嘲笑される山本太郎氏と滑稽な行動の左翼

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石井 孝明🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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経済・環境ジャーナリスト。慶應義塾大学経済学部卒、時事通信社記者、経済誌フィナンシャルジャパン副編集長、アゴラ研究所の運営するエネルギー問題のサイトGEPRの編集担当を経て、ジャーナリストとエネルギー・経済問題を中心に執筆活動を行う。著書に「京都議定書は実現できるのかーC O2規制社会のゆくえ」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞社)など。
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 英経済紙フィナンシャル・タイムスのコラムニスト、ジャナン・ガネシュ氏が「文化的左翼はピークを過ぎた(The cultural left has peaked)」という記事を3月1日に掲載していた。(元記事はwith ENERGY・「左翼は『盛り』を過ぎた」)

米英での左翼の退潮

 要約すると、内容は次の通りだ。今振り返ると2020年をピークにして、米英ではリベラルと称する左翼の政治的運動の影響力が減っている。バイデン政権も民主党左派の政策を積極的に取り上げない。人権の過剰擁護が社会で批判を受けている。空気が変化している。経済の厳しさが影響しているのだろう。左翼が消えることはないが、存在感が小さくなっている。左翼は嫌われている。

 今のままでは、嫌われることよりも悪い「からかいの対象」になるかもしれない。

かっちりした文章ではなく印象を羅列しており、ガネシュ氏のいつもの文章より反響は小さい。

 しかし、「そんな感じがする」という意見がネットで散見される。私も同じ印象を抱いていた。そして日本は10年前からそんな傾向が続き、いまさらに強まっている。2012年の民主党政権の崩壊がきっかけだった。左翼は「からかい」の対象になっている。そして実際に滑稽な行動ばかりしている。

◆笑われる山本太郎

山本太郎氏(参議院議員山本太郎チャンネル画面から)

 3月2日の参議院予算委員会で、れいわ新選組の山本太郎参議院議員が、質問というより怒鳴り散らし、「資本家の犬」という罵倒語を叫んで政府を批判した。19世紀から20世紀初頭に使われた古めかしい言葉で、批判を集め同時に笑われていた。

 大変失礼ながら、れいわ新選組の支持者の人たちは、変わった人達だ。マルクスが「なんの役にも立たない」と批判した「ルンペンプロレタリアート」、幼稚な煽りアジテーションに踊るとレーニンが罵倒した「左翼小児病」の人たちから構成されている印象を受ける。

 いずれも古い政治用語で、暇ならググってほしい。その支持者がTwitterで喜んでいた。意味はそれだけのパフォーマンスだ。そして同党がからかいの対象になり、信頼が落ちただけだ。

 今、ネットで凄まじい批判を集める、女性人権保護団体の「Colabo」とその界隈の「人権屋さん」たちのように、政治工作に時々、成功する左派政治集団がいる。しかし、それは「部分的乗っ取り」であり、決して社会の多数派ではない。

◆Colaboに怒る「普通のおじさん」の声を聞け

 それどころか、日本の左翼の人たちは、ますます現実と普通の日本人から遊離しているようだ。

 Colaboの税金の無駄遣いを批判し、彼らからスラップ訴訟を受け、訴訟で反撃している被害者ハンドルネーム「暇空茜」という人がいる。訴訟費用の支援を呼びかけたところ、8800万円の支援が集まった。巨額であることに驚いた。これをどう解釈するべきか。

 私は別に影響力はないが、暇空茜氏を応援している。献金するまでの感情移入はできなかったが、いくつか分析記事を出した。するとこのColaboを批判する知人の中堅企業の社長が相談してきた。暇空氏を支援したいというのだ。政治的には全く中立の人だ。「経営や税金で苦労してるのに、公金を吸っている奴らは許せない」という。結局、かなりのまとまった金額を寄付したという。

 この社長の怒りは当然だろう。女性の救済活動は、政治色がない社会問題として対応できるはずだ。ところが、Colaboは政府批判や安倍首相批判、日本社会批判と女性の人権侵害を絡めて騒いでいる。主催者の仁藤夢乃さんは「キモいおじさん」とネット番組を運営していた。

 Colabo界隈の人権屋さんに公金を使うことへの感謝がないし、日本への憎しみしか見えない。そして自分の行動が正しいと思い込んでいる。「普通の日本人」のことが眼中にないようだ。これは一例だが、日本の左翼は、こうした日本の「普通の人たち」から遊離している。そしてこの社長のように、「普通のおじさん」がこうした税金を食べる人へ強い怒りを向け、立ち上がり始めている。

◆リベラルはうさん臭く日本はさらにおかしい

 政治的なクラスタ(階層)の姿は、各国でその姿は様々だ。しかし日本は特異な形を持っている「ガラパゴス」だ。欧米では、知的なインテリ階層が、人権擁護と弱者救済を掲げる、リベラル層を形成している。そして「社会的公正の実現」が各国のリベラルに共通する思考だ。(参考文献・「リベラルのことは嫌いでもリベラリズムは嫌いにならないでください」井上達夫、毎日新聞出版)

 ところがリベラルと自称する「ジャパニーズ・ガラパゴス・リベラル」(私が名付けた)は、「社会的公正」ではなく、Colabo界隈の女性救済の「人権屋さん」のように、反権力や政府への敵意が中心になる。そして世界基準の「リベラル」は、保守政党の自民党の中に取り込まれている。リベラルを自称する立憲民主党の政策や思想は欧米では「極左」に分類されるし、そこから左の小政党たちは山本太郎のように「過激派」「テロリスト」だ。そもそも欧米のリベラルは、祖国を侮辱したり、社会秩序を乱そうとはしない。

