツに在籍していた当時、男性で姓を変えた記者がいたが、ずっと旧姓で通していた。

 そのようなことを考えると、福島氏が丸川大臣に何をしたかったのかわからない。おそらく、丸川大臣に反対の理由を言わせ、そこをしつこく突いて、男女共同参画担当大臣として不適任であるとされるような失言を引き出したかったのであろう。女性に関する発言で東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長を辞職に追い込んだことで、二匹目のどじょうを狙ったのであろう。

■民法上は男女で姓に関する差異はなし

 ちなみに、日本の夫婦の姓のあり方は民法で定められている。

民法750条<夫婦の氏>

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

 現実問題として各種統計を見ると、夫の姓になる場合が90%以上であるが、別に夫の姓を名乗らなければならない決まりなどない。妻が名前を変えるのが嫌なら、夫が妻の姓にすればいいだけの話である。習慣的に夫の姓にすることが多いのは確かだが、少なくとも法律上、男女で差異はない。

"丸川大臣に7度答弁迫る無意味さと不気味さ"に8件のコメントがあります

  1. スッパまん より:

    松田様

    いつもタイムリーでとても分かり易い解説をありがとうございます。

    福島党首の議員活動には多くの疑問符が付きまとっていますが、まさか憲法で保障されている「思想及び良心の自由」は担当大臣には適用されないとでもお思いなんでしょうか?それともまさかこれすら知らないのでしょうか?日本国憲法を無視した議員活動や言論には、国会で然るべき処置をとってもらいたいものです。福島党首の言う「男女平等」とは「女尊男卑」のフェミナチの主張と同じにしか見えませんし、慰安婦問題での虚偽や偽証強要等のかずかずの疑惑に是非お答え頂きたいものです。

    やはり社民党はラジカルな活動家とその信者のただの集合体でもうすでに政党の体をなさず、多様な意見を認めず憲法が保障している思想、言論の自由すら侵すファシズム、コミュニズムの政党で、なぜ「捨民党」と揶揄され泡沫政党ともささやかれるのか改めて認識できました。福島党首が錦の御旗としている「護憲」とは何を護ろうとしているのか、今回の丸川大臣への質問でもうすでに完全に理論破綻しているとしか思えませし、自らが憲法を踏みにじっている様子がおかしくておかしくて仕方ありません。

    1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

      >>スッパまん様

       コメントをありがとうございます。

       社民党の本質はファシズム、それは大いに賛同します。土井たかこ氏が野党時代に「数の暴力」と言っていたのが、政権をとったら「多数決が原則」という趣旨を言っていたのを見て、驚いた記憶があります。彼らのいう自由は自分たちの都合のいい主張にだけ認められると考えて行動しているように見えます。

       福島みずほ氏を見ていると、政治家以前の問題として人として信用できません。「護憲」を叫ぶなら、死刑を認めている現行憲法も護れと言いたいです。

  2. MR.CB より:

    》》ジャーナリスト松田様

    映像を見ました。社民党の福島氏は「変」を超えて「異様」でした。党内のことも含めて、本気で精神的な危うさを感じます。もう既に受診されているのかもしれませんが、まだでしたら早めに病院に行かれた方が良いかと思います。

    1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

      >>MR.CB様

       コメントをありがとうございます。

       森喜朗元首相の件があってから、「女性差別は国民の支持が集まる」と思っているのでしょう。それで立民も社民も、その方向で攻めようということなのではないでしょうか。何とか失言させて、今度は閣僚を首にしてやろうという気持ちで国会の質問時間を使っているのだと思います。

       彼女が病気かどうか知りませんが、病的なのは確かだと思います。

  3. 月の桂 より:

    福島瑞穂さんは、元弁護士ではなかったでしょうか? 質問の質内容共に、年々、悪化しているような気がします。何かが憑依しているような気さえします。大丈夫かな~。

    1. 月の桂 より:

      お名前を訂正します。
      福島瑞穂さんではなく、福島みずほさんです。失礼しました。

      1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

        >>月の桂様

         多分、本名が瑞穂で、選挙の時は「みずほ」にしているのではないでしょうか。

    2. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

      >>月の桂様

       コメントをありがとうございます。

       彼女はまだ弁護士のはずです。多分、今は法律の勉強などしていないと思います。以前からそうですが、質問が論理的ではなく感情的のように感じます。

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