 「リベラル」は、冒頭に紹介したFTのコラムのように、近年、世界各国で「うさん臭い」という目で見られている。「お高く止まっている」とか「庶民感覚から遊離している」とか本来の思想「社会的公正と乖離している」との批判だ。世界の富の不公平配分を批判した、左派の仏経済学者のトマ・ピケティ氏は特権を持ちながら世界の貧困救済を語るリベラルを「バラモン左翼」と呼んで批判している。バラモンはインドカースト制度の特権階級の名だ。

 日本の「ガラパゴス・リベラル」はさらに奇妙な姿をしている。山本太郎のように「極左過激派」も含まれるし、「社会的公正」どころか「公金チューチュー」に熱心な人たちがいる。そして共産主義、日本共産党の影響が強い。西欧と違って、日本は1945年に一度国が崩壊した。戦前から影響を与えた共産主義が、規範が崩壊し惑う人々の心の隙間に入り込んでしまった。今も60代以上の人々に影響を与えている。

◆日本は「政治的遊び」に付き合う余裕はない

 しかし、こうしたお遊びの思想や行動はもう続けられない。ウクライナ戦争によって、世界は現実の戦争の時代に突入した。しかも日本はロシア、中国、北朝鮮というならずもの国家に囲まれ、近日中に実際の戦争に巻き込まれる懸念が出ている。2008年以降、一本調子で上昇してきた世界の株式市場、日本以外は良かった景気も、昨年から減速している。FTのコラムでも、それを指摘していた。

 特に日本の経済状況は危うい。金融市場の動揺が始まっている。アベノミクスの小さな好景気を支えた日銀の金融緩和は転換を迫られている。1200兆円の国の借金は、国や通貨の価値を大きく壊す可能性がある。公金をばら撒け、積極財政と、左派政治勢力は現実離れした政治主張に熱心だが、そんな余裕はない。

 日本をおかしくしてきたのは、情緒的な正義感に訴え、あらゆる問題に政治を絡めて騒ぐ人たちだ。残念ながら60歳代以上は、日本が高度経済成長をした時期に社会人生活を送った人たちなので、そういう愚かなことをしても、豊かにならなくても、社会的に食べてはいけた。

 ところが「今」は、日本人は、際どい状況にある。50歳代以下は、その余裕がない。国が貧しくなっている。政治的な遊びをする人や、「公金チューチュー」の「ガラパゴス・リベラル」の行動に巻き込まれ、「普通の日本人」が経済的損失を被りかねない。山本太郎やColabo界隈を観察すればいい。何も社会問題を解決しないどころか、他人に迷惑を与えているだけではないか。

◆日本の左翼は気付いてほしい

日本の代表的左翼政党といえば日本共産党か

 「20歳までに左翼でなければ心がない。30歳を超えて左翼だったら頭がない」。これは伝ウィンストン・チャーチルの警句だ。彼は実際に言っていないそうだが、こうした皮肉を言いそうな政治家だ。善意はあっても、現実を見極めない人たちは「頭がない」滑稽な人たちであるだけでなく、今の日本では社会全体に悪影響を与えてしまう。

 社会問題を、政治や党派性で向き合うのではなく、合理性で解決していかなければならない。日本のリベラルと自称する変な左翼は、嫌われるどころか、馬鹿にされていることに気づいてほしい。しかし、それを言ってもわからなさそうだ。せめて前述の紹介した社長や私のような「普通の人たち」を邪魔しないでほしい。

※元記事は石井孝明氏のサイト「with ENERGY」で公開された「左翼は『盛り』を過ぎた」 タイトルをはじめ、一部表現を改めた部分があります。

"嘲笑される山本太郎氏と滑稽な行動の左翼"に1件のコメントがあります。

  1. 野崎 より:

    私は団塊の世代ですが東西冷戦時代、日本において左翼とは社会主義者、共産主義者の位置付けでした。
    その意味での左翼は確かに衰退しました。

    しかし彼らの左翼思想は仮面似すぎず、彼らは仮面を脱ぎ捨てその本性をもって目的へ着実に駒を進めていると考えます。

    >欧米では、知的なインテリ階層が、人権擁護と弱者救済を掲げる、リベラル層を形成している。そして「社会的公正の実現」が各国のリベラルに共通する思考だ。

    ベースにキリスト教を持つ社会故よく見えないのだと思います。
    キリスト教はある意味、左翼の論理と親和性を持ち彼らはそれを利用します。
    日本のキリスト教界は左翼に乗っ取られている状況です。

    リベラルに関して、米国においてはベトナム反戦世代が社会の中枢に進出し多くが民主党に加わった、との分析が米国の著名な識者よりありました。(先の大統領選において公表された、ソースを今即明示できません。)

    この世代の思想性は近代国家を形成するに至った普遍的価値観の破壊、すなわち自由社会の破壊にあり反キリストであり欧米もしかりです。
    ベトナム反戦世代、彼らが好んだジョンレノンのイマジンは究極アナーキズム、ファシズムです。

    彼らにより再生産された世代も同じくでありその社会浸食の証左は最近ではツィッター、チャットGPTに見られた彼らの価値観の支配です。

    松田さんの記事のコメントに2冊の書籍を紹介させていただきました。
    ●大衆の狂気 徳間書店
    ●アメリカの崩壊 方丈社

    仮面を脱いだ元左翼達に支配されつつある米国の状況を報告しています。
    日本も同じ状況になりつつあると考えます。

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